第九話 「ナルディアの力
「落ち着いたか??」
「うん…、…ありがとう、お兄ちゃん」
涙を流しながら、にこっと微笑んだナルディアの顔は先程までとは全く違った表情になっていた。
「良かった…!ナディの悲しい顔なんて見たくない!これから大変になるかも知れないけど、兄ちゃんが絶対守ってやるからな!だから、ナディは安心したら良い!」
安堵感が押し寄せる。心地良く、左手で優しく頭を撫でてくれている。
しかし左手とは逆の腕が、ふと視界に入る。ナルディアを強く抱きしめてくれている右腕が、酷く腫れ上がっている。痛みを感じさせない兄の姿にまた泣きそうになるのをグッと堪えナルディアは、すっと立ち上がる。
「ごめんね!痛かったよね!今から治してあげる!あたし、思い出したんだよ!あたし、魔法少女になったんだよ!見てて!」
右手をかざすと、胸の花紋が手の甲にも刻まれ、ハートの花紋が光を放つ!
いつの間にかナルディアの胸に付いているハート型の赤い宝石のブローチもまた、呼応するように光り輝いた!
「フラワークレスト!!」
『キュルルーン』
かけ声と共に、先端にハートの付いたロッドが、光り輝くブローチから飛び出してきたのだ!
クルクル回転するロッドを掴み、ナルディアは更に続ける!
「マジカルイリュージョン」
『キュルルーン』
かけ声と共に、ロッドからハート型の赤い光が現れ、ナルディアの全身を包み込んだ!足や手!身体に!次々とハートが弾ける!
フリフリのブラウスに、フリフリのレースの靴下に赤い靴を履いて、所々にモチーフの赤いハートが付いている。なんとも可愛らしいが、スカートが短い為、某国民的アニメのワ○メちゃんのように下着が丸出しである。
「愛する心は世界を癒すッ!!マジカル・ハート、爆誕ッッッ!!」
『キュルルーン』
!!?
「えへへー!変身出来たー!」
ちゃんとポーズを決めて変身する。とても嬉しそうなナルディアとは対象的に、突然の自体に眼が飛び出る程、驚愕し声も出ない一同!!
従者の中には次は何をされるのかと恐怖し、自衛の為に身構える者も当然多い。
「ちょ、超人的パワーと変身能力がナルディアの花紋の力なのか!」
なんとかそう言ったクラークに、皆の止まった思考が追いつかないながらも、無理やり受け入れようとする中で、シグルドだけは違った。
今、なんて言った?マジカル・ハートだって!?どう見ても魔法少女じゃないか!?ハートの花紋…まっまさか!?ナディは、あの時の少女なのか!?
「お兄ちゃんごめんね。足首と腕、折れちゃってるね。それに、吹き飛んだ衝撃で肩も外れかかってるし、天井を蹴った足の裏にもヒビが入ってるよ」
いつの間にかハートのメガネを装着し、患部を適切に診断し始める。
「ラブリーハート」
『キュルーン』
ナルディアがシグルドの足首と腕と肩そして足裏にロッドをかざすと、赤いハートの光が現れた!光るハートは患部に当たると『キュルーン』という音を立てて小さな赤いハートの光となって弾けて消えた。
「なっ、何をするの!ナディちゃん!お兄ちゃんに向かって!!」
母アンナの顔がまたも青褪める!さっきの直後だ、無理もない。絶叫にも似た声で叫ぶが、シグルドには分かっている。
これが、ナルディアの力なのだと。
「ありがとう!痛くない!治ってる!」
「やったー!!お兄ちゃんの足と腕、治って良かったよー!!えへへ!ハートの魔法少女はね、治癒の力なんだよ!」
「な、何を言っているの? シグちゃん!早く薬師に診て貰いなさい!」
先程から皆の思考が追い付かない。シグルドの足や腕が治ったなどと、理解出来る筈も無い。
「いいえ、お母様、傷は今ナディが治癒してくれました」
「治癒…ですって?」
「か、確認させて頂きます!」
慌てて薬師が患部を触診し、念入りに怪我が無いか確認する。
「がっ…外傷が…見当たりません!!」
「ナ、ナディちゃんは、傷を治せるというの…?」
「うんッ!あーっ、でも、みんな魔法が使えるなら、不思議じゃないよね。ちょっと大袈裟だったかな?」
皆が皆、息を飲み、辺りは異様な空気に包まれる。クラークが考え込み言葉を詰まらせた為、薬師が代わりに答える。
「…いえ、ナルディアお嬢様。魔法には治癒魔法は存在しないのです。痛みを和らげたりする事も、ましてや骨折を治す力などは到底ございません」
薬師頼みだと聞いて、治癒士がいるものなのかと少しは期待したけど、軽い治癒魔法でさえも、四大属性の中にはないのか。だとすると治療は本当に薬師頼みだという事か。だけどそれも一連の流れを見る限りだと打撲や擦り傷を治す程度なのだろうな。その証拠に俺の足や腕に、薬師はポーションを使わなかった。
魔法の世界だ、色々凄いとは思うが、さすが転生者!!ナディは俺以上に、かなりのチートだな!!
記憶が戻った前世の少女、もといナルディアは、周りの奇異の目に全く動じず、あっけらかんとしている。
「そーなんだ!じゃあ、魔法少女になれて良かったね」
本人は当然だと思っているのか、言動が軽い。先程からナルディアを観察していてシグルドは気が付いた。
どうやら、前世を思い出したからか、ナディはかなり流暢に言葉を話してるな、花紋が刻まれるまでも、女の子だからか、よく喋る子ではあったが。今では大人のように話をしている。
しかも力も、もう制御出来るようになったみたいだ!確か、魔法少女は力も凄く強い!だったか。こりゃあ怒らせたら、誰も手が付けられないぞ。
どう見ても、魔法幼女だって事は、内緒にしておこう。
しかし、あざと可愛い。格好もそうだが、治癒の赤い光が当たった時の、『キュルーン』の効果音はなんとも気が抜ける音だ。
「…ナディ、お前の力はどういったものなのだ?いや、どれ程の力なのだ?」
先程から考え込んでいたクラークが重い口を開けた。
「師匠ッッッ!!」
ハンスの悲痛な叫びが響き渡った。
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