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俊介の焦り
玄関のドアを閉めた瞬間、
俊介の胸の奥がざわっと揺れた。
会話のない朝食はすぐ食べ終わり、
気持ちだけ焦って、いつもより早く家を出た。
そんなこと、今まで一度もなかったのに。
昨日の葵の表情が、
頭のどこかに貼りついたまま離れない。
声をかけたかった。
でも、どう声をかければよかったのか分からなかった。
“このまま放っておいたら、もっと遠くなる”
そんな直感だけが、
やけに鮮明だった。
ポケットの中のスマホが重い。
握りしめたまま、駅へ向かう。
言葉が見つからない朝。




