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知らされた現実①
葵が店を辞めると決めた数日後。
閉店後の事務所で、大和は珍しく疲れた顔をしていた。
「店長、大丈夫ですか……?」
声をかけると、大和はゆっくりと顔を上げた。
その目の奥に、深い影が落ちている。
「……ああ。ちょっと、な」
言いにくそうに言葉を選んでいる。
葵は胸がざわついた。
「実は……妻が、病気でな」
その一言で、葵の心臓が止まったように感じた。
「乳ガンだ。今日、検査結果が出た」
蛍光灯の白い光が、大和の表情を淡く照らす。
その顔は、いつもの穏やかさとは違い、
どこか遠くを見つめているようだった。
葵は言葉を失った。
(どうして……どうして今……)
胸の奥が痛む。
けれど、その痛みは“恋”の痛みではなく、
大和の苦しみを思う痛みだった。
「……大変、ですね」
やっと絞り出した声は震えていた。
大和は小さくうなずいた。
「治療が始まる。仕事も家のことも、全部俺が支えないといけない。
……あいつ、強がりだからな」
その言葉に、大和の優しさが滲んでいた。
葵は胸が締めつけられた。
(この人は、こんなにも奥さんを大切にしている)
その瞬間、葵ははっきりと理解した。
――この恋は、絶対に叶えてはいけない。




