先代勇者の足跡……爆死地点?
タイトル回収か??????
放課後。ミヤフィはフェンエフィー工房にお邪魔していた。
「ただいま! 父さんやったぜ! ミヤフィさんが開発受けてくれたよ!」
「おお、本当か! 私はフェンエフィー楽器工房の主人、レスと申します。よろしくお願いします。ミヤフィさん。こちらの子は娘さんですか?」
リタに向かって挨拶するレス。リタは確かに頭が良さそうな見た目をしているし、年齢も適齢期だが……
「ちょっと父さん、こっちがミヤフィさんだよ!」
「私はミヤフィのメイド、リタ=クァルテットと申します。以後お見知り置きを」
「私はキーナです! ミヤフィの親友です」
「え?」「んなっ」「嘘だよ」「もう!」
「それは失礼しました。まさか魔法器械コンペティションの優勝、しかし世界初の対称属性魔法器械の開発者がこんなに小さな子だとは。びっくり仰天してケガキを間違えそうだ」
「リタ様は……召使い? 貴族なのに?」
「いえ。私は召使いではありません。メイドという職業です。メイドは貴族にも相応しい職業ですよ。掃除、洗濯、料理、庭師、スケジュール管理、学問、芸事、護衛その他雑事と、主人に仕えて何でも行う職業なのです」
「へぇ〜! 秘書の凄い版みたいなものなんですね!」
「そうですとも」
「最近はすごい仕事があるもんだなぁ」
一通りの挨拶が終わり、まずはどういったものを開発したいかの説明となった。
応接室に通されたミヤフィ達は、デカい楽器を発見した……というより、応接室の奥の壁際、一番目立つ位置にそれはあった。
「これは『大空魔力式鍵盤笛』と言いまして、この白い鍵盤を押すと、後部の笛に大空魔法の風が送られて、音が鳴るという仕組みです。
「へぇ〜すごいですね! これ、後で触ってもいいですか?」
「ええもちろん。いえ、楽器を作ってもらうんだ。私達の技術を見ていただきましょう。ポール、なんか弾いて」
「ありがとうございます」
ポールは大空魔力式鍵盤笛の前に座り、指に魔力を集中し始めた。その集中の精度はミヤフィの10分の1程度だったが……鍵盤の操作に支障をきたさない程度に留めているようだ……とミヤフィ基準だとそう見えるが。
「(魔力操作がお上手ですね……ミヤフィ様がおかしいだけですよね)」
ポールの年齢にしてリタと同程度の繊細さで魔力操作をしているようだった。ミヤフィが以上に魔力操作が上手なだけであった。
「それでは……」
ポールが鍵盤を押し込むと、大空魔力式鍵盤笛はポ~というように聞こえる音色で鳴き始めた。
「(……うん?)」
ミヤフィにはパイプオルガンみたいな音に聞こえた。きれいにチューニングされているようだが……主旋律が始まった。曲は和音と単音の組み合わせが秀逸で、まるで『星降街』に降ってくる星を思わせるような曲だった。
「深みが足りない……?」
「えっミヤフィ失礼だよ……」
「うわ口に出てました? ごめんなさい」
「やはり……ポールではだめか……」
ポールは曲を途中でやめてしまった。
「父さん……やっぱり僕、才能ないのかな……?」
「なんでだろうな……まあ、演奏者は宮廷楽士の方々だ。大人になるまでに弾けるようになればいいさ。どれ、私が弾いて御覧に入れましょう」
レスも同じ曲を演奏する。結果的には、レスの演奏は見事という他なかった。同じ大空魔力式鍵盤笛とは思えない程、音に深みがあった。
「すばらしいです!」
「ありがとうね。これでも、宮廷楽士の人の演奏はもっとすごいんですよ」
「へぇ〜! いつか聴いてみたいな!」
「さて、そろそろ本題に入りますか。ミヤフィさん。貴女に作って欲しいのはこちらです」
ポールは一本の楽器を取り出した。
「これは」
「ヴァイオリン?」
「よく分かりましたね。先代勇者様の失敗発明の一つ、ヴァイオリンです」
「あ、ホントにヴァイオリンだ。格好いいですね……これが失敗発明?」
ポールは「まるで見たことがあるかのような口振りだな」と思った。
「ええ。この「弦」というものを弾いてみてください」
ミヤフィは頭に疑問符を浮かべながら、言う通りにした。キーナやリタも同様の反応だったが……
弦を弾く。弓で弾くような音ではなく、ポーンという音のはずだったが。
バンッ!
「えっ?」とミヤフィ。
「うるさっ!?」とキーナ。
「そう。とても楽器と呼べる代物ではありません。まるで打楽器。ですが、勇者様の元いた世界では、こんなものが美しい音色を奏でていたのだとか。信じられません」
信じられないのはこっちの方だと思ったミヤフィ。
「(ヴァイオリンの弦を弾いたら琴やギターみたいな音がするはずでは???????)」
全く予想と違う挙動をするヴァイオリン。ミヤフィの頭の中は謎で一杯だった。
「衝撃音……衝撃音? 弦って固有振動数で振動し続けるはず? ヴァイオリンは壊れてない。弦の振動は一瞬で止まった。爆発みたいな音……明らかに物理的におかしい挙動……もしかして」
ミヤフィは、一つの仮説に辿り着いた。
「ミヤフィ様、心当たりがあるのですか?」
「『エルデ』と『地球』とでは物理法則が違うのでは? だから、この楽器も想定と違う挙動をする」
一応は地球出身ということを取り繕って、仮説をレスに伝えたのだった。
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