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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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大和の最終日

最終日。

店内は、これまでで一番の熱気に包まれていた。


スタッフの声、

シェイカーの音、

グラスの触れ合う音。


(……ありがたいな)


忙しい。

でも忙しいのが嬉しい。


この数週間で「夜の灯 -tokyo-」は、

想像以上の反響を呼んだ。

SNSでは“縁結びのバー”と呼ばれ、

連日行列ができている。


ふと、胸の奥に小さな痛みが走る。


(来たいのに入れないお客様も多いんだよな……)


整理券が取れずに帰る人。

仕事終わりに駆けつけても間に合わない人。

せっかく足を運んでくれたのに、

申し訳ない気持ちが残る。


(期間……延長すべきなのか)


そう思う。

でもすぐに現実が頭をよぎる。


仕入れ、

人員配置、

次の出店地の契約、

広報のスケジュール。


(……俺には決められない)


延長は上層部の判断だ。

現場の責任者であっても、

自分の一存ではどうにもできない。


だから、

今日が本当に“最後”だと思っていた。


(……来てくれたら、キールを置こうと思ってたんだけどな)


「最高のめぐり逢い」


(本当に……そう思ったんだよ)


18年越しの再会。

昼の驚いた顔。

夜のグラスホッパー。


全部が、

静かに胸に残っている。


今日も、

外の行列を見る暇はない。


(……来れなかったか)


胸が少しだけ痛む。


閉店時間。

店の灯りがゆっくり落ちていく。


(これで……終わりかもしれないな)


そう思いながら、

最後のグラスを拭いた。

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