表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/41

end and begin of the battle

「……やった……のか……?」


俺が声を漏らすと同時に、リザがガクッと膝を突き、遙が慌ててその身体を支えた。

自分の腕の中の女児に気付きその場に降ろす。


「立てるか?」


「うん……」


向こうの方から女児の身内らしき少女が、名前を呼び探している。

見覚えがあるその姿に、先日会った春野という事に気付く。


「お前の姉ちゃんか?」


「……うん」


「行って来い」


「うん。ありがとうおにいちゃん」


その顔が愛奈に重なる。


制約でも呪縛でもない。これは俺の望みだ。


笑って女児の頭を撫でると、幼い少女は嬉しそうに姉の元に駆けて行った。

春野がその姿に気付き、そして俺の事にも気付く。


頭を下げる春野に軽く手を振り、俺はリザと遥の方へと向かった。

向こうの方からは坂田や未来たちが、遙たちの名を呼ぶのが聞こえる。


戦闘が終わった事でほっとしたのか、坂田たちが笑いながらこちらへと向かってくる。

しかし、途中で未来の表情が豹変し、上空を見上げると、慌てて遥たちに向かって叫ぶ。


「二人とも逃げて!!」


なんだと上空を見上げるより先に、突然地響きとともに巨獣が遥たちの前に現れた。

体毛が焼け焦げてはいるが、五体満足でその目は怒り狂ったように赤く染まっている。


直撃を避けて、リザの魔法で不死の王の呪縛が解けたのか!?


突然の事に、リザを抱えながら硬直する遥。

リザも苦しい表情のまま動けないでいる。


俺は地を蹴り、遙たちの下に向かった。

怒り狂った巨獣がその巨大な爪を掲げ、振り下ろす。


(ダメだ……間に合わない……!!)


頭の中で遙とリザの様々な表情がフラッシュバックする。


「――――――っ!!」


絶対に殺させない!! その想いだけが頭の中で爆発した。

腕輪の光が増し、走力が加速する。


「うおおおおお―――っ!!」


巨獣の爪が遥たちに触れようとするその刹那、全力で前方へと飛び、巨獣と遙たちの間に滑り込んだ。

遙たちを抱え込みながら、巨獣の剛腕の一撃により吹き飛ばされた。


「ぐっ……!!」


背中から腕にかけて激痛が走る。だが……、


……間に合った……腕の中の遥とリザを見て一瞬だけ安心する。

だが、すぐに振り向き、剣を構え巨獣に対峙した。


爪で引き裂かれた場所から血が溢れ出ているのを、背中に感じる。負傷した箇所を意識し、筋肉を収縮させて出血を止めた。

怒りの収まらぬ巨獣が雄叫びを上げて、こちらに向かってくる。


(てめえだけがキレてると思うなよ!!)


「グオオオオ―――ッ!!」

「おおおおお――――!!」


自分と巨獣の身体が交差し、剣を持ったまま巨獣の後ろに降り立つ。

剣で頭を撃ち抜かれた巨獣が、地響きとともにその場に倒れる。


「……こ、今度こそ……終わった……か……」


緊張が解けて、緩んだ筋肉から血が再び流れ始める。


(……ダメだ……目が霞む……)


身体から力が抜け、その場に膝をつく。

――その時、薄れゆく意識の中、耳をつんざく咆哮が空から聞こえてくる。


空を見上げると、そこにいた。

天を絶望で覆い尽くすかのような、巨大なあの竜が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ