第53話 契約
「よろしいのですか? あなたがお仲間になってくださるのは嬉しいですけれども、あの方に関わりすぎると後悔するかも知れませんよ?」
「えっ、そうなんですか?」
「同僚のうち二名は、そういう傾向がありますので」
「なにそれこわい……」
「ふふ、まあ深刻な状況には見えませんから、そんなに心配なさらないでも良いとは思いますけど」
「頭の片隅に入れておきます」
「それでは、今日の回収作業を終わらせてから、また伺いますね。何時頃がよろしいでしょうか?」
「時間はどのくらいかかりそうですか?」
「そういうことを気にする必要はありません」
「そうですか……それでは夜8時にお願いできますか」
「わかりました。ではその時刻に、ここにいらしてください」
「また今夜お会いしましょう」
「こんばんは。お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、ちょうど準備ができたところですので――それでは、こちらへどうぞ」
「こちらって……いつもの収集車ですよね……?」
「ええまあ。念のため注意をしておきますと、普段、街中で見かけても、決してこのような行動をしてはいけませんよ。危ないどころか、命の危険がありますからね。下手をすると、他の人まで巻き添えにしてしまいます」
「……でしょうね」
「今はこのように、何の危険もありません。私が先導しますので、ついてきてください」
「はい……」
私が中に入ると同時に、入り口が閉まった。中は明るくはないが、暗闇でもない。もちろん臭くもない。完全に異世界に入り込んでしまったようだ。
「私が町長です」
「はあ……?」
「ネタが通じていないかと」
「はあ……」
「……なんかマズかったですか?」
「いや、いいんだ……僕がスベっただけだから」
「そうですね」
「そうですか……」
……ユーモアがあるって良い事だよね、うん。
「それじゃ、ノルマなしの完全歩合制で働きたいということでいいんだね」
「その方が気が楽なので。生活に困っているわけではないし、今の生活リズムもできるだけ崩したくはないんです」
「オーケー。報酬は現金でもいいけど――生活に困っていないんなら、僕としてはポイント払いをオススメするよ!」
「ポイント払い……噂には聞いていましたが、こちらでも導入されているとは……!」
「いや、まだ誰もそういう待遇にはなってないけど」
「……」
「だってポイントプログラムが始まったの、つい最近でしょ! それはそれとして、ポイント払いをオススメする理由っていうのはね――実は! ポイント交換品にはシークレット――つまり隠しアイテムが存在するのだよ!」
「そんなものが……私はともかく、ウパルパさんにも内緒で導入しているんですか?」
「うん!」
「……現時点では存在しませんよね。少なくとも私は把握していませんが」
「ウルサイなあ! 構想はたくさんあるんだよ! どうせ言ってもバカにしたり逃げたり天を仰いだりするだけだろ君たちは!」
「そうですね」
「ムキーッ!」
……大体のことは察することができた。悪い人じゃないなら大丈夫、多分。
「……ハッ! いやいやそんな、べつに怪しいモノでは……ない……はず……」
「そうですか……」
「ま、まあ、お金では買えないプライスレスなものってあるでしょ! 最悪、あとでポイントを現金にコッソリ変える手続きも用意するからさ! どう!?」
「ポイントプログラムのアドバイザーとしては、聞き捨てならない発言を耳にしたような――」
「ウワー! なぜか話が拗れてきちゃった! どうしよう! ねえどうしよう!」
「ポイントの現金化は御法度でしょうね」
「じゃあそんなことしない! なんか実物での生活給付みたいなものにする!」
「交換品についての提案や交渉は可能でしょうか」
「もちろん! いついかなる時も、ありとあらゆるアイデアを募集している!」
「ではポイント払いでお願いします」
「やったー!」
「契約成立ですね」
「よろしくお願いいたします」
「めでたいねえ! お祝いとしてこの世界の真実、ゲロっちゃうよー!!」
「えっ!?」
「正気ですか」




