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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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幕間⑤只者ではない村人達~とある冒険者の認識

え~、新年あけましておめでとうございます。

大変遅ればせながら新年のご挨拶をさせて頂きます。


元旦から本日まで書き直しては悩み、本編よりもある意味難産でした。



幕間⑤只者ではない村人達~とある冒険者の認識


※『』内は魔獣のセリフ。〖〗内は翻訳道具を付けた魔獣のセリフです。

※新年のお年玉のつもりで書いたのに、気が付いたら旧正月すらも素通りしての今年最初の更新です。通常よりも気持ちは1.4倍の文字数になりました。御笑納頂ければ幸いです。


 今のパーティー組んで丁度八年、この継続年数は自慢の一つだ。

 元々、このパーティーは戦う事に重きを置いてはいない。やりたいことを探す為に組んだ若造の集まりだったから。依頼の為に臨時で別のパーティーに飛び入ることはあったが、発足から今日まで同じ顔触れのまま今日まで五体満足で冒険者稼業を続けてこれた。


 運任せの体力勝負な上、命の危険は覚悟の上。口に出せない理不尽な思いもしたし、未だに後悔の残る事もあった。笑い飛ばせない程情けない体験もした事もある。正直、これほど割に合わないと思う仕事は他にないんじゃないだろうか。

 だからこそ「報われた仕事」になった時の全身を覆うような高揚感というか達成感は、次の仕事への意欲に代わると共に「報われない仕事」への恐れも湧き出てくる。


 長年積もったそれらは「見えない未来への恐怖」という負債となって、確実に心の中に存在しているのだと、ふとした瞬間に思い知らされる時が最近増えてきた。

 そろそろ解散時かもな。俺もミッツも独立した冒険者としてそこそこの自信を持てる位の経験を積んでいる。ニッチも作り手ではなく使い手として冒険者家業に身を置いているのも、そろそろ頃合だったんだと思う。


 昨年末の護衛依頼の終わった日、(ねぐら)にしている宿屋で仲間が引退を口にした。

これといった明確な理由はない。ただ、作り手としての情熱が抑えられなくなったからだという。なので次回の依頼が終わったらパーティーを抜けるつもりだと告げられた時、俺もミッツもそうかと応えた。


 ドワーフであるニッチが、作り手としての技能が高かったにも拘わらず冒険者になったのは、自身の道具を実際に使って体感してみることが目的だった。なので斧から槍、両手剣から両手短剣まで、余程特殊なものでない限りは一通り使いこなせる器用さがある。


 独自の計り方で、使い手に馴染むよう独自の改造を施しているので、俺もミッツもかなり世話になった。今ではそういった相談も指定依頼として協会から引き受けている程だ。ニッチが工房を構えたら食っていけるだけの稼ぎは出来るだろう。


 冒険者という仕事は荒事もこなす何でも屋だ。魔獣の駆逐から家事代行まで顧客の要望(ニーズ)により様々な仕事が舞い込んでくる。明らかな犯罪行為や殺人依頼は冒険者協会側である程度の精査が行われるため、依頼として出されることは無い。一度、依頼内容の裏付け捜査の協力ってのを引き受けたことがあって、ニッチの道具製作はここでも評価を得た。


 普段から討伐以外の依頼もニッチが興味を持った依頼に限って引き受けた。風変わりなものから有り得ないものまで面白かったものもあるし、苦い経験になったものもある。ニッチの引き受けた理由も目的もわかっていたし納得もしていたので、俺もミッツも文句はなかった。それなりに得れるものもあったし、様々な経験を積んで来れた。


 たった八年。だけど俺には十分長い時間だと思える。五体満足で変わる事のないメンバーで挑み続けた冒険者生活も今年が最後かと思うと寂しくもある。


 次の依頼はミッツが選んだ。依頼内容は『無属性魔結晶の入手』、期限は特にない。

 魔石は基本的に魔力を一時的に溜め込む特性がある。魔力溜まりのような場所で、周囲の魔力が何らかの形で凝り固まり、結晶化したものを魔結晶と呼ぶ。これらは稀に魔獣たちから採れることがあるが、そのほとんどが何らかの属性を持っている。

 魔石はその魔結晶の塊だ。何らかの形で魔結晶が結合して出来たものとされている。戦争していたころに使われており、今では天然物はそう見つかることは無い。属性が異なった魔結晶が集まって、構成されることもあり、その威力は相当だったと記録されている。


 幸い依頼に出されているのは『無属性魔結晶の入手』。簡単に言うと『使用済みの魔力の抜けた魔結晶』となるものだ。

 長い時間をかけて自然に溜まった魔力を何らかの形で失った魔結晶はそうそうに浸かるものではない。一度魔力溜め込んだ魔結晶は、魔力を一時的に溜め込む特性までは失っていないのだ。但し魔力はそう何度も溜め込めるモノではないので、魔術師は魔結晶を加工して自身の魔力と術を込め、魔石として使う者もいる。結晶が良質であれば何度でもくり返し使うことが可能だが、そうでないならば使い捨ての扱いがほとんどだ。そう言ったものは大概が小ぶりなので、大ぶりの物ほど良質とされる。

 

 基本的に魔力だまりは人にとって余り長居したい場所ではない。俺の感覚で言うと、悪臭と燻された空気の立ち込める室内で不躾な視線に晒される感覚と言えばわかってもらえるだろうか。これの魔力版が魔力だまりだ。


 魔力を感じない奴からすれば他の場所と大差ないらしいが、魔術師の自分にとっては忌避したい場所と言っても過言ではない。おまけに時期が悪いと濃度が高くなったり、無害な魔獣が気性荒くなって危険度が倍以上に跳ね上がる。なのでこの手の依頼で、期限が特にないのは割と多い。天然の魔結晶自体、そうそう簡単に生み出されるものではないし、昔の戦争で殆ど採り尽くされてるのだ。今では見かけることが滅多にない代物。難易度が高いそれともう一つ、ミッツはあえて選んだ。


 実は魔結晶だけなら手持ちにあるので何時でも達成可能なのだが、そのもう一つが俺達のパーティー宛の指名依頼だったらしい。


 実のところ話を聞いたミッツではあまり要領を得なかったので、もう一度仲間で相談して決めると、話を持ち帰って来たらしい。指名依頼自体は然程珍しい話ではなく、依頼内容によって複数のパーティーが選ばれることもある。

 だが、俺等のような小さなパーティーに対しては出されることは殆ど無い。


 依頼内容を詳しく聞く為に訪れた協会で担当者との面談に挑んだ。


「冒険初心者向け講習会の短期講師及び協力者の募集。戦闘能力よりも指導能力と結界魔法が使える人員の募集、ですか?」


 最初はどこぞの貴族子息の為の依頼かと疑った。しかも駆除対象はクロムンブ、それを初心者でも討伐しやすくする為の仕掛けを用意するという大がかりなモノだ。


 通常、クロムンブは一体に対して数人がかりで討伐をする。これは彼らの生息地が海だからだ。中型から大型の船舶を用意して、足場と後衛的支援を十分に準備する必要がある。大概のクロムンブは群れを成して海を回遊している。群れから討伐する個体を引き離すために魔術師達は当てられることが多い。


 初心者用の獲物としては難易度が高すぎる。が、仕掛けの内容を聞いて俺達は驚かされた。

 地形が外洋と切り離せる内湾を使い、そこに穴だらけの結界魔法を張り巡らせ、音と振動だけでクロムンブを内湾の足の着く浅瀬に誘導して囲い込む。誘導が終われば結界は速やかに解除。穴の大きさは彼らよりも小さめであれば、硬さ、形状、可視化など一切問わない。


 あまり知られていないが、クロムンブはある程度の深さと距離がないと十分に泳げない。彼らの最も厄介な処は切れ味のいい鰭ではなく、重量と直進力だ。海面を切り裂くように突き進むように群れ成して突っ込まれて、船が大破されてあえなく撤退する事例は珍しくない。重い鎧や獲物を持っているこちらは、足場崩しだけで簡単に撤退せざるを得なくなる。あの重さで海へと叩き落された冒険者だっているのだ。


 それらを崩すだけで討伐の難易度が格段に下がるが、初心者にはかなりの強敵のクロムンブを誰が討伐するのだと、興味が惹かれた。


「えっと、タングステン村に体験希望者が居まして、若者三人と魔獣三頭の混成チームです」

「「「は?」」」


 人間と魔獣の混成チームで今回の討伐を予定している、だと?


「それって調教士(テイマー)が居るって事か、魔獣は何が居るんだ」

「調教士じゃなくて魔獣自身の参加希望です。むしろ主体で狩りを望んでいるのがルムック二匹で、その引率者がベルガコムって話なんですが」

「ちょっとまて、ベルガコムって云えば山の魔獣と呼ばれるあれか?」

「はい。体高は私と同等ぐらいある立派な個体でした。農場のリーダーなんですって」

「え、ちょっと。知ってんの?」

「ええ、先日タングステン村まで行きまして、顔合わせしてきましたから。ルムックはまだ成体にはなってないそうですが、大人しい個体でしたし」

「村に魔獣が?」

「ええ。この案を出したのも村にいる火吹き竜でした。安全に体験できれば、子供たちの自信に繋がるからって」

「は? ちょ~っとまって、火吹き竜ってもっと暖かいところに住むんじゃないの」

「ええ、でも村人として何年も納税もしている住人です。納税記録もありますよ」

「魔獣提案の魔獣による魔獣退治って、なんだそれ」


 んで、彼らからの条件は「大量の流血禁止」。火吹き竜が体質上、血に弱いので打撲系の武器を使用して挑みたいときた。


 自分らが挑んで達成する依頼は多くあれど、他人が挑む為に場を調える依頼は初めてだ。初心者の為に武器の選定から使い方まで指導、場合によってはその場で調整も必要だろう。戦闘が初めてなら、助言や簡単な指導もいるかもしれない。


 自分たちの行動が誰かの為になる。なによりその様を体感出来るのは悪くない。下手に後味の悪い依頼を引き受けるより、この依頼を最後にする方がいいと思った。


 現在引き受けている商隊の護衛任務が終われば、引き受けてもいい。俺はそうミッツに言った。ニッチも同じだったらしい。


「では36日後の早朝、タングステン村の魔術門前でお待ちしております。今回の内容はこちらに纏めてありますので確認してください」


 日程や必要な地形など、先方(依頼者)が提出してきた資料はありがたかった。結界を使うのは、狩場となる内湾を荒らさない為。アト村住民の生活の場となる場所だから極力荒らしたくないのと、壊す前提の廃棄資材購入は経費と処理の手間が掛かる分勿体ないからという。


 確かに、資材を購入して現地で組上げた方が早いし簡単だろう。だが、そこが住民にとって生活の場となるなら話は別だ。資材の回収に廃棄処理、キチンとしなければ後になって問題が発生する事も少なくない。同じ手間なら環境にやさしく繰り返し使える方が好ましい。多少高くても環境破壊にならない方が世のため生活の為になる。


 講習会自体、どのくらいの参加が見込めるかまだ分からないし、今回一回限りとも言える。結界自体を魔道具で展開するなら、資材の回収と廃棄も考えなくていい。


 ニッチも武器の選択を褒めていた。素人が慣れない獲物に振り回され、自身のみならず周囲に被害を出す事は珍しくない。なりたての冒険者が討伐の局面でやらかす話は今までにどれ程聞かされてきたかもう分からないぐらいだ。事前に手合わせをして武器や防具の具合の確認はしておく必要あるが、今回話を持ってきた発案者側はまだまともな方だろう。


 冒険者協会からも、結界を展開するのに必要な道具などあったら手配するので申請してくれとの申出があったので、依頼内容に極力近づけた結界を用意できる。ただし、現場を見て調整は必要だろう。その辺の日程の調整はミッツに任せてある。


「久々にやりがいのある仕事になりそうだな」

「ああ」


 危険が全く無いとは言えないが、後輩育成の手助けなんて依頼はめったにない。ましてや魔獣と共闘するなんて初めての経験だ。


「なぁ、そのルムックって強いのか?」

「え、どうでしょう。参加希望以外は聞いてないんです」


 ベルガコムは基本的には温厚で知能の高い魔獣だが、怒らせたら徹底的にマズイ。岩場に住むだけあって足腰は強く、その蹴りは鉄鎧の上からでも骨を折る。


 知能と戦闘能力が高く、荷運びも可能なベルガコムは調教が難しい魔獣だ。貴族の中には彼らに使役の術を施して屋敷の番人をさせている例もある。そのくらい魔獣としては強いのだ。


 問題は種族名と外見的な特徴ぐらいしか知らないルムックの方だ。元来野生のルムックは憶病な性格で人前に姿をさらす事自体稀有な幻の魔獣とまで云われている。仲間思いで番いになったものは、生涯を共にするほどだと聞く。またを属性を持ち、体毛色がその属性によって異なる為、親兄弟で異なる色を持つことも珍しくない。


 と、俺が知るだけでもこんな程度だ。更に大陸的保護獣指定の火吹き竜が村人をしている、って爆弾発言に正直頭を抱えたい。大陸的保護獣は一般的に見かけても手を出しただけで、国や身分問わず犯罪者扱いされる存在だ。例外として彼らから何らかの要請を受けた場合は、その限りではないとされる。

 ま、滅多にいる存在じゃないんだがな。


「火吹き竜のいる村、か」


 興味が湧いたことは否定しない。

だが、その時はただそれだけだったんだ。




       *******




 正直俺は彼らを嘗めていた。

初心者だと、どんなに強がっても群れなす魔獣を見たら逃げ出すか立ち尽くすかと侮っていた。


「驚いたな、彼等は冒険者か傭兵なのか」

「いえいえ、ただの村人です。宿屋の娘に大工の弟子と羊飼いです」

調教士(テイマー)無しであの戦闘能力の魔獣を使えるのは有り得ないぞ」

「彼らを使役なんてしてません。彼等自身の意思によるものです。村では立派な働き手で、強要は一切ありません」


 同行者で村から来た魔術師の有り得ない答えに周囲も黙る。


 侮っていた彼等は、初見で群れなす魔獣を前に躊躇いはなかった。ルムックの雷撃を皮切りに始まった彼らの戦闘は、ベルガコムが左、白いルムックが右へと素早く回り込み、沖側から浜に向けて物理攻撃で追い込む。初撃を放ったルムックは浜から海上を駆け回る若者たちの背後を上手くカバーしているように見えるのだ。若者たちも魔獣たちが範囲攻撃を行う時には図ったかのように攻撃を合わせている。明らかに彼らは互いの行動に慣れているのだ。


「見た目で侮ると痛い目に合うってことか」


 甞めてたわけじゃない、見た目と実力の違いなんて冒険者の世界じゃよくある話だ。だが、彼らと共に闘う魔獣、これには驚かされた。年若い個体だと聞かされているルムックたちは冷静に、それでいて周囲をよく見て動いている。ベルガコムもそうだ。乱戦ともいえるこの状態で、無駄なく綺麗にほぼ一撃で仕留めている。


「ルムック、つええ~」

「風と雷か。初めて見たが戦い慣れとるぞ」

「それにベルガコムもだ。あれだけ跳ね回ってるのに乱れが一切無い。おまけになんだ、あの姿勢からの蹴りは」

「人が喰らったらひとたまりも無いでしょう、避けようがありませんね」


 初日に簡単な手合わせをしたニッチとミッツから聞いてはいたが、あんな魔獣と共闘出来る彼らは只者じゃない。羊飼いと大工見習いと宿屋の娘って副職だろ。本職が冒険者か曲芸師、もしくは暗殺者じゃないのか。


「いえ、本当にただの村人なんですよ」

「うそこけ! どこがただの村人だ、冒険者か傭兵の間違いだろ!」


 俺以外にも同じ考えを持つ人が居た様で、安堵する。

魔道具のおかげで海面を滑るように自在に走り回るのはまだ許す、俺がそう出来るように術を施したからな。だが、使い慣れているかのようなあの適応力の高さは何なんだ。獲物を構え、振りかざしながら疾走なんて一般人じゃ考えられん。どういう感覚してんだ。


「若い人は思考と感覚が柔軟ですからねぇ」

「若いってだけで言い切れるのか、あれは」


 しかも魔獣達のフォローが細かい。特に属性持ちの二匹はこの乱戦状態で味方への誤撃をが全く無い。声掛けをしているわけでもないのに、連携して当てている。自身の力、扱い慣れてんじゃねーか。大振りに見えるベルガコムの派手なアクションが囮役も兼ねてやがる。見た目に油断してると痛い目に遭いそうだ。


「ルムック達は草刈りだけでなく、畑を耕したり水巻きを手伝ったり、自身の能力を日常生活レベルで使えるようにしてますからね。最近じゃ荷運びとかも手伝ってくれるんで、ホントに助かってるんですよ~」

「家の手伝いが最強へのルートかよ、ンなんであんなに強くなれんのか」

「ちび竜ちゃんが言うには、微妙な力加減は日常生活で培うのがいいそうです。お手伝いは彼らが自主的に行っていますからね。何より畑仕事は足腰が基本ですし、無理のない範囲内なら誰も文句ありませんからねぇ」


 タングステン村から来たこの魔術師は、とんでもないことをサラッと当たり前のように話す。書類では結界構成案は魔術師となっていた。企画自体にもほぼ突っ込んでいそうだな。


「ったく。そんなに日常的に使ってんじゃ、相当な手練れだな。どんだけ戦い慣れてんだよ」


 徐々に近づく浜辺は討伐参加者の独壇場だった。ミッツ達は彼らが戦いやすいよう仕留めたクロムンブを浜から引き揚げながら彼らに注意を払っているが、手を貸す様子はない。


「戦闘は村では一切ないですよ。ただ観光客の揉め事に介入せざるを得ない事態はありますけどね。酒絡みに、欲絡み。絡み絡まれ憂さ晴らし。おまけで貴族絡みは本気で関わりたくないですね」

「うわ、そういうのあるのか」

「正直あります。無駄に偉そ~に絡む方々には、貴賤一切問わず警告を出してから国軍の方々にお願いしました。昨年から保護区認定されている地域としては荒されたくありませんから」

「喧嘩の仲裁ねぇ」

「保護区認定って何の?」

「主に食文化です。ちょっと特殊な薬草も取り扱っているんでそれも入ってますけど。今年の初頭から雪に因んだイベントをしましてね、ちょっと盛り上がったんですよ」

「今年の初頭って、もしかしてあの幻のイベントか」

「え、ちょっとまって。それって雪上の競艇?」

「ハルト国の新国王成婚記念企画です。結構好評だったのですが、資金面と安全面から次回開催をどうしようかと検討してますよ」

「うをっ中止は勘弁してくれよ~、今度こそ出場して入賞して見せるんだからな」

「次回開催に関して出場登録(エントリー)が規定化されて、厳しくなるって聞いたんだけど」

「参加希望者が大会終了後に増え過ぎたかららしいですよ、それ」


 聞いてると何でもない様にサラッと流しているが、酒に酔った一般人の相手をする以外、特に何もしていないだと。あの戦い方しているのがただの一般人だと本気で言ってんのか、冗談じゃないぞ。


「ただの村人が長剣振り回すだけでも驚きなんだが。あの子だけが特殊なのか?」

「まぁミーナは確かに特殊ですが、長剣を持ち出したのは今回が初めてですよ。それにジュールは大工見習いですし、メルカは牧羊が仕事です。日常生活の中で使う道具を獲物にしているわけですから使い慣れていて当然ですよ」

「成程」

「村のベルガコムは元々村近辺の魔獣達の長だったと聞いています。彼らも近隣の魔獣同士の付き合いがあるでしょうし、私もあまり詳しくは知りませんが、ルムック達を鍛えていてもおかしくはありませんよ」

「そっちもいろいろありそうだな」

「ええ。今回の討伐を一番楽しみにしていたのはルムックだと聞いてますし、その為にちび竜ちゃんも今回の作戦を提示したんですから」

「「「「は?」」」」


 ちょっとまて、今なんつった?


「ああ。春にあった新国王の結婚式がキッカケで、アト村でクロムンブを狩れる人材が少なくてって話から、楽しくクロムンブを狩れるよう企画をカーバイト国の王太子殿下に提案していたんですよ。クロムンブに人気が出れば需要も増えますからね。そうしたら自分らも狩ってみたいと駄々こねたルムック兄弟に、困ったちび竜ちゃんが安全かつ確実に楽しめるように企画したのが今回の討伐なんです。ま、討伐ってよりも海で遊ぼう楽しもうって趣旨が強い『社会見学』なんですがね」

「正気かよ」

「だから主催側にカーバイト国の商業協会と、ハルト国の冒険者組合。そして内緒ですが両国の王家も絡んでいるんです。彼らもこの企画のうまみを見出しているんです」


 商人と冒険者を引っ張り出せる、それは間違いなく大事(おおごと)になるな。ましてや王家が絡むならこの見学者の数も納得するわ。


「あの火吹き竜は、とんでもねえバケモンか」

「いえ。見た目は反抗期に差し掛かってますが、当人曰く更年期に差し掛かった只のおばちゃんだそうですよ」

「ぶは、いきなり笑わすな。網から手ぇ放すだろうが」

「すみませんね、因みに今回の討伐企画は、可愛い家族の初めての我儘を叶えたかったそうですよ」

「ぐほ、おねだりで中級魔獣討伐をねだるのかよ」

「さすが魔獣!」

「泣く子には勝てませんと?」

「いえ。駄々こねる姿が可愛くて、なのにぷいっと拗ねる姿に悶絶したので即降参したそうです」

「「ぶはっ」」

「ついでにばらすと、降参してそのまま作業小屋へ籠って、一晩で企画の全容を練り上げ、翌日に私に提出する企画書と手紙を書かせ、そのまま巻き込んで今日に至ります。今回は食材探しでなかったのが唯一の救いです」

「あれ、あんたが企画したんじゃないのかよ」

「世間的な建前で書類上では私ですが、発案から企画、全てちび竜ちゃんの思いつきです」

「なんだそれ、孫に駄々こねられた爺かよ」

「なにせ思いついたら行動力がとんでもないんで、目が離せないんですよ。食べられそうだと思ったら、毒だろうと植物限定で口にするんです」

「拾い食いの癖があるんか」

「癖は無いですが、村近辺の植物を片っ端からかじりまくって新たな食材にさせてしまった前科があるんです。ぺルロもそうですよ」

「は、ぺるろ? あれって毒だろ!」

「ええ。毒抜きすれば美味しい食材でしたよ。結構驚かれますが、見てる分には非常に愉しいんです。ただ常識があまりないんで気を付けてやらないと、簡単に密猟者に捕まりそうで心配なんですよ。昨日の旗取り遊びもちび竜ちゃんの思いつきだそうで、運動性能や年齢、性別体格差などの違い分だけ条件を課して競争する遊びだそうです。一歩分の歩幅も加算の対象だそうですよ」


 おいおい、変なところが細かいな。つうかそれがあの村での当たり前なのか? っていうかそういう考えが出来るからクロムンブ狩りなんて思いつくのか。


「なあ。クロムンブ狩りってもっと苦労する覚えがあったんだが、俺の認識違いだったか?」

「いや、この地形を活かした結界を張れたのが大きいな。只の海原ならこうはいかない。っていうか、地形を活かして罠を張るなんて初めてだからなぁ」


 そう、クロムンブ狩りの最も厄介なのは『こちらに圧倒的に不利な状況』での狩りということだ。海原を自在に疾走する彼等と対峙するためには大型船を二隻から六隻を用いて集団で行う。一隻に20~40人近い人員が配され、会場から5人位で一匹のクロムンブと対峙するのが普通。知る限りだが通常クロムンブ狩りは、大掛かりで金と危険がかかる厄介な依頼なのだ。


 彼らを水に潜れない位の浅瀬に追い込む考え方自体が画期的と言える。この地形で有ればこその策だというのは企画の段階からして面白かった。結界を只の障害物と考え、威嚇のために派手目の爆発で彼らを追い込む。何より自分達の手の届く場所に彼らを引きずり出せる優位性は、近接攻撃を得意とする冒険者なら分かるだろう。


 しかもこの方法は通常のクロムンブ狩りよりも費用がかなり安上がりで済む。結界が作れる魔術師と多少の火薬類が必要だが、大型船の手配一式が不要なうえ、後はほぼ現地調達可能な品で賄えたのが大きい。この方法は他にも色々応用が効くだろう。火吹き竜の知恵が高いと聞いてはいたが、これ程とはな。


「なぁ、あの火吹き竜。危険視されるんじゃないのか」


 そう思うよな、普通。


「カーバイト国のから既に国軍が村に常駐してます。ハルト国とカーバイト国の王族方もちび竜ちゃんのご飯に懐いてますし、厨房方も一目置かれてますから手遅れですかね」

「「「王族も虜?」」」

「ちび竜ちゃんが誘拐や拉致されたら、戦争が起こるかもしれませんがね。その際は村のオバちゃんと羊達と近隣の魔獣が参戦すると思ってください」

「なぜにその組合せ?」

「この世で一番怒らせると厄介なのは女性ですよ、特に母親。家の村の長老は女性なんです」


 近隣の魔獣って何だよ。

それに羊達って、どれだけ居るんだオイ。それにおばちゃん達までって、いろんな意味で怖いわ。更に国軍まで足されたら視覚(ビジュアル)観点で衝撃的な絵面だな。


「冒険者程度ならおばちゃん達だけでも仕留められますが、羊達が追撃で踏みつけに来ます。因みにラクレコムだけでも結構居ますが、タルーク種とベルガコム種からも各々来ると思うので」

「ちょ、山岳の令嬢(タルーク種)と山の魔獣(ベルガコム種)だと!?」

「冒険者程度ってアンタらの村っていろんな意味で怖いな」

家庭的(アットホーム)ってそんなもんですよ。協調性なら自信あるんですけどね」


 ああ。願わくばそんな日は一生来ないでくれたらいい。そんなトコに喧嘩売る馬鹿が来ない事を願っておこう。

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