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間違っている部分があったため修正しました。
あとがきにお金の説明を追加 2014/8/14
まぶたに光を感じて目をあけるとそこは林の中だった。
木々の隙間からは木漏れ日が差し込み、すっと息を吸い込むと柔らかな緑の香りが肺いっぱいに広がる。
都会に住んでいて今までに感じたことのない自然の気配に知らず頬がほころぶ。
自分の体を見降ろしてみると麻のシャツに麻のズボン、革のブーツを履いていた。左の腰に重さを感じてそちらを見ると、そこには一本のロングソードが吊るされている。
(うわぁ、本物の剣だ!)
ついうれしくなって剣を抜き、振ったり握りを確かめてみたりする。
手に感じる重みからここが改めて異世界なんだと思い、ついでなのでアイテムボックスやスキルの確認などを一通りすることにした。
まずはアイテムボックス。
念じてみると頭の中に入っているアイテムのリストが映し出される。
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水筒
携帯食料×10
砥石
周辺の地図
銀貨×10
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周辺の地図はおそらく管理者が入れてくれたものだろう。
そして当座の資金である銀貨。
この世界の通貨は小銅貨、銅貨、大銅貨、小銀貨~~大金貨、白金貨があり、それぞれ10枚ごとに一つ繰り上がる。
こちらからの平均的な家族がひと月暮らすのに必要なお金がおよそ大銀貨1枚であるため、今俺の所持金は1カ月分ということになる。
まぁ怠けるわけにもいかないしこちらでの生活に慣れるのにそれくらいということだろう。
そしてお待ちかねのスキルである。
ステータスを呼び出してそれぞれに意識を向けると説明が頭の中に流れ込んでくる。
おそらくこれは『世界知識』の恩恵だろう。
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彼方 上岸 (16)
体力 (100%)
魔力 (100%)
状態 良好
スキル
『剣術』『超回復』『属性適性(全)』『結界術』
『召喚術』『錬金術』『鍛冶術』
ギフト
『世界知識』『アイテムボックス』『ステータス』
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『剣術』――一般的な武術で多く使われている。熟練度が低いためまだまだ剣に振られるレベルである。
『超回復』――体力や傷の治りなどを早くする。特殊スキルであるため熟練のアップは存在しない。
『属性適性(全)』――基本属性の火、水、土、風、光、闇、無に加え氷、木、雷、聖、毒が使える。熟練度が低いため攻撃には向かない。
『結界術』――指定範囲を結界で囲む。熟練度が低いため破れやすく、自分の周囲1mほどまでしか展開できない。
『召喚術』――自身の魔力にかりそめの生命と肉体を与え従える。《従魔の書》を呼び出し魔獣の魔石を取り込むことで召喚できる魔物が増えていく。《従魔の書》には行動を蓄積・共有する能力があり、さまざまな行動をさせることで強く賢くなる。行動によっては極まれに新種が登録されることもある。熟練度が低いため1体までしか呼び出せず、また呼び出す魔獣もそれほど強くない。現在登録なし。
『錬金術』――魔力によって物質を変換、変性させる。熟練度が低いため合成と分解、変形しか使えない。
『鍛冶術』――あらゆる武具、道具を作るのに必要なスキル。熟練度が低いため大したものは作れず、品質もそれほど良くない。
まずは『属性適性(全)』から。
火は危ないので水を出すことにする。
近くに木を狙って
「ウォーターボール!!」
すると一瞬体の中から何かがするりと抜けるような感覚がするとともにみる見る間に手のひらに水が集まって行き、拳大ほどになると――
――そのまま地面に落ちた。
パシャリと音を立ててはじけた水球はそのままゆっくりと地面にしみ込んでゆく。
しばらく無言でその場にたたずむ俺。
「……はぁ?」
ため息とも疑問ともとれる息をついて濡れた地面を見つめる。
「確かに無双はできないと聞いていたよ。
だけどこれは何というか……」
そう、これじゃない感がひしひしとする。
もっと魔法というのは派手であるべきだ。
それがどうだろう、コップ1杯ほどの水を作るとともに魔法を使う感覚が消え、後は先ほどの状態に陥ったわけである。
何というか戦うためのスキルというよりは日常生活が少しだけ楽になるという感じだ。
まぁ今後水の心配をしなくていいことがわかったのは僥倖ではあるが。
そうして俺の異世界初の魔法は何ともいいがたい空気の中で終わったのであった。
お金の単位はGです。
元の世界の価値に直すと小銅貨1枚で1円、銀貨は1万円となります。