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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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五話目 冬と人が去る、春がくる。⑥

ちび竜、てんぱってます。

おかげでまた注意報発令。


※作品内に思い込みによる発言がございます。人によっては不快を感じてしまうかもしれません。

予めご了承ください。


※2018年12月20日 一部変更。

 快晴の下で軽快なダビー(ギターに似た楽器)の音色に合わせて、ひらりと赤いスカートの女の子が軽やかにステップを刻む。春らしい花びらを振りまきながら続く行進は人々の歓声も加わってとても賑やかだ。明るい笑顔に満たされた広場を抜け、ハルト国の王都は正に沸き立っていた。


 ハルト国の民にとって、長いこと空いていた王座がようやく埋まるのだ。空の王座を王の代行として守っていた年若き王妹殿下を、国民は見守っていた。正式な王位継承権を持つ幼い王太子殿下を育てながら、議会に強制協力をさせ、民たちと正面から向き合ってきた王妹殿下もこれで漸く肩の荷が下りた事だろう。


 ハルト国に大きな争いも病も起こさずに今日まで何とかやってこれたのは、亡くなった先王の采配とそれを支えている臣下たちの多大な努力があったからだ。


 年の離れた兄弟だった先王は王妹殿下が九歳の時には既に王位を継承していた。二年後にヒオ国から娶った王妃は年若き王妹殿下の憧れの女性で、自身も先王夫婦のような相手と生涯を過ごせればと願っていた。それから第一子セルシウス殿下が生まれ、二年後に第二子が生まれるはずだった。


 王妃の生国(しょうごく)で開かれた宴の帰りに運悪く魔獣の襲撃に合い、王族の乗った馬車に大岩が落石。体調を崩して留守番となった当時二歳の王太子殿下と、十五歳の王妹殿下の未成年者のみとなった王族に、国民は不安をあらわにすることなく、ただ静かに彼等が立ち上がるのを見守った。


 おおらかな国民性もあるが、先王の改革治世が偶々乗っていたせいもある。天文的な数値の奇跡が起こったのは、ひとえに国を支えた彼らの努力の結果に過ぎない。


「よく、頑張ったな」

「ええ、よく頑張りましたわ」


 互いと周りの努力をこれ程たたえたいと思う、思えるのは、なんと誇らしいのだろう。


 王族の仕事は大概が出来て当たり前、些細な間違いすら許されない。前王の子供を無事に王座に就かせることができたのも、国を無事に回せたのも、当たり前のこととして扱われるのだ。だが今は、今だけはその当たり前を大いに誇りたい。


 リズリア=ナラ=ハルト王妹殿下にとって、今日は生涯忘れえぬ一日になろう。それは王妹殿下の配偶者たらん、私にとっても記念すべき日となるのだろう。




       *******




 国益が関与する王族の結婚式に、普通の村人は参列しませんし参加できません。精々噂に聞くか、参加した関係者からの話を人伝手に聞くのが普通です。


「ちび竜。お前に今更、普通が通用するとは思っておらんぞ」

「おーひさま。他国のお偉いさんが雁首揃えていらっしゃるところで、非常識をさらけ出すのは本気でやめましょうよ。私のせいで火吹き竜へ誤った認識が定着するのは、一種族として本気で困るんですよぉ~」

「服を着てここにいる段階で既に一般常識の規定概念から外れていることに、そろそろ気付け」


 現在の私、カーバイト国の王妃直々の命令(←ここ大事!)で、王妃様のお隣(に幼児用のお子様椅子がマジで置かれてました。泣)で、リアルライブ状態で式に参加しております。主役の花嫁様ご親族関係者席というとんでもないSSS席で。


 村長差し置いて、一村人(いちむらびと)がロイヤルウエディングに参列って。参列者が、他国のお偉いさんばっかりずらずらずららららっと、何処にいたのよこんなに! っと言いたくなるくらい居ます。


「主役二人からの御指名だ。立会人(これだけ)は身分の一切は問われない決まりでな」


 通常、王族の婚姻立会人は三名が選ばれるそうで、ハルト国セルシウス=ナラ=ハルト王太子殿下とカーバイト国ルーメニア=ハイト=カーバイト姫殿下は、両国の関係者として私を指名されたんですって。立会人に火吹き竜がなるのはおそらく建国史上初の事になるんでしょう。正式な記録として婚姻証明書に書かれたこの署名は厳重に管理されると言われてます。


「どこの国が火吹き竜に立会人を使うのよ」

「此処にいるだろう。いい記念じゃないか」


 因みに式の様子から食事会の様子まで、冬の橇大会でもお世話になった魔術(まじゅつ)絡繰り(からくり)愛好家によるテレビ中継を使って、カーバイト国にもライブ中継されているそうな。村への配信までは無理なので、録画映像を後日頂けると聞いてます。


 これ、確実に次回大会を目論んでるよ~。下手すると実況中継もやるんじゃないかしら。良くも悪くも技術の進歩は喜ぶべきでしょう。羊娘達、喜ぶだろうな~。


「うちの服飾担当も偉い喜んでたぞ」

「こーういうぴらぴらしたお洋服は飛びずらいんですよ~」

「こういう時ぐらいはかまわんだろう」

「今回だけですよ。ホント」


 ええ、誰に需要があるんでしょうか。こんなオバちゃんのローズレッドの燕尾服なんて。昨日のお洋服の方が遥かに簡素。思いっきり舞台仕様の凝った作りになっております。どこのお笑い芸能人や! ってツッコミ誰か下さい。私にピン芸人は無理! 周囲からも非常に浮いている気がします、あうあうあう。

 

 そんな私の心情は置き去りに、厳かに粛々と式は進み、立会人のもと宣誓をして署名まできました。はい、出番ですとも。


 私以外の立会人として今回指名されたのヒオ国の王族の女性と、ブリネル共和国の外交官。


 ヒオ国の女性は、ハルト国の王妹殿下のおば様にあたる方だそうで、とても綺麗な奥様って感じの女性だったわ。品のある所作がとても綺麗だった。


 ブリネル共和国の外交官は初老に近い男性で、落ち着いているけれど軍人さんポイ感じがしたわ。もしかしたら実年齢は若いかもしれないわね。


 このハイソサエティーあふるるお二人と並ばなきゃなんて、余計プレッシャーよ。なんていうの、ビジュアル的に違うでしょーって感じ。お二人の丁度真ん中に、花があしらわれた人の胸の高さ位の花瓶置きが置かれてって、ちょっと待って! まさか私そこに?


「ほれ出番だ。姫を祝福してこい」

「うやぁ」


 祝福自体は全然いいの。むしろ役得って言えるわ。けど、なんでその位置にそんなのあるのよ。あ、私じゃなくて、なにか置くための物なのかも。そうよ、私の勘違いよ、あ~、びっくりした。


 歩くのは流石に時間がかかりすぎるので、なるだけ人の頭の高さで飛んで、立会人さん達のお隣でそっと着地。さ、どーぞ。


「立会人様、失礼いたします。よいしょ」

「うやぁ⁉」


 ブライダルメイドさま、なんで私を抱き上げるんでしょうか。ちょっとまて、立会人様、場所を譲らなくてもいいんですよ? あ、ちょっと、なんでソコに載せるんです? ちょっと、うやぁぁ!


「こちらでお願いいたします」

「…、あぅ」


 そこの新米夫婦、肩で笑ってるのは分かってるわよ。せめて私の両隣にいらっしゃる立会人様の様にスマートに振る舞いなさい。堅苦しい式ではないとはいえ、一応国家行事。ましてや結婚式なんて人生の大舞台なんだから、キリっとしなさいよ。


 しかし目立つ。ええ、目立つったら目立つ。客席側からの視線がもんのすごく痛い。ついでに超至近距離からの視線まで何故かぶっささる気がしてならない。もう、頭真っ白になりそう。オバちゃんちょっと、隠れていいかしら。はよ終われ~。


 私の内心のパニックを置いてけぼりに、宣誓も署名も順当におわり、私の番。ほかの二人がそれぞれ


「この二人が婚姻の誓いをなされたことを確かに見届けました。おめでとうございます」


 と言って、署名したので、マネすればいいみたいです。では


「婚姻の誓い、確かに見届けました。おめでとうございます。次は二人でいっぱい喧嘩も笑うのも泣くのも楽しむのも幸せになるのも、体験しましょ。そしてお互いに思った事を話すのよ。些細な事なんて思わないで。そんな思い込みと先入観は夫婦の間じゃお邪魔虫よ」


 頭と心がパンパンになりそうなら、私のご飯食べてお喋りに来ればいいのよ? と、お節介しました。世の夫婦喧嘩の大半がこんなもんです、はい署名。名前だけなら何とか書けるのよ。それなりに。


 ペンを戻して、よいしょっと花瓶置きに戻ると。


「「立会人の皆様。ちびちゃん。ありがとうございます」」


 と、新米夫婦。うんうん、幸せは努力よ根性よ。決してどっからか降ってくるものでもないんだから、二人で試行錯誤しながら頑張って。おばちゃん応援してるからね。


「あ、披露宴のご飯。今日はとっても品数多かったから、ちょっとはお残ししてもいいけど、味見はしてね。おかわりしてのお残しは私がゆるしまへんで」


 ちょっとだけ? お茶目をかましておきましょか。




       *******




 その流れで披露宴の宴まで参加になってしまいました。辞退したのにおーさまとレン君がガッチリエスコート、案内された席は比較的年代層の高めな紳士淑女の皆様がいらっしゃいました。


 どう考えたって一村人(いちむらびと)が付いていい席じゃないんだけどね~。今日一日で今迄の常識が覆ってます、誰か私に正しい常識をぷりぃず。そしてレン君、私をその幼児用の椅子に座らせる気満々ですね。紳士淑女の皆様、ほほえまし気にご覧になるのはやめてくださいよ。


 給仕にいらしたお兄さん、ええ。その料理の配し方、カッコイイです。この前菜の春野菜と白身魚のカルパッチョ的な品。盛り付け方がカクテルグラスのような器になんて思いませんでしたよ。私にも、…ええ、おちょこですか、これ。


 身体が小さいので沢山は食べられません。料理人の皆様もその辺はとっても理解されておられたようで、おままごとみたいな幼児用の食器を使ってのミニチュア盛り付けとなっておりました。宮廷料理人の腕前は大変にすんばらしく美味です。ええ、前菜から、春豆のポタージュスープ、葉物野菜と鶏肉の包み蒸し焼きと続き、どの品も春をあしらった盛り付けになっていました。


「器用に召し上がられますな」

「慣れればこれで殆ど頂けますよ。汁物や大きな塊は流石に難しいですけど」


 食事の合間にお隣のかっちょええ紳士から話しかけられております。お箸の国の人ですから、マイお箸持参ですとも。お子様用のカトラリーは少々使いずらいんですよ。


 お魚も綺麗に皮を取ってあったり、大きなお肉もひと口大に切り分けてあったりしたので、お箸だけでキレイに食べられたわ。うん、この心使いはとってもありがたいわ。


「火吹き竜とは、このような食事をするのですわね」

「多分違いますよ、これは私独自のものです」


 お向かいのきらびやかなご婦人も、どうぞお手柔らかにお願いします。


「儂もこれ程近くで見るのは初めてでしてな。いや、無礼を先に詫びておこう」

「無礼だなんて、誰にだって初めてはありますよ。寧ろ私の方が作法も知らない田舎者ですし」


 お祝いの席なんだから、無礼講って訳にはいかないかしら。ああ、お酌とかに行ければいいんだけど、そんな風習ないみたい。


「ご歓談中に失礼いたします」

「うや。給仕のお兄さん、どしたの?」


 給仕のお兄さん、ちょっと困った顔をしてたのよね。ホントにどしたの?


「火吹き竜さまのご用意された料理で少々お尋ねしたい事柄がございまして、恐縮ではございますがご足労頂けませんでしょうか?」

「え、何か問題発生ですか」

「いえ、なにぶん初めて見る料理なので、質問を頂いて困っております。是非ともご教示をお願い致します」

「あ、はい。分かりました」


 このどう見てもロイヤルな面々+熱視線の披露宴。ええ、なるようになれぇい! ここは舞台よ、お芝居よ、宝塚よ。女は度胸よ、女優になりきれ私。と、自分に暗示をかけて、さあ行こう。


 食材の種類と産地から下処理、調理に盛り付け。ついでに食べ方までの説明をこの会場の皆様の前でしました。頂いた質問は主に山菜についてで、村の総意で初物をという気持ちなんだとお伝えしましたよ。


 席に戻って私もいただきました。サクサクとしてほんのりとした苦みがとっても美味しい、いい出来です。鳥カツも梅の酸味がいい仕事してます。糸切ニンジンの甘さもたまりません。そしてこのえび天。身のうま甘さがとんでもありません、抹茶塩との相性がいい!うまうま。


 夢中になって食べていたけど、会場の静けさがちょっと気になりました。あれ~、なんかあったかしら。


「山菜ってこんなにおいしかったのね、知らなかったわ」

「うむ、シュルムがこれ程のうまみを持つなぞ知らなかった。これはたまらん」

「いやいや、このトーフなるものはなんと奥深いのだ、口の中でうまさが広がって行くぞ」

「このツユなるものにシュルムをつけてみろ。また違う味わいだぞ」

「なんという料理だ、この歯ごたえ、この音がまたいい」


 サクサクという音と、少しずつだけど会話が聞こえてきたので、ああ、味わって食べているんだとわかるわ。うんうん、天ぷらはおいしいのよ~。お隣の紳士淑女の皆様も、無言で召し上がっていらっしゃるわ。


「如何でしょうか」

「うむ、単純な調理方法故に素材の味がよく分かる。旨い」

「ホントに。このあっさりした軽さなのに、とてもおいしいわ」

「素材だけでも旨いのに、この塩をかけるとまた違う味わいになるのが面白いな」

「それに見た目がとても綺麗ね。こんな薄い木の板なんて初めて見たわ」

「芯が通った芸術品のようだ。これをそなたが作ったのか?」

「うや、正しくは村の皆と王宮料理人の皆様に力を借りて、です。私にこんな薄い木の板を作り出せる技術はありません。山菜も雪深い山の中を皆で力を合わせて収穫したんです。この春茸はうちの子がとってきてくれたんですよ」


 うちの子はすごいのよ、親馬鹿だっていいもん。ルムックちゃん達が人の入れない山奥からわざわざ採ってきた春茸は、近年稀にみる良質の大株だったの。それが26株も。春茸は舞茸に近い感じだから、迷わず天ぷらにしたけど。


「子供が雪の中からか。さぞかし大変だったろう」

「タングステン村は、人の心も自然も豊かな場所なのですね」

「子供らに褒美をやりたくなるな」

「うや、美味しいの一言が一番のお礼です。村の皆に伝えますよ」


 おかわりを要求するお客様もいたようで、いつの間にか会場も賑やかになっていました。ちなみにコースのメインデッシュはなんとクロムンブのステーキ。筋肉質なクロムンブを熟成するにはコツがあるんですって。しっかり寝かして熟成させたというお肉は鰹じゃなくて濃厚な和牛っぽい美味しさ。肉がこれだけ旨いので、味付けは塩コショウのみというシンプルさ。うん、王宮料理人の本気を見たわ。


 食後のデザートを食べるころには和気藹々と迄いかないけど、それなりにお話しできたと思うわ。三食団子と麦茶がすんごく和む。うやぁ。


 新米夫婦は私の席から直接見えないけど、周囲の会話からどうやら楽しんでもらえた様子。うや、よかったよかった。天ぷら盛合せもどうやら好評だったようだし、村の皆へいいお土産話が出来そう。

結婚の概念は人それぞれです。これが正解という形はないと思います。が、不正解という形もないのだということに。ちび竜の前世はすれ違いからの離縁だった模様。当人は『なるようにしかならなかった』と、吹っ切っておりますのであまり突っ込んでお考えになりませんように。


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