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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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前に進める気持ち

昼過ぎ。

大和は作業台に置いたスマホを手に取った。


本社からのメール通知が来ている。


件名:

「灯 -Hokkaido- 新コンセプト案について(回答)」


大和は息を整え、開封した。


---


──夜のコンセプトは案②で進めてほしい。

完全予約制の日を“灯-Hokkaido-の特徴”として打ち出したい。


文章は淡々としているのに、

胸の奥がじんわりと温かくなる。


(……よかった。通ったか)


案①も悪くない。

でも、案②のほうが“(あかり)の進化”になる気がしていた。


本社も同じ方向を見てくれた。

それが、素直に嬉しかった。


(これで……夜のページも固まるな)


白紙だったページが、

ようやく形になっていく。


大和は深く息を吐いた。

肩の力が少し抜ける。


(……少しは、落ち着いたか)


企画が固まると、

胸のざわつきも不思議と静まっていく。


仕事に追われていたせいで、

ずっと気持ちが乱れていたのかもしれない。


スマホを置こうとして──

ふと、葵の顔が浮かんだ。


葵からのDMは、

まだ来ていない。


でも、

さっきまでのような焦りはなかった。


(……連絡してみるか)


気持ちが落ち着いた今なら、

変に構えずに言葉を選べる気がした。


大和はスマホを手に取り、

画面を開いた。


入力欄に指を置く。


ほんの少しだけ、

胸が温かくなる。


(……よし)


大和は静かに文字を打ち始めた。

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