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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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朝のハグも消える

玄関に向かったとき、胸の奥がひやりとした。

そこにあるはずの葵の靴が、なかった。


俊介は思わず腕を少しだけ上げかけて、すぐに下ろした。

ハグは、夫婦関係を立て直すために自分が言い出した“決め事”だった。

朝と夜、必ず一度抱きしめる。

それだけは続けよう、と。


形だけでも触れ合っていれば、いつか気持ちが戻るかもしれない。

そんな淡い期待を込めて始めた習慣。


でも今日は、その“決め事”の場所に、葵はいない。


腕を伸ばす相手がいない朝は、こんなにも空っぽなんだと思った。

昨日の写真。

二色のだし巻き。

置き手紙。

全部が胸の奥で重なっていく。


(……もう、俺と向き合う気がないんだ)


そんな言葉が、静かに沈んでいく。

決め事だったハグが朝も夜もできなくなり、

この関係は“終わり”の形をしていた。

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