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13.情報収集開始


 翌日の放課後、早速私はアイとアースを呼び出した。


 「てなわけで、アイシテさんについて調べるのを手伝って!」

 「はい、喜んで!ヒメのためならなんでもします!」

 「リディア、どうでもいいことで校内放送を使わせないでください」


 否、アースに呼び出してもらった。


 さすがに昨日に続きガブちゃんの特訓を抜け出すのは無理があるのでね。

 アースとアイの教師の特権を生かし、『リディア・ミルキーウェイ。放課後、体育準備室に来るように』と校内放送をかけてもらったのだ。


 これならガブちゃんも文句は言えない。

 話が済んだらさっさと戻ってこい。昨日さぼった分までみっちり鍛えてやる。と目が語っていたがあえてスルーした。

 

 「スルースキルって生きていくうえで結構重要だから、2人も鍛えた方が良いよ」

 「そのスルースキル(特訓逃亡)を活用した結果、昨夜天組校舎の一部が吹き飛びましたけどね」

 「朝礼で聞きました。ガブナーの攻撃をヒメが瞬間移動で躱した際の事故ですよね。さすがです、ヒメ!」

 「ほほほ~。時間も有限だし、そろそろ本題に入りましょうか~」


 昨日の説教(特訓)は思い出したくない。


 「そんなわけで! 実はアイシテさんっていう幽霊がこの学園にはいるんだって」


 どういうわけですかというアースの視線は無視して、私は昨日教えて貰ったアイシテさんの話を2人にした。


 「俗に言う学校の七不思議というものでしょうか」

 「うーん、それとはちょっと違う気がする」


 私も最初は学校の七不思議系かなと思った。だけどそれにしては噂の内容が詳細なんだよね。


 どんな噂にも必ず元になるものがあって、それは大きく二つに分けられる。

 事実か嘘か。


 真実であるほど噂の内容は詳細だ。

 じゃあ嘘から始まった噂には粗が多いのかと問われれば、答えはNO。

 目的を持った嘘は時には真実よりも緻密に作り上げられるものだ。


 で、結局私がなにを言いたいのかというと。

 重要なのは噂が真実か嘘かではなく、この詳細な噂を語った人物がこの学園にいるということ。

 そもそも噂は誰かが語り始めなければ広まらないからね。


 そしてその人物を私は闇の使者だと考えた。

 だってとっても怪しいじゃん。

 噂ではアイシテさんに会う方法も、アイシテさんによる被害も事細かに語られている。

 こんなのおいでおいでと手招きされているとしか思えない。またの名を挑発。


 時期的にもそろそろ闇の組織が動き出してもおかしくはない。

 だって学園生活が始まってもう1ヶ月以上が経過してるんだよ。私が闇の使者なら動くね。


 昨夜アリスの部屋に瞬間移動して相談をしたら、彼女も私と同じ考えだったのも背中を押した。(ちなみにおまけイベントのことも相談済み)


 でもさすがの私もいきなり現場に突撃するような馬鹿な真似はしない。まずは情報収集。欲を言えば最初に噂を広めた人物を特定したい。


 というわけで、私はアースとアイに力を借りることにしたのだ。

 私も人任せにしないで自分で動きたいんだけど、ガブちゃんの特訓があるので正直難しいんです。ごめんなさい。



 「まあとにかく、私は噂を知り尽くしてガブちゃん達に自慢したいの。なので手伝ってください!」



 だけど「学園で事件が起るかもしれないの」とか話したら、アイはともかくアースは絶対に力を貸してくれないからね。適当な理由をつけて真の狙いを隠す。

 なぜなら今のアースは私が厄介事に首を突っ込まないか監視しているから。


 「で? 本当はなにが目的なんですか?」

 「ぎっくぅ」


 だが、アースは騙されなかった。

 さすがアース。一筋縄ではいかないことはわかっていた。

 しかし私も伊達に修羅をくぐってきたわけじゃない。

 こんなこともあろうかと、他の案も考えていた。


 「だって私、ホームシックだから。ぐすん」

 「……。」


 必殺哀愁漂う美少女ヒロインムーブ。

 説明しよう。私のこの顔を見れば、どんな冷血漢も目に涙を浮かべ「力を貸します!」と言うのだ(自社調べ)。

 現に私の女優力に騙されてアイは「ヒメ、おかわいそうに」と泣いている。肝心のアースは無気力顔だけど。

 

 「意味がわかりません」


 敵は手強い。


 「…私、師匠とエルに会えなくて寂しいの」

 「そうですか」

 「そんな寂しさを紛らわすために噂話を求める私はそんなにおかしい!?」

 「おかしいですね」

 「ぐぬぬ」


 アースって結構強情なんだよね。基本私の味方をしてくれるけど、それでも自分が納得しなければてこでも動かない。どうしよう。もう泣き落とししかない?

 そう思われたとき、意外な援護射撃を受ける。


 「おい、なぜそんなに突っかかる。ヒメは学園に入学した当初から噂話を俺たちに集めるように頼んでいただろう」


 アイである。

 眉間に皺を寄せ、非難の眼差しでアースを見下ろしている。

 今日ほどアイが頼もしいと感じたことはあっただろうか。いや、ない!


 「そのときの理由もホームシックだった。ヒメの言動に矛盾はない」


 私はアイに賛同するようにぶんぶん首を縦に振る。

 そう。実はそうなのです。

 学園生活が始まってすぐ私は2人に学園中の噂話を集めてほしいと頼んだのだ。理由はもちろん、闇の使者の行動にいち早く気づきたいから。


 私もアリスも本編の記憶がないからね、何をするにも後手に回ってしまう。だけど後手に回ると生徒に被害が出てしまう。それはダメ。ではどうすればいいかというと、地道な情報収集で敵に先制攻撃をするしかない。

 そのため、ホームシックという理由で噂話を集めて貰っていたのだ。(正直に理由を話せばアースに怒られること間違いなしなので)


 まあ結局成果は出なくて今日に至るわけだが、それがここにきて功を奏するとは!

 というよりもここはアイに感謝だね。ナイスアシスト。あとでメガネ拭いてあげる。


 「…アイは見かけによらず頭が回りますよね」

 

 アースはため息をついて、わかりました。と頷いた。

 つまり手伝ってくれるということ!


 「ありがとう~! アイもアースも大好き!!」

 「仕事の傍ら軽く生徒に話を聞くだけですよ」

 「ヒメ! 感無量ですっ!」

 

 抱きつく私をアイとアースはしっかりとキャッチしてくれた。


 「ところでアイシテさんの話は誰から教えて貰ったんですか?」

 「うーんとね、友達とドSエロエロお色気養護教諭かな」

 「アオ先生の見方が変わりそうです」

 「……アオ先生」


 アイが考えこむように俯いてしまった。

 その顔が不安そうな悲しそうなものだから、少し心配になる。


 「どうしたの? なにかあった?」

 「いえ、俺はその方に一度もお会いしたことがなくて。会い行ってもいつも留守で…」

 「そういえば俺も一度顔を合わせた程度ですね」

 「あー。この学園びっくりするくらい広いからタイミング悪くすれ違っちゃうのかもね」


 特にアオ兄ちゃんはアルトを筆頭とした王族メンバーになにかあればすぐに駆り出される。常に学園中を走り回っているからアイは会えないのだろう。


 それにしてもアイがアオ兄ちゃんを気になっていたとは…。

 自慢じゃないけどアイはいつも私を中心に物事を考えている。だからアイが他の人に興味を持つのは純粋にうれしい。


 「よし! 今度アオ兄ちゃんに会ったら、アイに会ってみてって伝えるね!」

 「ヒメ! ありがとうございます」


 アイがうれしそうに頷いた。

 アオ兄ちゃんと友達になれるといいよね!




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