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北海道の朝
朝の仕込みの湯気が立ちのぼる。
大和は焼き台の温度を指先で確かめながら、
試作中の二色のだし巻きを見つめていた。
「東京の灯とこういう形で組むなんて、昔の俺が聞いたら驚くだろうな」
誰に向けたわけでもない独り言。
現場に立つと、自然と背筋が伸びる。
スタッフの動き、仕込みの量、客席の空気。
全部が“店長の勘”を呼び覚ます。
カウンターの端に置かれた二色のだし巻き。
東京の灯の人気メニューと、北海道の灯の看板メニュー。
その二つが一つになるなんて、少し不思議だ。
「……面白いよな、こういうの」
仕事モードの大和はは無口になる。
でも、胸の奥はどこか温かかった。




