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第ニ話 剣、姫を見極める

勇者の剣を引き抜いた私は、

その驚きで頭に響く声にも気づかなかった。


そう、この剣を抜いた者は、公国の王となれるのだ。


ならば、ひょっとしたら、

王国へ、そして故郷へ攻め込んだ帝国を追い払えるかもしれない。


公国は戦力として規模は小さいが、

財力はある。


伊達に学園へ大陸各国の高位貴族の令嬢令息が、

通っているわけではないのだ。


技術とて、大陸中の国の優秀な学者が集う場所が、

このコルヌ公国である。


そして、公国はデニス王国と同盟関係を築いている。


もしかしたら、援軍を、

そうでなくても何らかの支援ができるかもしれない。


デニス王国が陥落すれば、

この公国とて、今の地位を維持できるはずがないのだ。


デニス王国が軍事面の協力や

食料などの物資を提供しているのだから。


自分が役に立つかも!

という甘い考えに囚われていた私に頭の中で大きな声が炸裂する。


”お主、話を聞け!”


うん?

何か声がする。


ようやく、その声に気づいた私だったが、

一体どこに声の主がいるのか分からなかった。


「誰ですか?」


舞い上がっていた私だが、良く考えれば、

この勇者の剣はコルヌ公国の大切な国宝だった。


勝手に引き抜いて、どこか壊れたりしてたら、、


”よく聞け、我らはお主の持つ剣の中におる。”


「うん?

 そんなことはありませんよね、さすがに。」


”いやそれが本当にそうなのだ!”


”お主、剣を抜いて何も感じていないのか?”


「何をです?

 私にはお化けとか通用しませんよ。

 私はそういうものは信用しませんから。」


”うむ、お主がかなり鈍いということは理解した。”


少しして、その偉そうな声は誰かと相談し始める。


討ち果たされし竜

”これはどういうことなのだ!”


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

”この人間はなぜこれほどの魔力を何も感じないのだ!”


朽ちたドワーフ王

”ううむ、この娘、本当にこの剣を抜いたのか?”


””” ううーむ  ””


そんな話声に耳を澄ませながら、

私は改めて手にした剣を眺めてみる。


非常に簡素であり、そこらの店売りの鉄剣と言われても、

そうかと納得してしまいそうだ。


これ、本当に公国に伝わる宝剣なのだろうか?

そんな疑問が興奮していた私の頭によぎる。



一際存在感のある男性の声が頭に響く。


”ふむ、この剣を求めし、人間なら必ず何か共鳴するはず。

この娘、何故、まだ正気でいられる?”



__キン__カキン_ドガァ___


どこからか、金属のぶつかり合う音が響いてくる。


「この音、誰か戦っているのか?」


私はこの音を良く知っている。

他ならぬ剣を交える時に出る音がこんな感じだ。


帝国の侵略が始まった今、

この学園でも何か起こっているのかもしれない。


私は音のする方向へと走り出した。


「くっ、姫、お下がりください。

 お前たち、帝国の者か!」


「リレイ、無理しないでください。」


しばらく進むとそんなやり取りが聞こえてきた。


あれは、アリス王女殿下と護衛騎士のリレイ殿か。


彼女らは、今正体不明の賊に囲まれていた。


賊の服装は、街の冒険者そのものだが、

統一された剣を持つ彼ら。


確かに、通常の鉄剣など量産品であり、

武器屋に行けば、何本も同じようなものはある。


ただし、それはあくまで 同じようなもの なのだ。


店売りのものは、その長さや大きさ、そして重心の置き方など、

実はまちまちなのだ。


店売りの剣は何人かの鍛冶師が一本一本手打ちしているのだから、

鍛冶師ごとに、または手打ち故に、剣は微妙に違うものとなる。


しかし、今、姫たちを襲っている賊は、

明らかに統一された規格の剣を使っている。


こういう剣は、国が大商店に発注することで出来上がる。

確かな品質を保証する業物なのだ。

決して名剣とは言えないが、一般の兵でも扱い易い品。


私も普段使っている物はそういう代物だった。


戦では、最前線となる辺境の地。

それだけに我が家も王国の騎士団と同じく、品質が均一化するよう、

国が発注している大商会から仕入れている。


つまり、賊は何らかの事情で国と繋がっていると言うことだ。


この時期に我が国の王女殿下を襲うとなれば、

まず疑わしいのは帝国である。


私は、手に持つ勇者の剣を構え、王女殿下に声を掛けた。


「アリス殿下、無事ですか!」


私の声に、


「ああ、レア。

 ここは危ないですわ。

 私達なら大丈夫です。

 早くここから逃げてください。

 そして、叶うなら学園の先生方にこの事を知らせてください。」


姫はそう答えてくる。


賊の方からは、

「逃がすな、目撃者は消せ!」

と指示が飛んでいる。


”ううむ、明らかに危険なこの状況、剣を持って加勢にきたこの娘に、

逃げろと?

この娘より明らかに華奢なお姫様、護衛もたった一人なのに???”


くぅ、頭の中で何かやかましい声がするが、

これでも武門の出である私が殿下を置いて逃げるわけにはいかない。


「加勢します!」


そう言いながら、賊の一人の元へ走る。


「いや、危ないから!

 人を呼んできてくれよ!」


護衛騎士の女性リレイが声を張り上げる。


しかし、私は素早い動きで剣を上段に構え、

力の限り敵の頭上へ振り下ろす。


賊は剣を横に構え、私の斬撃を受け止めた。


その後、1合、2合、剣を繰り出す私。


ふむ、賊を防戦一方に追い込んでいる。


日頃の鍛錬は無駄じゃなかった!

そんな想いが、私の心に湧き上がる。


不意に賊が私に向け剣を振り上げた。


むっ、剣を持ち上げ、合わせようとする私の胴を

賊の蹴りが襲った。


あいたたっ、私はその攻撃を真面に受け痛みに顔をゆがめる。


討ち果たされし竜

”ぐおおっ、なんじゃこれは!”


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

”くっ、この娘が攻撃を受けると儂らまで痛みを感じるのか!”


朽ちたドワーフ王

”くそっ、やっとれんわ!”


体勢を崩した私に向かい、剣を再び振るう賊。


剣で受けようとする私だったが、

その剣を横に弾き、上段からの斬撃が私を襲う。


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

” ふんんんんんん___ ”


がら空きになった私を襲う剣はしかし、見えない壁に阻まれた。


朽ちたドワーフ王

”くそが、喰らえ!”


弾かれた剣を私の身体が勝手に構え直し、

前方にいる賊に向かって叩きつける。


逆の立場になった賊は体勢を崩しながら剣で受け流そうする。


しかし、賊を襲う斬撃はそれまでのものとはまるで違った。


重く鋭い剣筋は賊の持つ剣を両断し、防具諸共、その身体を切り裂いた。


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

”ち、魔法がかかっているぞ。まだ倒れていない!”


討ち果たされし竜

”ならば、はあぁあぁぁ___”


頭の中で気迫の籠った声が響く。


今度は斬撃を放った身体をくるりと回転させ、回し蹴りを放つ私。


どうなってるのぉ___


まだ健在な賊を横へと蹴り飛ばす。

今度こそ気絶したようだ。


「く、何だこいつは!

 そいつからやれ!}


と賊の半数が私の元へと距離を詰めてくる。


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

”く、我らが弱くなったのか、あるいはこいつらが強すぎるのか?”


朽ちたドワーフ王

”いや、こいつらは大したことはないぞ!”


討ち果たされし竜

”勇者でも何でもないこんな小童共にやられるなど我慢ならん!”


滅ぼされた魔法帝国のエルフ、朽ちたドワーフ王、討ち果たされし竜

” ” ” ならば、三位一体、蹴散らしてくれる!!!” ” ”


私が、近寄ってくる賊に斬りかかる。

攻撃は受け止められるが、横合いから他の賊が斬りかかってくる。


討ち果たされし竜

” 竜鱗 発動! ”


私の身体を金色のオーラが包み込む。

賊の剣はそのオーラに防がれた。


朽ちたドワーフ王

”はあぁあぁ__ふんんんんん___”


前方の賊を前蹴りで吹き飛ばし、

その勢いのまま地を蹴って、後ろへと宙返り。


体勢を再び整えた賊の斬撃が、空を切る。


討ち果たされし竜

”むんんんん___”


私の身体はその賊へと体当たりを敢行。

オーラを纏った私の突進を受け、賊は宙を舞う。


信じられない想いにかられる私だったが、


朽ちたドワーフ王

”よそ見をするでない!”


と頭の中で怒鳴られる。


朽ちたドワーフ王

”目の前の敵にばかり、執着するでない!

目に映るものを常に俯瞰して捉えよ!”


そんな声を聴きながらも、呆然としている私。

その後も賊の数人を倒した私?は、姫の方に目を向ける。


”く、まだくるか!”


殿下を抑えるため残っていた賊だったが、

今やこちらを襲うため、ほとんどの賊が結集しつつあった。


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

”下らんが、やむを得ないな!”


”炎よ、集え!

荒れ狂う嵐となりて、我が敵を討ち果たせ!"


私の身体が、勝手に剣を賊の集団へと向け、宙を薙ぐ。


強烈な熱波が剣の前に現れ、火球を形成する。


”ファイアーボール”


発動した魔術の火球が、賊たちの大半を巻き込む中央位置で、

炸裂した。


吹き上がる爆炎は、凄まじい威力を持っていた。


滅ぼされた魔法帝国のエルフ

”屈辱だ!我が魔術の一撃がこの程度とは。”


そんな言葉を聞きながら、私は辺りを見渡した。


魔法による炎はその役目を終えると消え去った。

どうやら延焼の恐れはないようだ。


賊の一味を確認したいが、正直何かの護符でも持っていたのか?

その身が焼かれた気配はない。


しかし、かなりの衝撃波をその身に受けたはずだ。

昏倒くらいはするだろう。


王女殿下の身を抑えるため、

残っていたはずの賊は、その姿を消していた。


安全になったためか、

王女殿下とその護衛騎士の女性がこちらへ向かって歩いてきた。


私はその姿を見ながら、自身の身に何が起こっているのか?

そんな疑問に囚われていた。

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