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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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四話目 おねだりされました①



 


 山の季節はとっても早いわ。どこよりも秋が深まるのを感じられるのはとっても贅沢な気がするわね。そして、愛しの家庭菜園は今日も働き者ね。目にも鮮やかな実りの数々は正に宝石、まるで歳末セールのような怒濤の実りに喜びの雄叫びが止まりません。いやぁぁぁん、どぉしましょ、どぉしましょー!


 手塩にかけた家庭菜園の貴重な実りは何一つ無駄になんかさせませんっ。一つ残らずきっちり完食してみせますわ。まずは干し野菜に漬物加工、日持ちしないものは即料理。ルムックちゃんたちもお野菜嫌いじゃないし、駐在の王都組は勿論、マミちゃんも沢山食べてくれるから余るなんて考えはないの。気分だけは食堂のおばちゃんよ、お残しは許しまへんで!


 葉野菜はマミちゃんに頼んで氷漬けにすれば春先まで持つのもあるの。前世のカップ麺に入っていたドライフリージングって感じかしら。スープなんかにホントに重宝してるのよ。


 今夜は温かいサラダうどんと、おから稲荷とティハの味噌ダレ焼きにしましょー。冷やしたナクタの実も添えてどうかしら。これでお米があればどれだけ食生活が豊かになるか…。無い物強請りなのは判ってます、でもやっぱり私の食生活の野望にお米は必要不可欠。おこしが、煎餅が、きりたんぽが、焼おにぎりが、炊き込みご飯が、お茶漬けがっ無性に食べたくなる時があるのよ。今や私の憧れは銀シャリ!


 蛇足ですが此方にも唐辛子はあるの。形そのままで色は白。カラミナというごくごく普通の調味料です。他にも辛味のある調味料はあるらしいけど、田舎のタングステン村で調達するのは難しそう。王都に通っている人に頼んで購入してきてもらうのもありなんだけど、お城から出てわざわざ探してもらうのもなんだしね~。


そう考えていたのよ、今朝までは。




       *******




「こくおーさまからおてがみ? わたしに?」


 この前から村に派遣されている国軍の人が詰所にしているのは、村の宿屋の事務所。納税内容書類とか宿屋の台帳とか、住民票なんかもここにあるの。

 王都直通の魔術門が宿屋のすぐ脇に設置されたから、通行管理を行なうのにちょうどいいんですって。寝泊りする施設を新たに作るにしても、色々めんどくさいものね。


 そこに村の有志で昼食の差し入れをしてるんだけど、誰かにご飯を作るのは結構村の人は大好きなのよ。もちろん私もその一人。で、差し入れよ~と持って行ったらエンさん───エン=ドームさんっていう第三事務担当官をしているそうです。因みに二人のお子さんがいるおとーさんなのだそう。───が高級感漂う二つ折りの紙を差し出してきたの。


「はい。必ず本人に手渡して、返事を頂くよう言いつかっております。どうぞ目をお通しください」

「うや~、今じゃなきゃダメかしら?」

「なるだけ早くとお言葉を戴いておりますので」

「ちびちゃん、読んでみたら?」


 ワイフちゃんとコーディ―ちゃんも目をキラキラさせながらこっちを見て、現状を楽しんでるわね。羊娘(ラクレコム)達まで面白そうにのぞき込んでいるあたり、また騒ぎにならなきゃいいけど。どれどれ…。って、挫折。


「…、いかがしました?」

「読めません」

「は?」

「なにこの言い回し!意味が全然わかんない!てか、これ、何語なの?」


 ぽかんとした御一同に御開帳、即納得してもらえました。簡単に言えば言い回しが特殊すぎて理解不能。例えば事務文章で「ご査収の程、宜しくお願い致します。」なら「(これで間違いないか)よく確かめてね、(間違いなかったら)これでいきましょ。」って感じになるじゃない。こんな感じの文章を「私ノ話ヲ聞クザマス!」って感じに綴ってあるの。


 そんな感じで文章を簡単にしていくと“チーズせんべい以外の、甘さが控えた菓子があったら献上しろ”(←かなり端折った。)って感じかしら。もし読み違えてるなら教えてほしいわ。


「…国王様が現在王宮にご滞在の西の王子の為に茶請けを探しているので、知恵をお借りしたいとあります。因みに大陸言語で記載されてますよ」

「チーズせんべい以外のお菓子よこせって?」

「チーズせんべい以外で、何かあるんですか?」

「ありますよ」


 草餅、みたらし団子、シフォンケーキ、シャーベット、アイス、クレープ、フルーツタルト、クッキー、プリン、マメまんじゅう、レアチ-ズケーキは作ったわ。あ、大判焼きもいいかもしれない。個人的にはチョコとザラメとゼラチンが欲しい。あ、バニラビーンズがあったらもっといいのに。


「そういえばちびちゃんが字を読んでいるところは見た事なかったわ」

「たしかに。大概誰かが読んで、それに答えている位よ。あらやだ意外」

『文字って模様でしょ?』

『そうそう。あんな細かいモノよく読めるわよね』

『大体ちび竜ちゃんは人間じゃないんだから必要なくない?』

『『『ねー!』』』


 突っ込んでばかりいないで助けてよワイフちゃんとコーディ―ちゃん、私もそう思うけど王都の人はそうじゃないみたいよお喋り娘たち。


「では依頼を受けていただけるので?」 

「冬支度と収穫準備に忙しい私にそんな無茶をぶちかますんですね、どこかの我儘貴族とどこがどう違うんでしょうね。まさかそんな些細な事なんて仰るんじゃないでしょうね? こちとら生活がかかってんのよ、豪雪地帯の冬を舐めてんじゃないわよ」

「対価は出します」

「お金じゃ命は買えませんよ。冬の間の食材に資材。薬や燃料だって必要だし、雪対策だってあるんです。何より雪が降ったらフロストリーフの収穫だってあるわ。薬草の畑だって雪対策しないと」

「分かりました。国としてあなたが王都に滞在中は、私が責任を持って此方に労働力を提供しましょう」

「却下です。私の家には人間嫌いの幼い家族が居ます。知らない人間には特に警戒します、やっと誘拐の傷が癒えてきたのにまたおびえさせる行為は家長として私が許しません!」


 何よりあのもふもふなかわいい家族を傷つけるなんて誰がさせるか!


「風ちゃんと雷ちゃん、すっかり元気になったわよね」

「そうそう、この間なんか二人して牧草作りのお手伝いしてくれたのよ。働き者のいい子よね。小さい子たちにも優しいし」

『あの子たち、ちび竜ちゃんの何倍あると思ってんのかしら』

『のぞみ達より大きくなってるのにね』

『ちびちゃんのごはんでおっきくなったからねー』


 二人もお手伝いは喜んでもらえるから楽しいって言ってたわ。身体は大きくなっても、心はまだ幼気な小学生なんです。精神的には私がおばちゃんですもの、大きさなんて関係ないわっ。


「ではどうすれば?」

「作り方なら書き起こしたもので、料理人さん達に作ってもらえばどうですか。ただ西の王子さまの好みを知りませんので私は何とも言えませんが?」


 王族の人の好みって意外とややこしい。因みに二オブさん情報では、餡子系は国王様、甘くない系が王妃様好みだそうです。


『ちび竜ちゃんのご飯って人間にはすごく人気よね』

『あたしはお話の方が好きだわ~、赤ルムックのお話』

『なんか続きのお話ありそうよね』

「好みかぁ、確かに王様なら美味しい物は食べ慣れてそうよね」

「ちびちゃんの言う流通の違いって事ね。確かにこれは問題になるわね」


 お喋り娘たち、何気におねだりするのはやめてね? お話強請る為にお仕事邪魔したら私キレるわよ。ワイフちゃんとコーディ―ちゃん、相変わらず話が変な処で繋がるのね。解説はしないからね。


「こんなど田舎で手に入る食材ですし、王都なら入手は容易でしょ。試しに一つ持ち帰ってやってみたらどうです? 」

「それで王の要望は叶いますか?」

「私の手が空くのは年明け頃になりますよ、その頃まで王子様滞在なさるんですか?」


 少なくとも今邪魔するなら私は容赦しない。愛しの家庭菜園の実りが、モフモフな大事な家族が、私の帰りを待っているのだから。


「アレちびちゃんの悪い癖よね。こと野菜とご飯に関しては決してひかないの」

「そうそう、だけど村で収穫できる野菜が増えたのも、栽培できる薬草や香草なんかが増えたのも事実よ。悪いことばかりじゃないけどあれは病気よね。重症の」

『そっか、これから村の収穫だよね』

『そうそう。畑の刈入れが終わって、人がいっぱいで大騒ぎするアレね』

『私たちは今年起こった事柄を振り返って番付け(ランキング)するのよね。楽しみだわー』


 客観的に見たらそう見えるのね、ワイフちゃんとコーディ―ちゃん。そして収穫祭にそんなことをしてるんだ、お喋り娘たち。


「仕方ありませんな、ではハーテ王にそのようにお伝えしよう。で、その作り方とやらはすぐ頂けるのか?」

「ミーナおねえちゃんが管理してる筈よ。ワイフちゃーん、そうだよねー?」

「ええ、趣味で集めているわね」

「ミーナおねえちゃんにプリンの作り方を貰って来てよ。材料があればすぐ出来るでしょ」


 こうしてエンさんは、レシピと私の提案を持って王都へと帰って行ったのでした。さ、私も切干野菜作りを頑張るぞ~!




       *******



 てな出来事から約二十日程経ちました。


 愛しの畑の大切な恵みは、感謝を捧げしっかりと堪能。食べれない蔓も葉っぱも根っこも収穫し、丈夫な蔓以外はしっかりと乾燥させて焚付の材料にします。蔓は編み込んで籠に使うのよ。村では風呂敷代りにみんな使ってるの。お裾分けにも重宝してるし、壊れたら直せるし、古くなったら燃やしてオッケー! とってもエコロジーだと思うの。


 今年も頑張ってくれた畑には、たぁっぷりの腐葉土と私の愛情を込めてしっかり耕したわ。風ちゃん雷ちゃんにお手伝いしてもらって、ふっかふかの仕上がりに。このまま一月程放置してから春用の葉っぱ野菜の種を撒く予定。来年も宜しくね!


 最近は大量の切り干し野菜作りが終わって、ポー豆豆乳を大量に作っては乾燥湯葉に寒干した高野豆腐作りに追われてます。

初日にマミちゃんが豆腐を気に入って鍋一つ食べ尽くした日に、雷ちゃんが『…メ!』と、ピルピルしながら叱りつけるという光景があったんですって。残念ながら私は丁度居なかっただけども、その場にいた人はマミちゃんを含めて衝撃だったみたい。で、この話は瞬く間に村中に知れ渡ったわ。戻った私は雷ちゃんを勿論ほめたわ。えらいわ~。

 でも本音は見たかった、人を怖がる雷ちゃんのそんな貴重な姿を。マミちゃん、私の前でやってよー!!!


 他にも干し魚、干し肉、干し芋、切り根菜、薬草各種、乾燥ハーブに茸も干したわね。火付け用の大量の小枝も干したし、越冬する薬草に掛ける(ござ)(むしろ)も作ったし、雪掻き用のスコップに運搬用の(そり)も作ったのよ。


 あとは薪割りと、マミちゃんを始め、意外と皆さんも気に入ってくれてるピクルス作りに、白菜漬、梅干し、大根漬を作りましょ。糠が無いのがほんとに悔しいわ~!


 あの時の国王様からのお手紙はミーナおねぇちゃんにレシピ提出の証しにあずかって貰ってます。提出したレシピは写しだから無くしても大丈夫と言われたけど、正直気が気じゃない。

 ぶっちゃけあんな高級な加工の施された結婚式の案内状モドキを手紙に使う相手に、藁半紙に書かれたレシピを渡すのがどれだけストレスなのか。わかる人は私の周りにいなかった。

高級な加工の施された立派な書状と藁半紙。書かれている内容はともかく、ザマス言葉と社外的文章の羅列かと思うと、無性に穴掘って埋まりたくなるわー。

せめてもの救いは、ミーナおねぇちゃんに頼んで代筆してもらったこと。私が書けるのは「ちび竜ちゃん」と「数字」のみ。しかもかなりの癖字で、もそれだけで本人確認になります、って毎年来る役人さんからお墨付きを頂いた程の。

 あとは生前の日本語くらいね。マミちゃんから禁止されているから滅多に書かないけど。


 さあて、今日も元気に差し入れにいってきまぁす!


 お野菜とお肉を美味しく食べる料理が食べたかったので、油揚げで作るなんちゃってピザにしましたー。小柄な私が作れるのはせいぜいハガキサイズのお豆腐。理由は豆腐の入った木箱を重石から外して水に晒す作業でギリギリ持てる重さを目安に作ってるからよ。私の体格的にこれ以上は難しいのよね~。そのかわり、数は頑張ってこなせるよう今は試行錯誤の真っ最中。


 働き盛りの軍人さんはよく食べるから、それこそ作りがいはあるけど、都会の若者に田舎おばちゃんの作る家庭料理でいいのかしらね? 芋の煮っころがしとか、お浸しとか、川魚の塩焼きとか、具沢山の味噌汁とか、おつけものとか、煮込みうどんとか、お饅頭とか、勝手に作って差し入れしてるけど、文句は言われたことないのよねー。余る事もないのも不思議でね、きれーに器だけ返ってくるんだけど、本当はもっと洒落たランチがいいんじゃないかしら?


「こんにちわー、お昼ご飯の差し入れよー」

「ちびさん、いつもすみません」

「待ってましたー、今日は何?」


 今日は詰め所に二人しか居ないんだ、うやー。


「今日は油揚げを使ったピザにしてみたの。お野菜とチーズたっぷりだから食べ応えは保証するわ。」

「ぴざ?」

「これよ」


 大皿五枚にバリエーションを変えて作ってみました。ジャーマンポテト風、マルゲリータ風、キノコ盛り沢山、挽き肉と茄子を炒めてから油揚げの上に広げてチーズを乗せて焼いたものと、軽く焼いた油揚げの上に蒸したお野菜とにベーコンエッグを乗せて、ソースと焼きチーズを乗せたものを用意してみましたー。


 付け合わせに照り焼き風手羽先と、スティック野菜、冷えた緑茶も添えてますよー! 一人で持てないので、途中迄はルムックちゃん達が。そこからは肝っ玉奥様の皆様が手助けしてくれました、拍手ー!


「ちびさん新作?」

「お豆腐の進化系、油揚げの応用編です。たまにはこういう変わり種もいいかと思って♪」

「毎回見たこともない美味しい料理だよな、材料も特別なものでもないし」

「私の野望の為の布石です、食べたいものを作って何が悪い!」

「俺、ここの勤務になって良かった」

「食べる人は手を洗ってからねー、皆にご飯だとお知らせしといでー」


 毎食前の儀式化にさせてます手洗いを促して、いつものごとく配膳を済ませます。お昼は各人で、食べたいものを勝手にとって食べるスタイル。私も一緒に食べるから、それなりに新作の時は反応が見れて愉しい上に個人の食べる適量を確認できるわ。私、村の子供たちよりも食べる量が少ないのよね、あらあら。


 見慣れない子達が居るけど、宿屋のお客様かしら。新人のプレタ君に引っ付いて此方を見てるわ。

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