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スクール・ジョーカー  作者: 椎凪瑰
第1章 「波瀾の入学式」
20/64

第1章19話   「悄愴の片鱗も窺えない」

 ――三十分ほど歩き、噴水がある公園に辿り着いた。

 噴水の近くのベンチで、碧五が座って俺を待っている。

 

 「よう。で、公園まで呼び出しといて何の用だ?」

 「ええと、その、相談があって……」

 「相談か。乗ってやるが……何があったんだ?」

 「前恐喝してきた男達が、私を探し回ってるんです。そのせいか、学校の校門前やバス停にたむろっていることがよくあって……」

 「またあいつらか」

 

 俺は金髪の男達を思い出した。

 碧五が言うには、その男達が碧五に復讐でもするのか、探し回っているそうだ。

 

 「面倒くさいことになったな」

 

 俺は溜め息を吐く。

 

 「やけに寒いな……」

 

 自分の吐いた白い息を見て、俺は呟く。 

 

 「――ちょっと着いて来てくれ」

 「あ、ちょっと……」

 

 碧五の手を引っ張り俺は公園の花壇の近くへ行く。

 俺は公園内の、奥の方のベンチで屯う三人の男を睨む。

 そして俺は碧五に視線を移して、

 

 「碧五。俺とお前であいつらの前を歩くことにした。屹度、あの男達は気付いて襲いかかってくるだろう。今度こそ撃退すれば、奴らは関わってこなくなるはずだ」

 

 作戦を練る。

 

 「俺とお前が恋人関係という設定にしよう。一度撃退した俺が、狙っている少女と付き合っていただなんて知ったら、あいつらは近寄らなくなるかもしれないしな」

 「じゃあそれでいきましょう!」

 

 こうして俺と碧五はチンピラ達の近くを歩いてみた。

 

 「碧五、今日も可愛いな」

 「か、可愛いなんて……」

 

 俺の台詞に、碧五は顔を真っ赤にする。

 割と本気で恥ずかしいんだろうな。

 

 「く、紅君だってイケメンだよ?」

 「そうか?」

 「うん」

 

 俺はチンピラを一瞥する。

 

 「おい、ちょっとあいつを見てみろよ」

 「獲物だな」

 

 男達は言葉を交わした後、金髪が立ち上がった。

 金髪は俺と碧五の前に立ちはだかる。

 

 「そこの嬢ちゃん、前の憂さ晴らしをさせてもらうよぉ!」

 

 金髪と、モヒカンと赤髪三人が碧五に怒鳴った。

 碧五は顫動している。

 

 「黙れ」

 

 俺はそう言い、碧五を庇う。

 

 「――っ! お前は……」

 

 俺の存在に気付き、男達はたじろぐ。

 

 「兄貴、俺たちゃ鉄パイプがあるっすよ」

 「そうだな……へへっ、さっさと死んじまえぇ!」

 

 鉄パイプを握った金髪が俺に襲いかかった。

 しかし、俺は振り下ろされた鉄パイプをすぐに掴んで真っ二つに折ってしまった。

 

 「は?」

 

 瞠目している金髪を、俺は本気で蹴り飛ばした。

 金髪は血を撒き散らしながら、公園の地面を無様に転がる。

 

 「「お、覚えてろよっ!」」

 

 金髪をモヒカンが背負い、二人の男は去った。

 

 「もう襲ってこないといいな」

 「そうですね」

 

 俺と碧五は公園を去った。

 そして道中にあった信号機を渡る途中、碧五が、

 

 「紅君。二回も助けて下さってありがとうございます!」

 

 そう、満面の笑みで答えた。


――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ――凛音の部屋にやっと着いた俺と碧五は、吐息を零した。

 

 「あ、紅さんですか。随分と遅かったですね――ってその方は?」

 

 凛音は碧五を見る。

 

 「わ、私は柄沫碧五って言います。その、初めまして……」

 

 人見知りなのか、碧五は俺の背後へ隠れて名を名乗った。

 すると、部屋の奥から或朱が現れた。

 

 「お前、遅かったじゃねえか。全く、心配したぞ」

 「すまん」

 

 或朱に俺は苦笑しながら謝った。

 そして、碧五を暖炉だんろの前に座らせる。

 

 「それにしても、今日は寒すぎないか?」

 

 俺は白い息を深く吐きながら言った。

 

 「確か、今日は温度が4℃くらいだったからな。真冬かよって言いたい」

 

 或朱は思い出したのか、微笑んでそう言った。

 凛音もそれに頷き、同断どうだんを示す。

 

 「そうなのか。それより……明理達はどこに行ったんだ?」

 「明理さんと杏子さんと天さんならもう帰っちゃいましたよ」

 「もう帰ったのかよ」

 

 俺は溜め息を零す。

 そして碧五を見つめた。

 俺は碧五が元気なことに胸を撫で下ろした。

 

 「その……今日は変なことに着き合わせてすみませんでした」

 

 俺に謝ってくる碧五。

 

 「変なことじゃないと思うぞ。だって、お前は本気で困ってたんだろ? 相談するぐらいだな。謝る必要はない、だって俺が好きでお前と付き合ったんだからな」

 

 俺はそう言いながら、白い息を深く吐く。

 途端、碧五が俺の肩に頭を乗せてきた。

 そしてはっと気が付き、碧五は咄嗟に肩から頭を離した。

 そう、彼女は微睡にうたれているのだ。

 

 「今のは、その……」

 

 碧五は顔を赤くし、口籠くちごもる。

 

 「身を預けたいなら預けていいぞ」

 

 俺はそう言って碧五を抱き寄せる。

 碧五は耳の先まで赤面し、あたふたと慌てている。

 

 「紅君……その、私は、ええと」

 

 途切れ途切れで何かを言おうとする碧五。

 

 「疲れているのはわかるけど、大丈夫か? 顔が赤いぞ? もしかして熱でも……」

 

 俺が碧五の額に触れようとした瞬間だった。

 彼女は飛び起きて俺から距離を取ったのだ。

 

 「こ、これ以上はやめてくださいっ!」

 

 碧五はそう叫ぶ。

 

 「はは、お前フラれてやんの」

 

 俺の肩を小突く或朱。

 

 「フラれたって、そう確言出来るのかよ?」

 「ふふ、揶揄い甲斐のある奴だな~」

 

 或朱は俺を覗き込む様にして見つめる。

 

 「それで、お前はこの後どうするんだ? 家に帰るのか? オレは凛音の家に泊まるけど」

 「俺は自宅に戻る」

 「私は紅君の家に泊まります!」

 

 何故か割り込んできてそう述べる碧五。

 声量が大きいその一言に、俺は驚愕する。

 

 「え? 俺の家に泊まるのか?」

 「いいじゃないですか。私も紅君の家に泊まりたいなーって、なんとなく思ったんですよ。なんとなく」

 

 何故『なんとなく』を二回言ったのかはさておき、厄介なことになった。

 碧五を寝かせるための場所が足りないのだが。

 俺と杏子と天のベッドはあるのだが、碧五の分はない。

 どうするか? まあ、杏子と一緒に寝かせるか。

 

 「じゃあ、ある程度温まったし、俺は家に帰るよ」

 「じゃあな、紅」

 「或朱。今俺の名前を呼んだのか?」

 「な、何だよ! 呼んで悪いか!」

 

 初めて或朱が俺の名前を呼んでくれたことに、俺は驚く。

 

 「じゃあ、家まで送っていきますよ」

 

 凛音がそう言った。

 そして、俺と碧五、凛音、或朱が高級車に乗車した。

 或朱と凛音が俺を挟む様に座っている。

 左隣が凛音、右隣が或朱、そして或朱の右隣に碧五という形になっていた。

 暫くし、俺の家に高級車が止まった。

 俺と碧五は高級車から降り、凛音と或朱に手を振って、玄関に上がった。

 

 「おかえり、お兄ちゃん。あれ、その子は?」

 

 杏子は俺の隣に立っている碧五をうかがう。

 すると、風呂上がりの天が現れた。

 

 「あ、紅さんだ。遅かったけど、何してたの?」

 

 天は俺と碧五を一瞥して微笑む。

 

 「は、初めまして……その、柄沫碧五って言います」

 

 緊張しているのか、訥弁に喋る碧五。

 

 「じゃあ碧五ちゃんとお兄ちゃん。ご飯できたから食べて!」

 「ああ」

 

 俺は靴を脱いでリビングへと向かう。

 碧五は慌てて後ろを着いてくる。

 すると、キッチンの方からカレーの匂いがしてきた。

 

 「今夜はカレーか」

 

 俺はそう呟きながら、椅子に座る。

 そして俺の左隣には天が座った。

 おどおどとしながらも、碧五は俺の正面の席に座る。

 俺と向かい合って座っている碧五は、俺と目が合うなり、赤面して視線を逸らす。

 杏子が碧五の隣に座ったと同時に、

 

 「「「「いただきます!」」」」

 

 俺達はそう言ってカレーを頬張る。

 ほう、美味しいな。

 

 「お兄ちゃん、どう?」

 

 俺の顔をまじまじと見つめながら、杏子は尋ねる。

 

 「そうだな。百点満点中、百点だ」

 「やったー!」

 

 俺の答えに、杏子は嬉笑する。

 

 「美味しいですね……もぐもぐもぐ」

 

 碧五はすぐに完食した。

 

 「おかわりなのです!」

 

 そう言って碧五はカレーを注ぎに行った。

 碧五はかなり小柄なのに、よく食べるんだな。

 そしてまたすぐに完食すると、

 

 「もう一度おかわりです!」

 

 碧五はカレーを食べ続けた。

ここでまたまた、新キャラクターの読み紹介コーナー!

【モデル】

渋谷しぶやそら

【新たなるヒロイン達】

柄沫えまつ碧五あおい

袞衣こんえ或朱ありす


また紹介する機会があったらします。


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