第四話 姫、特訓する
私、ユーリグレア・アルザントは頭に直接響く謎の声の元、
特訓を積むことになった。
場所は先程も使った練兵場だ。
まだあれから1時間も経っていないのだ。
朽ちたドワーフ王
”さて、どうしたものじゃろう?”
討ち果たされし竜
”ふむ、まずは適当な魔物相手に、実戦でも経験させたらどうだ。”
”どちらにしろ、より強いモノとの戦いで成長するものだろう?”
朽ちたドワーフ王
”それはそうじゃが、この娘、やる気だけはあるのじゃが。
腕のほうが心配じゃ”
”正直儂らほどの力はないじゃろうし。
儂らに合わせていたら、この娘死ぬぞ。”
滅ぼされた魔法帝国のエルフ
”はあ、ならば我が魔術で何とかしよう”
”夢の果てより現れ出でよ!
霧に隠されし幻想よ、我の意思に従え!”
”ドリーム オブ シャドウ”
頭の中に聞こえる詠唱が完了すると、
私の目前に、人の背を超える大きな魔物が現れた。
ぎょっとする私だったが、
その魔物は特に何もせず、ぼつんと突っ立っている。
滅ぼされた魔法帝国のエルフ
”それは魔術によるただの幻だ。
ただ、その幻には本物と同じだけの力がある。
そして、その動きも我が知り得る限りを再現した。
これを使ってお前を鍛えてやる。”
”それでは、第一戦目だ。
やれ!”
その言葉と共に動き出す魔物。
私が見るに目の前のコイツはオークと呼ばれる魔物のはず。
突然のことに頭が追い付いていないですが、
私とて、これくらい!
ーーーーー
ちなみに、オークとはゴブリン種やコボルト種といった、
所謂、冒険者にとっての雑魚とは一線を画す存在です。
そう、その腕力もその耐久力もまるで違うモノです。
一般にオークと一人で戦える冒険者はほぼいません。
冒険者にも色々な方がいますが、
剣士や戦士などの近接職はオークに対して腕力と持久力で勝てません。
体格も大きな差があり、その野太い両腕から繰り出される攻撃は、
並の近接職を圧倒するに余りあるのです。
人間でも体格差が力の差になりやすい状況で、
魔物でもあるオークに敵う者が少ないのは当然でしょう。
その腕力で振舞わされる武器は冒険者から奪ったとされるものも、
当然あります。
木の棍棒?
違います、普通に冒険者たちを下した上に奪った武装を持ったりしてます。
大剣や大斧といった力のいる武器を使うことが多いです。
あと偶にではありますが、大盾持ちのオークとかいます。
世の中には勇者のように、
大仰な武装をした英雄オークもいたりするみたいです。
ゴブリン種やコボルト種も武装していますが、
彼らは本来的に体格は貧弱で、大物を装備できません。
しかし、体格にも身体能力にも恵まれたオークは、
並の近接職を圧倒する力を持っています。
彼らの頭の中は脳筋戦士ですが、
その戦闘力は人の戦士より遥かに上です。
武具を制作する文明を持たない彼らですが、
奪ってしまえばそんな弱点もなくなります。
ーーーーー
はぅ!
物凄い痛みを感じたような!
そして、何故、私は生きているのか!
たしかにあのオークに殺されたはず。
そんな私に、
滅ぼされた魔法帝国のエルフ
”はあ、アレは幻だ。
だが、その能力は本物と同じ。
ただその影響は全て夢の中へと変換される。
古代魔術だが、今は伝わっていないのか?”
朽ちたドワーフ王
”何というか、普通に2撃で終わったのう”
”普通、体格差とか考えんのかのう。”
討ち果たされし竜
”娘、どうして最初の振り下ろしを受けたのだ!
正面から受けてどうするのだ!”
「いや、剣術の先生から重い攻撃なら、その勢いを剣身で滑らせ、
受け流せと。
そうすれば、次の攻撃に繋がると言われました。」
そんな私の答えを聞いて、
討ち果たされし竜
”そんな教えは捨ててしまえ!
魔物は力ありきだ。
人間の小手先の技など通用せんわ!”
朽ちたドワーフ王
”娘よ、現実を見ることじゃ。
その教えは確かに普通の人間相手なら間違っていない。
ただし、それを可能とするにはかなりの実力差があればじゃ。
同じような実力ではそんな技は使えんからのう。
皆、そんな技に対策はあるんじゃ。”
”そして、今目の前にいるオークは力にモノを言わすタイプじゃ。
相手の攻撃をいなす前に受けた剣ごと叩き切られるぞ。
どんなに冴えわたる技があれど、剣の良し悪しが絡む。
圧倒的な力の差は技だけでは埋められん!”
”魔物と人が対峙するときは、あくまで攻撃の回避に重点を置くことじゃ。
よほどの技の冴えと何者をも断ち切る業物でも持たぬ限り、
その師匠の教えは役に立たぬぞ。”
滅ぼされた魔法帝国のエルフ
”ううむ、これが今はちょうどいい相手だな。
実戦に行っていたら、我らが困っていたところだ。
娘、もう一戦だ!”
えええ__
その修業は数日間続いた。
その頃、デニス王国辺境に本格的な帝国軍の主力が襲来していた。




