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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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知らされた現実①

葵が店を辞めると決めた数日後。

閉店後の事務所で、大和は珍しく疲れた顔をしていた。


「店長、大丈夫ですか……?」


声をかけると、大和はゆっくりと顔を上げた。

その目の奥に、深い影が落ちている。


「……ああ。ちょっと、な」


言いにくそうに言葉を選んでいる。

葵は胸がざわついた。


「実は……妻が、病気でな」


その一言で、葵の心臓が止まったように感じた。


「乳ガンだ。今日、検査結果が出た」


蛍光灯の白い光が、大和の表情を淡く照らす。

その顔は、いつもの穏やかさとは違い、

どこか遠くを見つめているようだった。


葵は言葉を失った。


(どうして……どうして今……)


胸の奥が痛む。

けれど、その痛みは“恋”の痛みではなく、

大和の苦しみを思う痛みだった。


「……大変、ですね」

やっと絞り出した声は震えていた。


大和は小さくうなずいた。


「治療が始まる。仕事も家のことも、全部俺が支えないといけない。

……あいつ、強がりだからな」


その言葉に、大和の優しさが滲んでいた。

葵は胸が締めつけられた。


(この人は、こんなにも奥さんを大切にしている)


その瞬間、葵ははっきりと理解した。


――この恋は、絶対に叶えてはいけない。

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