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否定できなかった夜
「嫌いになった?」
俊介のあの声が、まだ耳の奥に残っている。
違うよ、と言いたかった。
嫌いじゃない、と言えばよかった。
でも、喉の奥で言葉が固まって、どうしても出てこなかった。
あのときの俊介の笑顔。
弱くて、壊れそうで、見ていられなかった。
あんな顔をさせたくなかったのに、私は何も言えなかった。
布団に入っても、胸の奥がざわついて眠れない。
嫌いじゃない。
でも、前みたいに“好き”とも言えない。
その事実が、いちばん苦しい。
(私は……変わってしまったんだ)
気づきたくなかったことに、気づいてしまった夜だった。




