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earth sphere

携帯の応答ボタンを押し、こちらから会話を始めた。


「さ、坂田か……」


状況を伝えるため、苦しそうな声を出す。


「どうしたセナ? なんかあったのか?」


「あ、あぁ……今ちょっと家でな……助けにきてくれるか……?」


「わかった! すぐ行くからちょっと待ってろ!」


ブチっと電話が切れる。さすがは坂田。10秒で状況を理解してくれたようだ。

 リザとの同居の事を坂田に知られてしまうが、もうどうせ遥に知られてしまったんだ。

坂田に知られるのも時間の問題だろう。


それならこちらから伝えた方が、余計な誤解を生まなくて済む。

リビングに戻ったが、二人とも相変わらず黙ったままだった。


……沈黙が重い。


(坂田―――! はやくきてくれ―――っ!!)


救世主の到来を心の中で叫んだ。


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」


勢いよくドアを開けて勇者が現れた。


『………………』


いきなり現れた珍客に、リザと遙が顔を向ける。

……さすが坂田。ヒーロー物に有り勝ちな、もったいぶらせ感がまったくない。


「セナ! 大丈夫か!? ……って、うおっ! ものすげえ美少女がいる!! ……あれ、遥もいたの? って、あれ……、なんか元気ないね……」


遙の様子と状況を見て、坂田の顔が笑いながら引きつってくる。


「…………ハハッ。しつれーしましたぁぁ――!!」


バタンとドアを閉めた坂田を慌てて追いかけ、廊下で捕まえる。


「おい、何故逃げる」


「い、いや~なんかお邪魔ぽかったから、なんとなく……」


「助けてくれるって言っただろう」


「いや無理っす! 帰らせて!」


「帰さん」


「やめてよして!」


「……何やってるの、お兄ちゃんたち……」


玄関先に立っていた美奈たちが、冷ややかな目でこちらを見ている。


「助けて! セナがボクの事を!」


「気持ちの悪い事を言うな」


ポカッと坂田の頭を叩く。


「どうかしたの?」


デーヴの巨体の後ろから未来が姿を見せる。


「なんだ、みんな連れてきたのか?」


「だって、お前が助けてくれっていうからさ」


坂田が不満げに口をとがらせる。


「というより、どうせ遊びに来る途中だったんだろ」


「へへ……バレたか」


道理で来るのが早かったワケだ。


「……まぁいい。せっかくだ。みんな上がれよ」


みんなをリビングへと案内した。

美奈たちもリザを見て、驚きと感嘆の声を上げるが、遥の表情を見て表情が固まる。


「あ、あは。ハル姉久しぶりー」


「……みんなどうしたの?」


暗い表情のまま、遙が仲間たちに顔を向ける。


「遥姉ちゃん、なんか顔色悪いけど、大丈夫?」


「だ、大丈夫よ、未来。ちょっと疲れてるだけだから……」


「今日大変だったみたいだもんね……ソファーでゆっくりしようよ」


遙をソファーへと連れて行こうとする未来。美奈も遙の背中を後押しする。

妹分二人に頼まれて、仕方なく遙は席を立った。


「ほら、リザもソファーの方へ行ってくれ」


「承知致しました」


リザも席を立って移動し、ソファーの前の、床の上に座る。


「何か飲むか、お前ら?」


「オレンジジュース!」「未来と同じ」「ボクはコーラ」「小生はライガーを所望致します」


「えーと、未来と美奈がオレンジジュースで、坂田がコーラ。デーヴがライガーと……。

 ん? ……ライガーって何だ?」


「超神水にも匹敵すると言われる、超生命体飲料、ライフガードを知らないとは何たる不幸」


「ライフガードの事か。悪いがライフガードはない。リアルゴールドで我慢してくれ」


「ライガーをリア金んかと一緒にされたあああ!」


「リア金? リアルゴールドって、リア充の飲み物か何かだったのか? なんか知らんが、あるもので我慢してくれ。ほら、お前の好きなコンソメポテチも付けるから」


「む。そういう事なら仕方ありませんな」


ソファーの前のテーブルに、ジュースやお菓子を持っていく。


「あたしコップ持ってくるね」


「おう。サンキュー美奈」


「それはそうと、セナ殿。こちらのハイクオリティーな美少女とは、どういったご関係で?」


 眼鏡に手を当て、眼光を光らせるデーヴ。

他の仲間も興味があるらしく、一同の視線がリザに注がれた。


「お初にお目にかかります。リザ=シルフィール=レクスシオンと申します。先日この世界に現れた竜と同じ世界から参りました」


その自己紹介を聞いて、仲間たちの間に緊張が走る。……まぁこの説明だとこうなるよな。


「えっ、あの竜と同じ世界って……」


「あの怪獣と関係があるって事かよ?」


と、坂田兄妹が驚いた表情でリザを見る。


「別にあの竜の仲間というわけじゃない。竜を封じ込める際に、障害に巻き込まれて、この世界に来てしまったらしい」


とりあえず遙にしたのと、同じような説明のフォローを入れておく。


「そ、そうでしたか……。どう見ても、天使か女神にしか見えませんでしたが、これで安心しましたぞ」


「ふっ、ボクには最初からわかってましたよ。あなたのその美しい瞳を見れば一目両断だ」


「……両断してどうする。それを言うなら『一目瞭然』だ」


 リザが坂田の間違った日本語を覚えないよう、訂正する。


「でも、ホントにあそこから来たの? 確かにすごくキレいで、服も少し変わってるけど……」


リザをマジマジと見つめながら、美奈が問う。

……まぁ実際にこいつの魔法を目の当たりにした遥ならともかく、何も知らない人間から見たら、ただのコスプレ美少女にしか見えないかもな……。


「……何か一つ魔法を見せてやってくれるか? 簡単なものでいいから」


「了解致しました」


そう言って、手を組んで詠唱に入るリザ。


「深淵なる空 夜の月 星海の星々よ 星見の扉開きて その姿を示せ――」


部屋の床に魔法陣が現れ、光を放つ。


「星天万鏡 (スターゲート・ヴィジョン)」


リザが詠唱を終えると、部屋全体が突然真っ暗になり、皆が驚きの声を上げる。

真っ暗で何も見えない、と思った時、ソファーの前のテーブルがあった場所に、青く輝く大きな球体が浮かび上がる。


「これって、もしかして……地球?」


美奈が尋ねてくる。

そうだ……写真や映像でしか見た事がないが、確かに地球だ。


「キレイ……」


未来がうっとりした顔で、光り輝く青い球体を見つめる。


「私の好きな魔法の一つです。元の世界でも、こうして自分の世界をよく眺めていました」


今までに見せた事のない表情でリザが地球を眺める。

 リザにとっては異世界であるはずなのに、どこか郷愁が入り混じった、寂しげな表情だった。


周りを見渡すと、上下左右すべてが星々の輝きに包まれている。

しばらくの間、空間と一体になったかのように、皆その身を委ねていた。


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