表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
496/615

静かな夜

閉店作業をしていると、

カウンターの上に置かれた空のグラスが目に入った。


オリンピックの、

あの淡い香りがまだ少しだけ残っている。


(……久しぶりに作ったな)


シェイカーを洗いながら、

さっきの葵の表情がふと蘇る。


驚いたような、

懐かしいような、

どこか少しだけ緊張しているような。


その瞬間、

昼間の光景が胸の奥で静かに重なった。


──明るい店内。

──スイーツの仕上げをしていた自分。

──ふと顔を上げたときに目が合った、あの横顔。


一瞬、手が止まった。

止まってしまった。


(……やっぱり、及川さんだった)


あれは“似ている”なんてものじゃなかった。

18年前の記憶が、

一瞬で身体の奥から浮かび上がった。


名前を呼ぶべきか迷った。

でも呼んだら、

何かが壊れそうで。


だから夜の店では、

ただ静かに一杯を置いた。


「……オリンピックです」


それしか言えなかった。


(再会の意味のオリンピックしかないと思った)


“待ち焦がれた再会”。


そんな意味を、

彼女は知るだろうか。


知ってしまったら、

どう思うだろう。


大和はふっと息を吐き、

グラスを棚に戻した。


静かな店内に、

氷の音だけが微かに残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ