第一話 あーし赤点常習犯ですよ?
「リーン・カンパニュラ。キミとの婚約を破棄する!!」
急に異世界転生したと思ったら、婚約破棄の真っ最中だったあの日。
あれから聖女リーンと王太子シルヴェスターは、色々あったが再び結ばれた。
あーしに身体を譲るために、自らは手鏡になるという暴挙に近い術を使ったニア。
推しカプであるシルリンが無事結ばれたため、今は元の身体へと戻っている。
二人がくっつき、ニアが元の身体に戻り、役目を終えたあーしは元の世界へと戻るのかと思ってたんだけど……。
「ユイ様、お身体の調子はいかがですか?」
「あのさ、リーン。毎日来なくて大丈夫だよ」
「いけません。まだ身体がこちらの世界に慣れていないかもしれませんから」
「もうあれから1週間経ってるし」
「まだ1週間です!」
あーしこと《ユイ》は何故かこっちの世界に残ることになった。
聖女であるリーンが禁術を使ったようで、身体ごとこっちの世界にいる。
……聖女が禁術って、大丈夫なんかこの国。
「リーン、ユイの調子はどうだい?」
「シルヴェスター様、聞いてください。ユイ様が、もう大丈夫だから毎日来なくていいとおっしゃるのです!」
「ダメだよユイ。まだ本調子ではないのだから」
「いや本調子だよ。いつまで寝かされ続けんの?」
そろそろ寝てるのにも飽きてきた。
それにこの二人、過保護なんだよな。
もう大丈夫だって言ってんのにさ。
「そうかい? それなら話があるのだけれど」
「なに? あーし難しいことはわからんよ」
「それはわかっているよ」
真顔でさも当然のように答えるシル。
この男、本当に失礼なやつだ。
「ユイは、今いくつなんだい?」
「は? なに急に」
「19、ぐらいかな?」
「失礼だな! まだ17だよ! あーし早生まれなの!!」
「ということは……」
「わたくしと同じですね!」
リーンがにっこりと笑う。
……へぇ、同い年なんだ。もっと幼く見えるけど。
「僕は20さ」
「へぇ。で、なんで急に歳の話?」
「もう少し興味を持ってくれてもいいんじゃないかい……。まぁ、それは置いておいて、キミにも学園に通ってもらおうと思ってね」
「学園?」
「はい。わたくしたちが通っているところに、ユイ様もいかがかと」
思わず二人から、顔を背けてしまう。
話って、これのことか。
学校、あんまり行きたくないんだよなぁ。
引っ越してからいい思い出ないし。
「……ユイ、向こうでなにがあったのかはわからない。でも学園には僕もいるし、それなら——」
「え!? ハタチになってんのに学校通ってんの!?」
「ハタチ……?」
「あ、えっと。20歳でも学校行くの?」
大学的な感じ? でもリーンもニアもいるんしょ?
こっちでは学校の年齢が違うんかな?
不思議に思ってると、シルも同じような顔をした。
「当たり前だろう? まぁ、もうじき僕は卒業するんだけれど」
「シルヴェスター様が卒業しても、わたくしたちがいますから大丈夫ですよ!」
「でも、あーし勉強苦手だしさ……」
「大丈夫です! わたくしたちがサポートしますから!」
両手をギュッと、リーンに握られる。
えぇ……。まじで?
あーし赤点常習犯ですよ? それで大丈夫なの……。
「と、いうことで。もう本調子なら明日から学園に通おうか」
「いや急展開過ぎん!?」
「もう手続きは済んでいますので大丈夫ですよ?」
「いやいや、そういう問題じゃなくてさ!」
「制服も用意してある。必要な教材も揃えてあるから安心してくれて構わない」
「いやだからさ……」
そういうことじゃないんだけど……。
「楽しみですね、ユイ様!」
「こっちでの学園生活を楽しんでくれると嬉しいよ」
すごく楽しそうだけど、善意の押し付けがすごい……。
*
「おはようございます、ユイ様!」
「ねぇ……これで行くの……?」
「はい! 危ないですからね」
「通学するだけじゃん……」
翌朝、リーンがあーしを迎えにきてくれた。
豪華な馬車で。
「さぁユイ様、どうぞ!」
「いや、あーしは歩いていくよ……」
「場所、ご存知ですか?」
「そんなのスマホで調べれば——」
あ、ないじゃん。スマホ……。
「はい! では乗ってくださいね!」
リーンにグイグイ押され、馬車に詰められる。
赤い布貼りの座席は、まるでソファのような座り心地だ。
「すごい……ふかふかしてる」
「こちらで快適に学園までお送りいたします!」
「そんな遠いの?」
「はい、申し訳ございません。5分ほどかかりますがご容赦ください」
「いや十分近いっしょ……」
金持ちの感覚ってわっかんないなぁ……。
「あ、そうです! クラスはわたくしと一緒ですのでご安心ください!」
「リーンと一緒か! ニアは?」
「ニア様はお隣のクラスなのです」
「そっか、みんな一緒ってわけじゃないんだね」
でも、リーンが一緒なら安心か……。
「学園生活楽しみましょうね!」
「うん、ありがとうリーン」
それから馬車に揺られ、学園には着いたんだけど――。
「でっっっっか!! これ全部学校!?」
「はい。そんなに大きいでしょうか?」
「これあれだよ……夢の国だよ……」
真ん中に城建ってるし。
ガラスの靴履いたお姫様出てくる系じゃん……。
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫じゃないけど大丈夫……」
「では職員室に行きましょう! 初日なので、ご挨拶からのはずです!」
そのあたりは同じなのね、どの世界も。
リーンに腕を引っ張られながら、あーしはそんなことを考えていた。
*
「はい皆さん静かにしてくださいね」
担任が手を叩くと、騒がしかった生徒が静かになる。
手招きされて中に入ると、リーンと目が合った。
「ユイ・カテナさんです。自己紹介お願いね」
「ユイです。よろしくお願いします」
パチパチと、リーンが拍手をしてくれる。
それに続いてみんなも同じようにしてくれた。
「じゃあ席は……」
「先生、わたくしの隣でお願いします。ユイ様は大切な友人なのです」
「あら、そうなの? じゃあユイさんはリーンさんの隣に座ってね」
「はい」
友達……。そんな風に思ってくれてんだ。
正直、めっちゃ嬉しいんだが……。
「ユイ様、フォレストリア学園へようこそ! これから一緒に頑張りましょうね!」
「うん! 改めてよろしくね、リーン」
ここでなら、なんだか楽しく過ごせそうな気がする。
そう思えた。
連載版スタートしました*\(^o^)/*




