第80話 完了
「えっ? 仕事帰り?」
「へ? もう終わって、食料積み込みのために来たんすよ? あらかじめやっておきたいって言ってたじゃないっすか!」
「そうだけどさ……なんでクール便みたいなトラックで来てるの?」
「あー、ちょっと冷凍しながら運びたいモノがあったんで、これで来ることにしたんす。冷凍品とかも運べまっすよ! 持っていきまっすか?」
「……じゃあせっかくだから、少し持っていくか」
「はーい」
「お前が運んでね」
「えー!?」
「おい、いくらなんでもこの量は多すぎないか? 全部食べ切れるのか?」
「余ったらお家持って帰るんで問題ないっす」
「どんな食生活してるんだよ……」
「えへへ」
「褒めてないからな……」
「それにしても、まだまだ入るっすね。この機体スゴくないっすか!?」
「贅沢にも程があるな……なんでこんなに設備が充実しているんだ?」
「なんか偉い人が、作り始めたらいろいろ、とまらなくなっちゃったらしいっす」
「自重というものを知らないようだからな……」
「なにしろ、おウチより広々としてて快適そうっすからねー」
「いいよなー住みたいよなー」
「いいっすよねー住みたいっすねー」
「……お前ここに普段から住んじゃえばいいんじゃないの?」
「へっ?」
「だって誰も使ってないんだろ。操縦する奴だって他にいるかわかんないし、専属パイロットにでもなって住み着いちゃえば?」
「あー、それはこの機体借りる時にも言われたんすけど……」
「断ったの?」
「だって専属になっちゃうと、いつ駆り出されるかわからなくて、地球の裏側とか行っちゃうとさすがに日帰りとかは無理なんす」
「別にそれくらい良くない?」
「ダメっすよ!」
「なんで?」
「なんでって……」
「テキトーにそこらに止めて一泊しても良いし、なんなら自動操縦で夜行運転して朝になったら起きて着陸とか、この機体の性能とお前の腕があれば、なんだってできるんじゃないの?」
「できないこともあるっす……」
「いい話だと思うんだけどなあ」
「ほ、ほら、ボクって走りながら風を受けたいんすよ! そうじゃないと雰囲気が出ないんす!」
「この前、密閉した車の中でノリノリで運転してたが……」
「そういうのもいいんすけど! どこまでも自由を感じたいんす!」
「そういうもんかねえ……」
「そうっす!」
「あ、ここで降りるよ」
「へ? ウチに帰らないんすか?」
「ちょっと寄り道するから」
「まだなんか買うモノとかあったっすか?」
「いや、ヘアーサロン寄るだけ」
「あー、なら店の前まで行くっす」
「店のこと知ってるんだ」
「僕を何だと思ってるんすか……人を乗せていくこともあるし、自分でもたまには行くっす」
「それもそうか」
「旅行の前に髪を整えるなんて素敵ですね」
「いえ、普段は月一くらいで髪を切ってもらっているんです。この前がちょっとウッカリ間があき過ぎていただけで……」
「そうでしたか」
「まぁ、これでようやく全ての準備を終わらせられました。世界を一周するってなると、やっぱりそれなりに準備が大変でした」
「今度、旅の思い出話など聞かせてください」
「ひたすらグルっと回る旅なので、面白いエピソードが出てくるかどうか……」
「きっとありますよ。すばらしい旅を」
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