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孤独
その頃、東京では。
葵は母の治療に付き添いながら、
仕事と病院を往復する日々を送っていた。
母の笑顔は弱々しく、
その奥にある影を葵は見逃さなかった。
(大丈夫……大丈夫だよ、お母さん)
そう言い聞かせながら、
葵は母の手を握りしめた。
その手は、少しだけ冷たかった。
夜遅く帰るアパートは、
大和の部屋と同じように静かで、
葵の心に重くのしかかった。
(私……ちゃんとやれてるのかな)
母を支えたい気持ちは本物なのに、
自分の人生が少しずつ削れていく感覚があった。
でも、止まれなかった。
止まったら、母が不安になる。
止まったら、自分が崩れてしまう。
だから葵は、
今日もまた前に進むしかなかった。
ーー遠く離れた北の地で、
大和は自分の存在が薄れていくのを感じていた。
ーー東京の病室で、
葵は自分の心がすり減っていくのを感じていた。
2人はまだ、互いの痛みを知らない。
けれど確かに、
同じ夜空の下で、
静かに孤独を抱えていた。




