20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする
虹がゆっくり薄れていく。
空の青さだけが静かに残っていた。
葵は胸の奥がまだ少し熱いまま、
そっと大和のほうへ向き直る。
「て……」
思わず“店長”と呼びそうになって、
慌てて言葉を飲み込む。
「……高田さん、素敵な時間をありがとうございました」
言いながら、
自分の声がほんの少し震えているのがわかった。
大和は一瞬だけ目を細める。
その表情が、
昼間の光に溶けるように柔らかかった。
「……葵」
名前を呼ばれた瞬間、
時間がふっと止まった気がした。
風の音も、
観光客の声も、
全部遠くなる。
ただその一言だけが、
胸の奥に静かに落ちていく。
葵は驚いて顔を上げる。
大和は続けない。
説明もしない。
ただ、名前を呼んだだけ。
でもそれで十分だった。
すれ違って重なることがないと思っていた二人に
冬を越えたあとの柔らかな光が流れた。
20年間忘れられなかった人と、
もう一度恋を始める。
-完-
今回の物語は、
20年という時間を静かに抱えた二人が、
もう一度“始まり”に触れるまでの話でした。
すれ違って、
重ならなくて、
それでも忘れられなかった想いが、
冬を越えて、
ようやく同じ光を見た瞬間。
書きながら、
何度も胸がぎゅっとなりました。
読んでくださった方にも、
少しでも温かい余韻が届いていたら嬉しいです。
「20恋」お読みいただき、ありがとうございました!
またどこかの物語でお会いできますように…。




