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2人の心が別方向に
夜、ふたりは別々の部屋。
葵は大和のリールを見ながら、
“あの味”を思い出していた。
冬の空気、灯の光、あの落ち着いた声。
俊介は天井を見つめながら、
葵の変化を思い返す。
どこからズレたのか分からないまま、
ただ胸が重い。
ふたりの心は、
少しずつ、別の方向へ動き始めていた。
まだ誰も悪くない。
まだ何も起きていない。
でも、予感がする。
「ここから物語が動き出す」
葵のスマホには“大和のストーリー更新”。
俊介のスマホには“何もない”。
孤独の形が違うふたりの夜が、
静かに重なっていった。




