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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
3章 魔力の奔流に流されて 
61/66

エルデの運動理論・探究開始!

お久しぶりです。

 ヴァイオリンが正常に機能しないことを確認したミヤフィは、ポールからヴァイオリンを受け取り自分でも触ってみた。

 バンッ!

「やっぱり、衝撃音が出る・・・もっとこう・・・うーん」

 ポーンと、音が伸びるはずなのに。と唸る。

バンッ! もう一回弾いてみた。

「ん? リタさん、ちょっと私の目の前で弦を弾いてみてください」

「はい。構いませんが・・・耳が痛くなりませんか?」

「今回ばかりは仕方ありません。しかしこれは・・・不思議ですね」

「なんかこう、一瞬でエネルギーを出し切っているように見えます。ちょっとリタさん。ワイングラス貸してください・・・灯りに反せ。『冷却(トーチ)』」


 そういってミヤフィはリタからワイングラスを受け取り、氷属性最下級魔法『冷却(トーチ)』で空気を冷却。結露した水をグラスに溜めた。そして指先に水を付け・・・グラスの縁を撫でた。


 ポォォォォオオン。とワイングラスを撫でた時の音が鳴る。

「ありゃ、こっちは普通に鳴るんだ。へぇ~鳴っちゃうんだ。面白い。レスさん。ポールさん。私、このご依頼お受けします」


 ガタッと立ち上がったレスとポール。ミヤフィも手を差し出す。

「ではリタさん。契約書はお任せしてもいいですか? 私も隣で見てはいますが」

「はい。メイドですから、まったく問題ありません」

「リタさん、やっぱり何でもできてすごい!」

「キーナさん、褒めてもおやつしか出ませんよ?」

「最高ですね・・・私も頑張らなきゃ。ミヤフィは放課後、毎日ここに来るんだよね?」

「まあ毎日かと言われると微妙だけど・・・基本的には、ヴァイオリンからまともに音を出す方法の研究かな。(ゆくゆくはギターを・・・)」

 小声のミヤフィ。

「リタさんは半分半分ですか?」

「ええ。ミヤフィ様と共にここに来るのが半分。もう半分はメイド学の研究と課外授業です」

「課外授業ですか? リタ先生は教授だから、放課前に授業をたくさんしているのでは?」

「そうですが、ポール君。実は、メイドになりたいという下級貴族の子女達が多く、しかもやる気に満ち溢れているのです。今しかありません! メイドギルドがブレイクするときです!」

「リタさん、そういう訳なら別に私の送迎を無理にしなくても・・・」

 ミヤフィは先生としてのリタを気遣ったつもりだったが、それは余計な気遣いだった。

「ミヤフィ様。主人に仕えずして何がメイドでしょうか」

「なるほど・・・?」


 などと言いながらリタは契約書を書いていた。既に半分ほど書きあがっている。

「キーナちゃんはどうするの?」

「そうだね。ミヤフィに負けてられないし、私も何かしよ! うーんどうしようかな? 折角だし、ミヤフィもリタさんもやってないことがいいな!」


 えっそれって・・・と思うミヤフィ。何しろ、『リタができることが多すぎる』のである。

 掃除洗濯料理ベッドメイキング来客応対芸術契約運動戦闘暗殺礼節晩酌恋愛・・・

「思ったよりリタさんができること多かった! うーん、そうだ! 『自己顕現』の練習しよ!」

「お嬢さん、その年で自己顕現を習得する気になるとは、流石は勇者様のお仲間。どうか自分を見失わないように、お気を付けください」

「???」

 キーナは意味がわからなかったが、リタがニコニコしながら何も言わなかったので問題にしなかった。


「こんにちは。守衛さん」

「(ピラッ)」

「こんにちは、ミヤフィ様。レスは応接室でお待ちしております」


 ミヤフィは翌日、リタに付き添ってもらいフェンエフィー工房へやってきた。ちなみにポールは日直で、日誌と木板消し作業をしなければならないため、遅れて帰宅する。(木板とは現代日本で言う黒板のようなもの。木の板の表面にスライムの皮を張り、その上に泳ぐのが速い魚『カーツオ』の鱗を貼り付け、砥石で削り製作する。適度な表面荒さと防汚性により、炭をチョーク代わりに時や絵が描ける)


「フェンエフィー家のレス様にご挨拶申し上げます」

 ミヤフィは恭しく挨拶をした。昼休みの雑談でポールが貴族であると知り、同時に貴族への挨拶は丁寧にしないと犯罪となる、不敬罪でしょっぴかれる可能性があると聞いたからだった。


「いやいやいやミヤフィさん、もしかして学校でフェンエフィー家のことをお聞きですか? 大丈夫ですよ!」

「いやでも」

「貴族だといっても所詮は皇室のお抱え工房というだけですよ。品格は・・・必要ですが。ミヤフィ様とポールの仲ですから。堅苦しさは必要ありません」


「・・・そこまで仰るなら。こんにちは。レスさん」


「はい。では早速、しばらく使ってもらう部屋をご紹介します」

「よろしくお願いします。あ、リタさんお見送りありがとうございます」

「いいえ。部屋まで拝見していこうかと思います。『ばりあふりー』でないと困りますから」

「あーそうですね。よろしくお願いします」


「ばりあふりーとは?」

「主人ミヤフィは先日の変質魔力事件で足を悪くしています。そういう人でも使いやすい部屋や間取りのことをばりあふりーと呼ぶらしいです」

「聞き馴染みのない言葉ですが、近くの国の新しい言葉ですかね? 語感からそういう気がします。とにかく、そういうことでしたら使いやすく家具を動かさないといけませんね」

「よろしくお願いします」


 作業場は楽器加工を行なっている部屋の隅っこだった。職人たちは蒸し器から身長ほどある木の板を取り出し、曲げていた。

「楽器製作の様子を見ながら研究というのもいいかと思いまして」

「あーいいですね! 困ったら職人さんたちに聞けますからね! 皆さんよろしくお願いします!」

「よろしく〜」

「うい」

「木ぃ曲げてっからあとでな!」


 名前の自己紹介にならないあたり、忙しいようだ。

「では早速『ヴァイオリンの開発』始めますので。まずは欲しいものがあるんですが・・・コソコソ・・・まずあの武器と・・・部位と・・・」

「はい、購入しておきましょう」


 職人たちには聞こえないよう、コソコソとレスに話すミヤフィ。弦楽器を作るために、エルデの運動理論構築の必要がある。ミヤフィはある物を発注した。




感想くださいッッッッッッッッ!!!!


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