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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第四章 親と子編

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2.ブランド立ち上げ(2)

 それからは具体的に工房の候補、店舗の候補、主力商品となる三木堂さんとの会合の日程など、どんどん決めて行く。

 今は光様が私が言葉で話す店舗イメージを、具体的に絵図にしてくれていた。


「なるほどなぁ。店の中に着替え出来る場所を作るのか」


 そう、いずれは簡単な町着や鞄なども扱いたいからだ。

 そして、いずれかはプレタポルテからオートクチュールの受注品へ。

 安価ラインと高級ラインの二店舗にしたいのだ。


 その話はとりあえず今は言わないでおこう。安価ラインが軌道に乗ってからの話だ。

 プレタポルテには私の身分がそれなりに必要となるだろうし。


「帯や、帯締め、草履や小間物も販売したいのですが、女性が人前で帯を解くのは少々……」

 私が提案したのは所謂フィッテングルームだ。安価ラインなら店内に設置する簡素な物で問題ない。


「この引き出し式机と申すのは、凛花様?」

 支宣様がたずねて来た。


「宝飾類を此方に普段から入れ、奥からわざわざ持ってくる形ではなく。その場でお客様に手にとってもらえる販売形式を取るためです。それだと、店員も少なくできますし。一応用心に引き出しには鍵を普段は掛けるようにします」


 三木堂に行った時に感じたことだ。商品を手に取ることが客が出来ないのだ。

「見せて欲しい」と言って、客の好みを聞き、店主が一つ持ってくる。気に入らなければまた、そこから話合いをし、再度奥から持ってくる。その間客は一人で待ったままだ。


 店内に他の客が来た場合、その接客時間を考えると、非常に効率が悪い。

 回転率が低すぎるのだ。それでは客単価すら上がらない。


 私が目指しているのは、今は高級ブランドショップではない。


 庶民が少し頑張れば変える店だ。それが買いたい為に働き金を貯める。

 そんな「楽しみ」があっても良いのではないか? と思う。


 その意を三人に説いた。


「それを買いたい。だから仕事をする。思いを寄せる娘に贈る為に仕事をする。そんな店があっても宜しいのではないでしょうか?」

「その為にできるだけ、本職の工房に全てを任せるのではなく、内職などで民に仕事を斡旋します!」

「この国を豊かにします!」



「惟光、宣、忙しくなりそうだな。この者の夢に乗るのは」


「はい」力強く兄が答える。

「楽しみですね」弟は笑った。



「身体だけは壊さぬようにしろよ」

 光様がそっと頭を撫でた。


 私は、そんな光様の首に両手をそっと絡ませ、少しだけ自分の方に近づけ押さえながら、目一杯背伸びしながら、耳元で囁く。


「だぃ好き。光()()


「コホッ……」

 ほんのり、光様の頬が赤らんだのを私は見逃さなかった。

 自分で言った私の頬が熱くなるのを恥ずかしく思いながらも何事もなかったように振る舞い、茶の用意をする為一旦席を離れた。



「何処でそんな手を覚えたのやら……」

 小さな声で自分の耳を指で触りながら、呟いた彼の顔はいつもの掛ける二倍以上の輝きを放っていた。



 ──「しかし、本当にそこにあるかの如くな絵図ですねぇ」


 私は殿下の画才に改めて驚いた。私も絵画は幼少時より習っており、ある程度の遠近法や影の入れ方、描写の仕方の基本的なことは教わっている。何度も大きな大会で入賞経験もある。


 だが、殿下がほんの短時間、しかも私の拙い説明だけを聞いてサラサラと描いた絵は、そのレベルをはるかに超えていた。

 しかも殿下は現代の宝石店、雑貨店のスタイルを一度たりとも目にしたことはなかったのに、その現状を忠実に再現し、写真の如く正確に描き出していた。


 どんな頭してるんだろう……。


「子供の頃、一人で淋しかった時、絵はよく描いておったのだ」


 そう、ポツリと漏らす。


 何か触れてはいけない彼の部分を聞いたような気がした。

 思わず私は彼の手に自分の手を重ねた。


「もう、遠い昔のことだ」

 殿下が軽く瞼を閉じた。綺麗な睫毛の奥が少しだけ震えているように見えた。

 重ねた手を私は、手を返し彼の手を握る。


「今度幼き頃のことを、わたくしにお話して頂けませんか?」


「寝屋の中でな」


 そう言って彼は笑った。


 いつか私も話さないとなぁ……


 私はまだ誰にも言ってない自分の秘密のことを思い出す。

 自分ですら分かってない現象をどのように説明したら良いのかが今の私にはまだ答えが出ていなかったからだ。





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