桃華とアンヘリタのTRA戦術講座~モモカトアンヘリタノTRAセンジュツコウザ~
桃華「さて……、アンヘリタ? 私に質問があるそうだけど?」
アンヘリタ「あ……、ああ、まあな……。この間、TRA導入に反対する連中が作った動画を見てな……」
桃華「ふむ? それって……」
アンヘリタ「内容としては……、戦場で突撃命令見たいのを受けたTRAが、前進したくても対戦車ミサイルだとか、ドローンだとかで前進できないよ……、ってパイロットが嘆いて、そして塹壕に隠れることも出来ずに終わるって内容で……。TRAパイロットの端くれとして、なんかムカついたんだが……」
桃華「……はあ、なるほど?」
アンヘリタ「ムカついて……、でも、なんか言い返す知識もねえし……。モヤモヤが残ってな……」
桃華「……はあ、そう……。でもまあその動画の通りね……」
アンヘリタ「……。へ? 動画の通り……?」
桃華「そうよ……。そこら辺を今回は考えていこうかしら?」
【戦場の的は正しい事……、でも?】
アンヘリタ「動画の通りって……、そうなのか?」
桃華「そうよ? 要するにそれって戦場で歩兵突撃させようって話でしょ? 何なら戦車の役割をTRAに強制しているってことでもある……」
アンヘリタ「あ……」
桃華「ならば……、そういった状況に特化した兵器こそが一番有利であり、TRAにとっては不利な戦場でしかない事は明白よ?」
アンヘリタ「まあ、そうか……」
桃華「戦場で突っ立ってる的でしかないTRAが簡単に落ちるのは当然……。ならば……頭を使いなさい……」
アンヘリタ「……頭?」
桃華「TRA……ひいては巨大人型兵器がどのような環境で、どのような状況で、他の兵器より価値が生まれるかを思考しなさい……。前提はそれから……。人型兵器は戦場の的である……、だからただのポンコツ……、そう適当に考えることなく、どうすれば価値が生まれるかを考えなさい……」
アンヘリタ「む……」
桃華「その動画の主が愚かなのは……、TRAがどのような装備なのかを深く知らずに、独自解釈の戦場での戦闘シュミレートを行って、そう結論づけたことね……。では……どのような戦場ならばTRAは有利なのか? ……ね」
【TRAの歴史から来る戦術の流れ……】
桃華「アンヘリタはRAってのを知ってる?」
アンヘリタ「RA? ああ……最近、ここらへんの工事現場でも使われはじめた簡易版TRAみたいな作業機械?」
桃華「そう……そのRA。各作業に専門化された重機の作業を、道具の持ち替えで全て再現可能な人型作業機械……」
アンヘリタ「乗りこなすための訓練が他の重機より遥かに短期間で出来て、本作業にも何かと有利なもんらしいが……」
桃華「RAは、同じ目的が始まりの【戦術義体】をさらに作業機械へシフトした機械……。固定兵装ハードポイントシステムもこの作業機械の設置機器制御システムを応用したものよ……」
アンヘリタ「え? そうなのか?」
桃華「元の戦術義体は……、いかに人間の動作を拡大できるかに終始していた……。そこから、機能を簡素化、各種接続機能制御を拡張したのがRA……。操縦桿やフットペダルも、そういった制御をしやすくするべく追加された補助入力装置なのよ……」
アンヘリタ「機体を人間のように動かすならば、そういった補助入力装置は必要ない……と?」
桃華「そのとおりよ。操作性が若干複雑化したけど、あくまで補助機能を操作する時の入力装置だから、元からの変化は少なくて済んだ……。そして、それはフラメス共和国で多く導入されて……かの戦争へ継る……」
アンヘリタ「……あ」
桃華「……フラメス共和国がRAを戦場に導入し始めた切っ掛けは、とても単純な出来事だったそうよ……」
アンヘリタ「……?」
桃華「RAは作業機械……、戦車を初めとした車両兵器への非戦闘支援、歩兵や施設設備への非戦闘支援に使われていたのが大本……。でも戦場では敵に襲撃される危険があった……」
アンヘリタ「ああ! そうか!!」
桃華「車両兵器の火砲を改修した手持ち火器を準備しておいて、咄嗟の状況でそれをもって防衛を行った……。そして、それは本来の重機では出来ないことだった……」
アンヘリタ「道具の持ち替えで簡単に別の作業を行える……。それを戦闘にまで拡張したのか……」
桃華「そう……。手持ち火器の最適化がさらに進んで……。対火器耐久性能への強化が図られて……、固定兵装ハードポイントシステムも開発導入されて……、RAは急速に兵器化されていった……」
アンヘリタ「それがTRA……」
桃華「重要なのは……、そこに至ってなおTRAは戦車の代用などではなく……、他の作業行為も想定した多目的装備としての想定で発展していった事よ……」
アンヘリタ「多目的装備……」
桃華「ぶっちゃけ……、戦車の役割は戦車がこなせばいい……、人間大の歩兵の役割は人間がこなせばいい……、ヘリや航空機もまた同じ話……。TRA戦術の発想の起源は装備の持ち替えで車両兵器を迎撃できうる多目的作業機械……だった」
アンヘリタ「そうか……、だからアメリカ軍でのTRAは……【特殊任務工兵】……」
桃華「そう……、前提として……、作業機械としての役割が想定されて、さらに対車両戦闘も想定される……、そのような戦場に特殊任務部隊として投入される少数精鋭要員への支援装備……。それがTRAの起源となった兵器構想なのよ……」
アンヘリタ「……なるほど」
【TRAはあくまでも作業機械の延長である】
桃華「ここまでに解説した通り、TRAは——戦闘以外の目的を同時に満たす事のできる大型兵器、としての立ち位置で戦場に投入される……。だから、TRAは戦闘こそがサブ行動であり、他のメイン行動のために戦場に立つということになる……」
アンヘリタ「……ようは、TRAはそもそも戦闘のためだけに戦場に立つもんじゃないから……、あの動画はそもそもが前提から間違ってたのか……」
桃華「そうよ……、戦場でTRAを突撃させるだけ……って、それを指示した軍上層部は頭が悪いの? って言える話よ? そもそも歩兵の役割が【歩兵突撃だけ】だって誰が決めたの? その人たちの想定する戦場には工兵とか特殊部隊とかいないのね? って話なのよ……」
アンヘリタ「……なるほど……、なんかスッキリしたぜ……」
桃華「それは良かったけど……、アンヘリタ……」
アンヘリタ「なんだよ……」
桃華「……というわけで、今からTRA戦術のお勉強会を始めるわね(笑)」
アンヘリタ「うげ……、ヤブヘビだ……」




