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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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葵の世界にも

夜。リビングに戻ると、葵がスマホを見ていた。

画面には、知らないアカウントの投稿が表示されている。

(あかり)のカウンター。二色のだし巻き。見覚えのある皿。


(……なんで、(あかり)?)


胸の奥が、ほんの少しだけざわつく。

理由は分からない。

ただ、視線が離れなかった。


投稿をスクロールする葵の指が、一瞬だけ止まる。

その揺れを、俊介は見逃さなかった。

葵はすぐに画面を閉じ、何事もなかったように姿勢を戻す。

けれど、その“早さ”が、俊介の胸に刺さる。


(……見たんだ)


葵の横顔は静かで、いつも通りに見える。

でも、目の奥にだけ、微かな波紋が残っていた。

それは“記憶”では説明できない揺れだった。


俊介は言葉を飲み込む。

聞けば壊れる。

触れれば戻れない。

そんな気がして、ただ息を潜めた。


葵の胸のざわつきは、まだ自分でも理由が分からない。

けれど、その小さな揺れが、

このあと押し寄せる“本当の感情”の前触れだった。

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