罠をこちらの手駒に致しましょう
結局、先程声をかけてきた『館山武彦さん』とは、連絡先を交換して別れました。
電話に気付いてくださったおば様とも無事に合流でき、家に帰ってきました。
ふっふっふっふっふっふっ……。
どなたが仕掛けてこられたのかは存じませんが、私の性悪女っぷりを舐めておられますね。
この罠と同じものは、何度となく仕掛けられてきています。
……そりゃ、最初の数回は、騙されてしまいましたが、人間成長する生き物です!
次第に、『本当の好き』なのか、『嘘の好き』なのかが分かるようになってきました。
…………今まで『本当の好き』をくださったのは、家族と愛華さんに夏さん、幼馴染みたちだけというのが寂しくはありますが。
…………仕方がありませんよね。私に、幼馴染みを上回る魅力がなかったのが悪いのですから。
…………落ち込んでばかりもいられません!
さて、協力を求めに行きますか!!
「こんにちは、リュウ。」
「なんだ、どうした?」
「リュウにお願いがあって……協力してもらえます?」
「ああ、いいぜ?言ってみろ。」
即答してくださり、いつものように、私を膝に乗せ、ぎゅっと抱き締めてくれます。
「実は、いつものなんです。」
「……誰だ?京香にそんなこと仕掛けたやつは?」
リュウの腕の力が増してきて、苦しくなります。
「リュウ!痛いです。」
「悪い。つい……。」
リュウが力を緩めてくださったので、いつものように、打ち合わせを始めました。
方法とは、とても他力本願な方法です。
今まで見たことがない方でしたので、きっと他校の方でしょう。
しかも、自分に自信をもっておられるタイプです。
そういった方々は、リュウに引き合わせると、ほぼ確実に、リュウに夢中になってしまうんです。
そこで、リュウが首謀者を聞けば、あっさりと教えてくださいます。
おとなしい方々は、
『お美しくて、見ているだけで満足だわ。』
だの、
『リュウ様のお隣に立つなど、畏れ多いですわ。』
だの、
『まるで、1枚の絵画を見ているよう。』
などと言われて、近寄らずに見ているだけなのです。
美しいから見ていたいけれども、美しすぎて、それ以上を求める気がなくなるのだそうです。
けれども、自分に自信のある方は、
『リュウ様にふさわしいのは自分だ。』
だの、
『リュウ様の特別になりたい。』
だの、
『リュウの隣に立つのは自分だ。』
などと、リュウの側にいることを望まれます。
そして、リュウに少しでも気に入られるよう、リュウの言うことを何でも聞いたり、リュウにいろいろなものをプレゼントしたり、リュウに近寄ろうとする人間を排除したりします。
しかし、リュウがそれを受け入れることはありませんでした。
むしろ、嫌悪感を抱くようで、周りの方々の努力が空回りしているのがお気の毒でもありました。
お伝えしようとも思ったのですが、
『騙そうとしたってそうはいかない!』
と、聞いてはいただけず……。
いつか、気付いてくださり、私への八つ当たりもやめてくださるとうれしいのですが……。
とりあえず今は、首謀者を突き止めるのが先ですね。
「それじゃあ、来週の土曜日に、館山さんとデートの約束を致しますので、リュウは、しばらくたってから、偶然を装って来てください。」
「却下。最初から京香と一緒にいる。」
「えっ!でもそれでは、もし首謀者に
見られていた場合、館山さんの裏切りに気付かれてしまいますよ?」
「なら、俺があらかじめ周囲を見ておくから。それでいいな?」
「それなら…分かりました。では、来週お願いします。」
「分かった。……じゃあ、今日は報酬をもらおうかな。」
「何がいいですか?」
「煮込みハンバーグとゼリー。」
「分かりました。」
その後は、リュウを家に招き、一緒に作り、楽しい夕食の時間を過ごしました。




