初めての友だちは…
それからしばらくの後、兄に連れられた5人の少年が青の間へとやってきた。
5歳の少年とはいえ、この国で最も尊い存在である皇帝陛下を前にして、彼らは緊張の面持ちだ。
さすがに8歳の高 堅少年は堂々とした態度だったけれど、ほかの子たちはそわそわしたりじっと固まっていたり、子どもらしさが抜けきらない雰囲気だった。
まずは、椅子に座る紫釉様の正面に5人が立って並び、自己紹介をするところから始まる。
「本日は陛下に拝謁でき、誠に感激しております。高 堅と申します。特技は弓と絵にございます」
合掌する様も挨拶を述べる言葉も、とても頼もしく凛々しい。
肩より少し長い髪を顔の右側で一つに結んだ彼は、紫釉様を前にしても軽く笑みを浮かべられるくらい余裕がある。
紫釉様より3歳上なら、かなり有力な側近候補だろう。どちらかというと武官っぽい雰囲気が感じられるけれど、口調や態度からは官吏にもなれそうだと思うくらいには聡明さがある。
少年たちの自己紹介を紫釉様は黙って聞いていて、不安より期待が大きいような印象だ。
私と静蕾様は、こっそりとその様子を扉の陰から見守る。
「大丈夫そうですね」
静蕾様が、目元を和らげてそう言った。
「ええ、ホッといたしました」
私も安堵の息をつく。
これから彼らは、部屋で菓子を食べて話をしたり、鳳凰園にて蹴鞠をしたり、後宮の鳥や花を楽しめる場所で散策をした後に解散となる。
最初の顔合わせということで時間はとても短いものの、紫釉様にとってはいい機会になるだろう。
それに、これからは毎月彼らと一緒に勉学や術の稽古も行われるというから、今日のこの時間が親しくなる足がかりとなれば……と私たちは考えている。
「そろそろ、お茶の準備をしましょうか。凜風は菓子をお願いします」
「はい」
本来であれば、世話係は給仕をしない。
けれど今回に限り、私たちがこの場にいた方が紫釉様のお心が休まるだろうということで、奥の部屋で給仕係が用意したものを私たちが席へと運ぶ。
円卓に座った紫釉様と5人の少年たちは、茶や菓子を前に少しだけ笑顔を見せ始めていた。
「こちらは、棗茶にございます。砂糖を少し入れて召し上がるのもおいしいですよ」
棗茶は、光燕では祝い事によく出される茶として一般的だ。紫釉様の好きな龍眼の菓子も添え、花模様にあしらった団子も並ぶ。
少年たちは、紫釉様が手をつけたのを確認してから自分たちも茶や菓子を食べ始め、少しずつ会話も弾んでいく。
ここでもやはり、皆に気を配っているのは高 堅少年だった。
最年長ということもあるが、どうやら世話焼き気質らしい。事前に見せてもらった調査書によると、妹が2人いるということだったから年下の世話をするという経験がほかの子よりも豊富なのだろう。
紫釉様も彼に懐いているというような雰囲気を見せ始め、笑顔が多かった。
「我のことは、紫釉と呼ぶがいい。友だちになるらしいからな」
「よろしいのですか?」
5人の少年は、紫釉様がかわいらしい雰囲気で中身も穏やかなことに安心しているようだ。
ただし、紫釉という名前が発音しにくいようで……。
「シュウ様!シュウ様はどんな書物が好きですか?」
「シュウ様、どこで遊ぶのが好きでしょう?」
「紫釉だ」
「「シュウ様!」
「周ではない、紫釉じゃ」
「はい、シュウ様」
「…………もう周でよい」
5、6歳の少年たちからは周様と呼ばれていて、何ともほのぼのとした空気が漂っていた。
不機嫌になるわけではなく早々に諦めたところを見ると、やはり紫釉様は5歳にしては落ち着いているというか「紫釉様、大人だな……」と私たちは思うのだった。




