依頼1日終了
「え、あーと、お菓子をもらって嬉しくない人なんかいないでしょ!!」
「ふふ、そうだね。」
良かった、バレてなさそうだ…。
「でも、僕は形に残るものをあげたいんだ。お菓子みたいにすぐ無くなっちゃうものじゃなくてさ。」
この王子は、愛想良くして手懐けてるだけではなく本当にレイティーンのことを好きになってしまったのか。
でないと他人にまでこう話す理由がよくわからない。
「形に残るもの、か…。イヤリングなんていいんじゃない?」
あまり宝飾品の類は普段つけたくないけれど、推しに贈られるイヤリングなら良いかもしれない。
きっとそこまで目立たないだろうし、もし…もし断罪されても取っておける。
「イヤリング!!彼女はそういうのつけてくれるかなぁ。なんというか…野生的だから」
そんなふうに思われてたなんて…!
口をあんぐり開けて固まってしまった。
「おーい、どうした?」
私の前では笑っていると言っても王子として少し気を張っているクラッセルが、今は自然体で微笑んでいる。
ああ、かわいいな。
「かわいい…」
頭を撫でてからハッとした。
ただの冒険者風情がこんなことをするだなんて、王族に訴えられても仕方ない。
それに自分から婚約者と近い距離に行くだなんて、ただの馬鹿だ…。
「なんか、君と話してると肩の力が抜けるな…。こんな人に会ったのは二人目だ。」
「一人目は?」
「婚約者」
はぁ、良かった…。
バレてないと思う!!
「浮気はダメですよ?」
そうだ、護衛と浮気をするようなふしだらな夫は持ちたくない!!
「もちろん」
ふっと笑いながら行った彼を見て、ああ、レイティーンの時だったらこんなことは言えないなと思う。
こうして力を抜いて話せていることが、本当に幸せに感じる。
オレンジ色の暖かい斜陽が、体をぽかぽかと温めてくれる。
「そろそろあの騎士たちのところに戻らない?あまり遅くなると心配されると思う」
「そうだね、わかった。」
「さぁ、結構スピード出してきたので遠く離れてるから。さっきと同じ帰り方で良い?」
「…よくはないけど、仕方ないんだろう?大人しく抱かれることにするよ」
軽く肩を上げながら笑っていうクラッセルと、前より仲良くなれたと思う。
まぁ、私としでじゃないわけだけど…。
「よし、じゃあ行くよ!!」
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伝わってくる彼女の体温に頬を染めながら、改めて確信する。
この冒険者はレイティーンだ。間違いない。
実は昔、僕の信用する側近をレイティーンの家に向かわせてみたことがある。
どこか普通の令嬢と違う、最初はとても警戒してきて挑戦的だったのに、懐くと可愛くて仕方がない彼女の家に。
向かわせた彼は影武者的な仕事がとても得意で優秀だ。
だから、伝えられた情報が間違っていることはないと思う。
レイティーンには秘密があった。
魔法が使えないと言っておきながら、少し原理の違う強大な力を行使できるようだ。
そのことを影武者に言われた時には一切彼女を疑わず、「見間違いか何かじゃないかな」そう言ってしまった。
しかし、婚約披露パーティーで見た信じられないほどの運動神経に納得せざるを得なかったし、競っていた時点であんなに細い見た目で結構筋肉質の僕に勝てるわけがないはずだと感じたことを思い出したのだ。
その後騎士学校に入学したいだとか、僕の愛しい婚約者様はなかなか変わったことを言う。
そしてその洗礼の儀式でも怖いほどの力を見せつけてきた。
これで、この君のことが大好きでよーく知ってる僕にバレないとでも思ってるのかな?
聞いてみたいけどそんなことを言ったら、怖がられるか、「お、おやつの時間ですわ!」とか言って逃げられるかに決まってるから、こっそり僕が探ることにしたんだ。
もちろんのんびりした休日を過ごしたかったのも勿論だけれどね。
そしたらやっぱり。
あんな力を使えるけれど覆面の冒険者がいることも、軽く噂で聞いた程度だったから驚いたけど、彼女の無防備さが一番びっくりだったね。
だってお姫様抱っこしたら、フードから顔が見えるに決まってるのに。
ただ僕を最速で森の中に運ぶことしか考えてなさそうな真剣な顔、愛おしかったなぁ。
あっちは僕がクラッセルだということに気づいて、それを知らないふりしていそうだったけど、当たり前だよね。
君みたいな破天荒な婚約者は、世界に一人しかいないから。
覆面の冒険者がいるって聞いて、レイティーンじゃないかなって思ってわざわざ無邪気な子供のふりをしたり、派手に魔物に怯えたりしたんだ。
まぁ、ちょっと…ちょっとだけ怖かったけどね。
まだ依頼は二日あるよ。
さぁもっともっと、からかわせて、大好きなレティー。




