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ミツバチの群れの維持と女王蜂の遺伝子の伝承について

ここまで、群れを1つの生き物と考えるという話を続けてきました。 女王蜂が産卵をし、働き蜂を増やすことは群れの維持、つまりは生命の維持には大きな意味を成しますが、 遺伝子を残し生命を未来へと連続させていくという意味では関係が薄くなります。


女王蜂は雌と雄の卵の産み分けを任意で行います。 雄は女王蜂の持つ染色体32本のうち半分の16本を持ち、無精卵がそのまま雄蜂として産まれてきます。 雄蜂には父親は存在せず、100%女王蜂由来の遺伝子を持ちます。 雄の産生する精子は自らの染色体をそのままコピーしたもので、遺伝的には同一の存在であると言えます。


一方、雌の蜂、つまりは女王蜂と働き蜂ですが、 こちらは女王蜂の持つ遺伝子と雄の遺伝子を併せ持って産まれてきます。


雌の蜂の幼虫がローヤルゼリーを食べて産まれてくる次世代の女王蜂は、 当然産まれた直後は雄の精子を持っていません。 この状態の女王蜂を未交の女王蜂と呼んだりしますが、 春期に正常に増え続け成熟された群れは瞬間的に旧世代の女王蜂(旧王)と未交の女王蜂が混在します。 一つの群れには原則として1匹の女王蜂が存在すれば良いので、 旧王は群れの半分近くの働き蜂を引き連れて巣を飛び出します。 未交の王がその場に留まり旧王が居場所を譲るというのは少し不思議に感じるかもしれません。


天気、気温、群れの状態などに左右されますが、未交の王は蛹から女王蜂として産まれてから約1~2週間の間に交尾をします。付近の複数の群れから集まってきた雄蜂の集団と女王蜂が空で交わり、10~20の雄蜂から精を受けると言われています。この結婚飛行は女王蜂の生涯の中で1度だけ行われ、その後精子は女王蜂の受精嚢という器官に蓄えられます。体内で産生された卵は適宜この精液と掛け合わされ受精卵として生み付けられます。働き蜂が卵から成虫になるまでは約21日かかりますが、交尾にかかる日数まで含めると新しい女王蜂が働き蜂を生み出すまでには1ヶ月前後かかる計算になります。


旧王は分封する際に残した群れが弱ることがないよう、この空白の期間を埋めるために可能な限りたくさんの卵を産んでから新天地へと飛び立ちます。旧王は当然結婚飛行を過去に終えており、体内に遺伝子を蓄えていますので、新しい巣を作り始めてすぐに産卵をすることができます。お供に連れてきた働き蜂たちの寿命が尽きる前にできるだけ早く若い働き蜂を誕生させるのです。こういう理由から分封時には新王ではなく旧王が群れを飛び出すのです。自然の仕組みというのは実によくできていますね。

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