第四話 手のかかる女だ。
「楽しみですね、シルヴェスター様」
「そうだね、リーン。見慣れた王都でも、キミとなら特別な場所になるから」
「ふふ、とても嬉しいです!」
なんなんだよ、この空間……。
あーしたち四人は、リーンの馬車で王都に向かっていた。
それはいい、それはいいんだけど……。
「リーン、キミは本当に美しいね」
「ありがとうございます。シルヴェスター様こそ、とても素敵です」
「リーン……!!」
「シルヴェスター様……」
「はいはい! あーしたちいるの忘れないでくれる!?」
無事くっついたのはいいけどさ、人前でいちゃいちゃすんな!
隣に座る笑顔のリーン、その正面に座る嬉しそうなシル。
そして、あーしの正面に座り、腕を組んでるタイガ……。
「なんだ?」
「別に。てかあんた、中乗ってていいの?」
「リーン様が御者を呼んでくれたからな」
「ぎょしゃ?」
「……馬車を走らせる者のことだ」
「へぇ〜、そんな仕事があるんだ」
こいつ、態度も口も性格も悪いけど、ちゃんと教えてくれんだよね。
リーンの護衛騎士なだけあって、実は世話焼きとかなんかな?
「お前、本当にバカなんだな」
「は?」
撤回! 撤回!
くそ腹立つなこいつ!!
「タイガ、ユイ様はこちらに来て日が浅いのですから」
「しかし、あまりにも頭が足りないかと」
「はぁ!? 思いやりの足りてないあんたに、そんなこと言われたくないんだけど!?」
「そんなもの、なくて困らないだろう。頭は足りないと不便だ」
「あんたねぇ!!」
馬車の中だと言うことも忘れ、思わず立ち上がる。
そのタイミングで、大きく車体が揺れた。
*
……あれ? 痛く……ない?
「……おい、重い。さっさと退けろ」
うん? なんか声近くね?
しかもなんかあったかい……?
顔を上げると、迷惑そうな顔のタイガと至近距離で目が合う。
「ぎゃあああ!!」
「バカ! 急に立ち上がると――」
——ゴンッ!!
ものすごい音を立てて、あーしの頭がタイガの顔面に直撃した。
「あ、ごめん!! 大丈夫!?」
「……お前、いい加減にしろよ」
めっちゃ怒ってね……。
助けてくれたのに、叫んじゃったし。
それに鼻押さえてる……。
あーしがぶつかっちゃったから……?
「ごめん……。血、出てる?」
「……出ていない、大丈夫だ」
「ごめんね、支えてくれたのにびっくりして……」
「……もういいから、離れてくれ」
そう言われて我に返る。
めちゃめちゃ至近距離だった……!!
「ご、ごめん!!」
「もういい、お前は黙って座ってろ」
なんだか気まずくなって、タイガから顔を逸らす。
そんなあーしたちを、シルとリーンはニコニコと眺めていた。
*
「到着しましたね!」
「うん。リーン、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
シルの手を取り、リーンが馬車から降りる。
へぇー、これがエスコートってやつか!
本当にやるんだな〜。
まぁリーンみたいにかわいい子には、やってあげたくなるかー!
「よし! 降りよーっと!」
「待て、俺が先だ」
あーしを押し退けるかのように、タイガが先に馬車から降りた。
「はぁ!? あーしが今降りようとしてたじゃん! 順番守ってよね!」
「……何を言っている? 早く降りろ」
「はいはい、降りますよー!」
頭突きしちゃって悪かったなー、って思ってたのにさ!
なんなんこの態度! やっぱり腹立つ!!
そんなことを思っていると、タイガに手を差し出された。
「なに、この手」
「何って、危ないだろ」
当たり前のようにタイガが言う。
……うん? どゆこと?
降りるだけなんだから危なくなくない?
あーし、別にリーンみたいに国宝でもないし。
「いや、大丈夫だよ?」
「いいから、大人しく手を出せ」
「なにその脅迫みたいな言い方!」
「お前は本当に手のかかる女だ……」
「はぁ!? またそうやって——」
口を返そうとした瞬間、グイッと腕を引っ張られた。
バランスを崩し、そのままタイガの胸へと落っこちる。
そんなあーしを、迷惑そうな顔をしながら再び受け止めてくれた。
「ほら、言った通りだろ」
「誰のせいだよ!!」
「へぇ、二人はそんなにいい感じだったんだ」
「はい! とってもお似合いですよね!」
どこかだよ……。
なんか、盛り上がってるし……。
「もういいから早く行こうよ……」
「そうですね! では、参りましょう!」
「リーン、危ないから手を」
「はい、シルヴァスター様」
仲睦まじく、二人は手を取り合い歩き出す。
……え、手繋ぐの!?
いやでもね! あーしたちは別にね!
ほら! 二人は想い合ってるから!
「おい、手を出せ」
「だからその脅迫みたいな言い方やめてくんない!?」
「それなら、なんと言えばいい」
……いや、言わんでいいから。
つーかそんな真顔で聞くことじゃなくない?
だいたいあーしたち、そういう関係じゃないし。
「別に繋がなくてよくない? あーしたちはあの二人とは違うじゃん」
「そうだ、違う」
「でしょ!? じゃあ別にこのままでいいじゃん! 想い合ってないし!」
「お前、何を言っているんだ?」
「だから、別に手繋がなくてよくない? って言ってんの!」
「よくない」
はい!? いやなんでだよ!!
あーしちゃんと理由言ったよね!? 聞いてたよね!?
「だから——」
「お前こそ何を勘違いしている。うろちょろされて、迷子になられたら迷惑だ。なら、迷子にならないよう繋いでおけばいいだろ」
「あーし子供じゃないんだけど!!」
「うるさい。いいから行くぞ」
タイガに強引に手を引かれながら、シルとリーンの後を追った。
すごい組み合わせ




