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鍵師のおしごと  作者: ちさここはる
EP4:王族の地下迷路金庫開け依頼編
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第32話 メイニー王国、戴冠式前日の鍵師 前編 夢で会えたら

 メイニー王国とミリアルデイア。


 どちらの国は和平的な関係だった。建国は神からの啓示があって創られたという子守歌変わりがある。



『神器が納められた四つの金庫。金庫、全ての鍵穴が腐敗しているようです』


「明日って、……どうして何も行動をしていないんですか?」



 疑問が口から溢れ出てしまう。


 それにはジーノも『だからこうしてあたくしたちに協力を要請されたんです』とぶっきらぼうに話した。


 何週間も前に、とオレも頭を抱え込んでしまう。


 鍵穴が腐敗した金庫を開ける仕事依頼か。まさか、式典前日に知るとか思いもしなかったな。



「…………(知りたくもなかったな。ああ、なんてこっただよ)」



 頭を抱え込めたくなったのは初めてだ。


 行かなきゃならない。メイニー王国はどこだったか。



「メイニー王国にはどう行けばいいんでしょうか」



『宰相ミューズ=アルヂレの側近が、迎えに行くそうですよ』



 迎えに行くそうですよ、という言葉に嫌な予感しかない。



「それはどうやって、なんですか?」


『あたくしは仲介までなので、存じませんわね。ごめんなさい』


 

 仲介なら最後までやってもらえませんか、喉元まで出かけてしまうが相手は政府の人間だ。止しておこう。


 流石に拉致されるような真似はないと、願いたいですが。



『では。クボヤ鍵師の働きに期待していますわ』



「っちょ!」



 名刺がはらりと宙に舞い上がって、木の葉のように床の上に落ちていく。


 腰を浮かせて名刺を拾おうとしたときだ「クボヤショータ鍵師か?」と低い男の声が聞こえた。


 ごくりと息を飲み込んで名刺を掴んで顔を上げる。



「メイニー王国の宰相の、側近のか――」



 確認する前に、オレの頭に鈍い痛みが走り意識を失った。


 手荒にも、程があるんじゃないのか?



 ◆◇



「っつ! ……こ、ここは」



 目を覚ますと目を疑ってしまった。


 大粒の雪が舞う光景、目の前に旭川駅がある。横には雪が積もるイオ〇と。


 ただ、夢だと分かるのは行き交う人たちが漫画のモブだという点からだろう。つまりは、この夢は彼女の魔法だ。


 周りの光景もモノトーンで、一切の色彩がない。



「師匠!」



 背後から懐かしい彼女の声がオレの名前を呼ぶ。



「え、っかさん?」



「師匠ぉおおっ!」


 

 駅前で、オレたちはお互いを抱き締め合った。映画(ドラマ)のようなシチュエーションじゃないか。


 オレなんかより、身長が遥かに大きい彼女の豊満な胸がオレの頭上に乗る。



「元気でしたかぁああ!」


 

「離れて、そんなに経っていないよ?」



 密着されている顔が熱くて息苦しいから、そろそろ離して貰いたいんだよなぁ。


 オレの気持ちなんか知らん顔で、さらに、ぎゅぅう! と抱き締められる。窒息させる気なのか!


 両手から腕に渾身の力を込めてエッカの身体を引き剥がした。



「旭川に、無事に連れて来てもらえたようなんだね」


「違いますよぉーアサヒカワじゃなくてアサカっていう裏都市の街ですぅ。アサヒカワから近場でよかったです!」


 

 あさか? ってのは北海道でも都市伝説。巷の噂レベルで、二つ名はたしか――……。


「【十七丁目】のトンネル、ですか?」


 ごくり、とオレはエッカに確認で聞く。すると、彼女は大きく顔を頷かせた。



「あそこが、アサカって裏都市。噂されていた場所で、仲良くしてもらえているようですね」


 

「はい! 魔法を使えるのが、エルフ族のあたししかいないのでモテモテで、仕事依頼もすっごいんですよぉー」


 

 ふふん、とドヤ顔をするのは健在なら安心だよ。


 夢にまで会いに来たということは分かったということで「じゃあ、どこか。カフェで話しをしましょう。〇オンの中で」とオレはエッカに声をかけて足を進ませた。


 ぎゅむ、とオレの腕に彼女が腕を絡ませて歩き難いが「師匠ース〇バ行きましょう! スタ〇!」と白い歯を見せる笑顔に、オレはもういいやと諦めるしかない。



「師匠にお話ししたいことがいっぱいあるんですよぉー」



 彼女はオレを恨んでいない。でも、オレには罪悪感だけが残っている。


 だから、エルフ王ブブルブにエルフの中から妻を選び、子どもを孕ませろといわれたときに彼女の名前を出させてもらった。


 旭川に帰れることが叶えば、妻にして、子どもも孕ませると約束をした。


 彼女を見て改めて、彼女でよかったと思った。



「夢の中だし、味はなさそうだな」



「飲まなきゃ分からないですよー♡」



 まぁ、彼女を妻にすることなんかは――今は、秘密にしておこう。



「アイスでも、ホットにしても、カフェラテが恋しいよ」



 どうにも季節は懐かしい旭川の冬みたいだが、全く寒くない。そんな夢の中で――オレは君に逢えた。


 逢いに来てくれたことに、オレの心も弾むのが分かる。

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