73/615
未来が動き出す
ICUの前で、
葵は深く息を吸った。
母の容体は不安定なまま。
俊介はずっとそばにいてくれた。
「葵……俺は、どんな形でも支えるから」
その言葉に、
胸の奥がじんわりと熱くなる。
俊介は、
ずっと自分の手を離さなかった。
(私は……この人と生きていくって決めたんだ)
葵はゆっくりと頷いた。
「俊介……
これからも、よろしくお願いします」
その声は震えていたけれど、
確かに“覚悟”が宿っていた。
俊介は驚いたように目を見開き、
次の瞬間、強く抱きしめた。
「……ありがとう、葵」
葵は目を閉じた。
涙がひとつ、静かに落ちた。
(大丈夫。
私はもう、過去に戻らない)
そう言い聞かせるように、
俊介の胸に顔を埋めた。




