プロローグ
やっとこの世界観を小説にし始めることができました。
更新は遅めになりそうですがよろしくお願いします。
その日は晴れだった。が、貧しい地区であるポーンではいつものように独特の暗さが辺りを覆っていた。
そんなポーンの、空中都市ではスラム街と呼ばれる場所に二人の影が現れた。
「ああ、変わってない」
黒い影が目を細めて呟く。右眼に何かの機械を取り付けている少年だ。
「…そうなんですね」
答えたのは桃色の影。ツインテールの少女で怯えたように辺りを見回している。
「ここの仲間は僕を許してくれるかな?」
少年はそう言い、少女の返事なんか求めていないかのようにすぐ叫んだ。
「ねえ、聞こえている?僕だよ、僕だ」
すると。それに呼応するかのように大勢の子供たちがわっと出てきた。彼らは皆家など持たない、ここで暮らす子供たちだった。
しかし彼らはそんなことを微塵も感じさせないような輝いた目で二人を見る。全員が集まるのを待たず次々に声があがる。
「覚えてるに決まってるよ!」「久振り!」「隣のお姉ちゃんは誰?」
その声はいずれも温かいものだった。
見るに、黒い少年は子供達の知り合いで桃色の少女は初めてここに来たのだろう。
少年は慣れた様子で子供達の頭を撫でた。
「良かった。…こっちのお姉さんは今の僕の仲間の一人だよ」
その言葉にまたわっと声があがる。
桃色の少女は少しビクッとして、よろしくお願いします、と言いながらゆっくり頭を下げた。
そんな少女を見て、黒い少年が子供達に声をかける。
「ねえ、今日は探し物に来たんだ」
すると、周りは首をひねり、すぐにまたざわめきだした。
「何を探してるの?」「アレでしょ!機械の部品!」「違うよ、きっとオイルだ!」
少年はそれらの言葉を笑って受け流し、ふと真顔になった。
「全部違う。僕は、君たちに何をすれば良いか探しに来た」
それを聞き、初めて子供たちが静かになった。それぞれがジッと少年の顔を見つめる。
「僕がいなくなってもう半年経つ。その間、君らに何もしてこなかった。だから正直、君らが僕に怒ってるんじゃないかって思ってた。…実際は違ったから良かったけど。ここ半年、僕は君らの為に何が出来るか考えた。でもクイーンてこのチェスを変えられるようなところじゃなかったよ。だから…」
その言葉を遮るように子供達の中で一番大きな少年が叫んだ。
「お兄ちゃん、怒ってるわけないよ!俺たち、またお兄ちゃんと遊びたい!」
するとそれまで複雑な顔をして黙っていた子供達もまた思い思いのことを叫び始めた。
「お兄ちゃんお話して!クイーンのこと!」「鬼ごっこしよう!」「お兄ちゃん私のラジオを直して!」「お兄ちゃん!」
それぞれ内容は違った。でも、スラム街をどうにかしてという内容はひとつもなかった。
少年は虚をつかれたように黙った。が、しばらくすると顔を上げ笑顔になった。
「じゃあ今日はここ半年のことをみんなに話すよ。覚えている限り全部を。日が暮れてしまうかもしれない。だから僕はみんなと遊ぶためにもう一度ここにくる。…それで良いかい?じゃあ、みんなここに座って」
そして少年は少女に目を向ける。
「でもこの人の方が僕よりWoSにいたからね。最初はこの人に話してもらおう」
少年がみんなより少し高い瓦礫の上に座ると、少女はまたビクッとして、えっ!?と少年を見る。しかし少年は笑ったままだ。少女は子供達のほうを見回し、それから諦めたように少年の隣に座った。
そして不安そうにスカートをぎゅっと押さえながらゆっくりと話し出した。
読んでくださりありがとうございます。
この世界観のスラム街は、この地球のようなスラム街よりもマシです。
路地裏で暮らしている様子をイメージしていただければと思います。
捨てられたものを直し、売ってお金を得ています。
少女の正体の方ははすぐに出てきます。
少年の方はもう少し先になる予定です。
また読んでくださると嬉しいです。




