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小さな異変
数日後。
葵が病室に入ると、
母はベッドの上で息を整えていた。
「お母さん? 大丈夫?」
「……ちょっと、胸が苦しくてね。
でも、すぐ治まるから」
そう言って笑う母の声は、
どこか震えていた。
ナースコールを押そうとすると、
母はそっと葵の手を押さえた。
「大げさにしないで。
葵が心配しすぎると……お母さん、苦しくなるの」
その言葉に、
葵の胸がぎゅっと締めつけられた。
(どうして……
どうして私に心配させまいとするの)
母の肩は、
以前よりもずっと小さく見えた。
葵は気づいていた。
母の体力が、
ゆっくりと、確実に落ちていることに。
でも認めたくなかった。
認めたら、
何かが壊れてしまいそうだった。




