第6話 隣国の酒場、ネチョネチョしてる
サタンの爆発魔法で、隣の国トナリーノへと足を踏み入れたアクマたち一行。
今は町から少し離れた場所を歩いている。
「なんでこんな遠い場所に出るかな! 町に中にワープすりゃあいいのに!」
アクマは文句たらたら。
「アタシの魔法は爆発で空間に穴を開けるんですよ? そんなことをしたら、住民を吹き飛ばしちゃうかもしれないじゃないですか! 少しは頭を使いやがれです!」
せっかく魔法を使ってワープしたというのに、文句をぶつけられ、サタンは不満を爆発させる。
「だいたい、ワープできる距離にだって制限があるんです! 魔力消費量も多くて疲れますし! わざわざついてきてやってるんだから、文句は言うなです! この腐れ外道ども!」
そんな2人を、デビルは落ち着いた声でなだめる。
「まぁまぁ、そうカッカしないで。アクマも、無理を言っちゃダメだよ?」
ついてきてやってる、と言ってるけど、サタンは自分からついてきたんじゃん。
と思っていても、口にはしないデビルだった。
ともかく、3人が町に着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
夜でも随分と賑わっている。
かなりの大都市と呼んでいいだろう。この国では首都に次ぐ第二の都市らしい。
「情報は酒場に集まる!」
ということで、3人は酒場へと向かった。
多くの客が集い、騒がしい声が響く中、空いている席に着いたのだが。
ネチョ。
「ん? なんだこりゃ?」
「うわっ、椅子がベトベトしてるね。誰かがお酒でもこぼしたのかな?」
「いや~ん! アタシの椅子もねちょねちょしてやがるです! 気持ち悪いです! 責任者出てこいって感じです!」
3人の言葉が示すとおり、椅子は完全に濡れ、ビチョビチョ状態だった。
しかも、ねとぉ~とした粘り気まである。
「いらっしゃいませ~♪ ご注文はお決まりですか~?」
近寄ってきたウェイトレスに、アクマが噛みつく。
「おいっ! この椅子は、いったいなんだ!? ベトベトしてるじゃね~か!」
「それは仕方がないんです。それでご注文は……」
「仕方がないってなんだよ!? 掃除してないだけだろ!? お前ら店員の怠慢じゃないのか!?」
「ですから、仕方がないんです。それより、ご注文を……」
話は完璧にすれ違っている。
そこで、周囲に目を向けてみたデビルがようやく気づいた。
「なんか……お客さんに、おかしなのが混じってない?」
「あれはスライムですね! お客の半数くらいが、スライムっぽいです!」
「なんだと? スライム!?」
アクマも見回してみると、確かに椅子に座っている(?)スライムの姿が多数確認できた。
ウェイトレスが解説を加える。
「お客様、旅をしてこられたんですね? 実は都市の外れに、スライムの魔王が住み着いてしまいまして……」
「スライムの魔王~!?」
デビルが驚きの声を上げる。
「魔王か! この国はスライムに支配されたってことだな!? よし、オレが退治してきてやる!」
アクマに至っては力強い叫び声を放つ。
そしてそのまま、酒場を飛び出していった。
「あ、待ってよ、アクマ!」
「待ちやがれです、勇者様!」
それに続く仲間たち。
「あの~、ご注文……」
残されたのは、呆然とたたずむウェイトレスの姿だけだった。
念願の(?)魔王退治に意気込むアクマ。だがその魔王は、スライムだという。
さてさて、どうなることやら。
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!