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精神年齢六十五歳のボク♂が悪女さんに転生したようです。  作者: Rin
第一章 突発的スタートダッシュ
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ボクらの教室戦争



別れを惜しむ寧々さんを引き剥がし、いったん下駄箱まで戻って、お目当てのブツを引っ張ってきてから教室へ戻る。金持ち校でもあるもんはあるんだなあ…と思いながら、口で「ブォン……ブォン…」と某映画の真似をしながら廊下を歩く。

ガラァン、と予鈴の鐘が鳴り響く。それと同時に教室へ滑り込もうとドアを開け放つと、ボールのようなものが放物線を描き飛んできた。

「ヘイッ」

勿論予測していたボクは叫びながら避ける。叫び声についてはノーコメントで。

ベチャ、と廊下に叩きつけられたのは、無残な姿の卵。飛び散った白身や黄身の後始末が大変そうだ。…合掌。

「愛美さんが居るんだ、お前なんかのカスがこっちくんな!」

「うぜぇんだよ!」

「淫乱女が…」

「うわぁ、最悪ぅ…。宮下ちゃん、大丈夫?」

 クラスメイトが口々に暴言を吐いてお嬢様を庇う。酷いなぁ、青き春を共にする仲間だというのに。

ちなみにお嬢様と赤キーの反応は。

「っひ……。み、皆、私は大丈夫だよ?氷雨さんに酷いことしちゃ駄目だよ…」

「ッチ、おい愛美。こっち来い。あいつのことなんか見んな」

 あからさまにおびえた顔をするお嬢様を背後に庇い、人を射殺しそうな目でボクの顔を睨みつけている。さながら姫を護る騎士だ。

おーやぁー…?うぇふふっふふふふふ、これはこれは青い春ってやつですなぁ??

『お前のことは、俺が守る…』

『普段は不良っぽいのに、なにこの胸のときめき…。あたし、どうしちゃったの?!』(朔裏声)

みたいな展開ですよね!うんうん青春してますねー青い春ですねー!!若いっていいですねーー!!爺はそれを影ながらに応援してるからね!赤キー君!名前忘れたけど!

…いやそれよりも、

「食べ物を粗末にするんじゃない!!今庶民の間で卵どんだけ高いのか分かってる!?ああ金持ちか、こんなところまで金持ちアピールですか!卵、投げる、ダメゼッタイ!!」

今の卵で一杯の卵かけご飯が!黄金色に輝く素敵で美しい庶民の味方が食べられたというのに!だから嫌いなんだよ金持ちは!ちゃんと物のありがたみってものを知りなさい!じゃないと将来碌な大人になりませんよ!

「う、うるせぇ、皆やっちまえ!」

そういって、入り口に立つボクへ向かって皆が投球ポーズを構える。どうやらその手に持つ卵様を、ボクにぶつけようと言う魂胆のようだ。確かに、あの中身をぶちまけられたらたまったもんじゃない。ベットベトで授業を受けるのはごめんだ。

そっちがやるというのならば、ボクだってやってやろうじゃないか。

「ぅおらぁっ!」

 見るからに豪腕そうな背の高い男子が、空を裂いて卵を投球してくる。卵とはいえ当たったら痛そうだ。

「四番バッター、氷雨朔!行っきまーっす!」

野球全然知らないけど!

投げつけられた純白の卵を、心の中で平謝りしながらも手にしていた誰かの黒い傘(おそらく男子の)で打ち潰す。

「べしゃっ」

ブォン、と傘が空を切り、飛来してきた卵をつぶした。その純白の殻と白身、黄金の黄身は黒い布地に良く映えて、とても素敵な感じに装飾された。

「ああああああああああ俺の傘!!!」

 オーマイゴット!とでも叫びそうなくらい大音量でシャウトしたのは、今朝がたバケツを持ってきたあほの申し子。ボクが言うのもなんだけれど、不憫すぎないか。

「ヒャッハァァァァァ、ボクに打ち返せないものは無いぜ!バンバンこいやぁぁぁぁ!」

ブゥン、ブゥンと傘が空中を舞い、華麗に彩られるバケツ君の傘。

「うわああああああああああああああ!」

響くバケツ君の絶叫。

「「「「「沙棚ああああああああああああ!!!」」」」」

バケツ君の名前を叫び哀れみながらも卵を投げ続けるクラスメイト。その腕は決して止まらない。皆さん結構辛らつで悪ノリ好きですね…。

あとバケツ君沙棚君って言うんだ……合掌…。

がらぁん、ごろぉん、とボクらの攻防戦を終わらせるように本鈴が鳴り響いた。




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