11.提案書
──「ハハハッ、凛花さん。座りなさい」
後光様が「シ」の音で少し笑いながら言った。
いつもの声だ!
「先ず一つの間違いね。凛花がこれを入れた箱には何て書いてあったかい?」
はて?
「大臣行き」だったような? 私はゆっくり答えた。
「「大臣行き」と書いてあったと思うのですが?」
「箱が何個あったか覚えているかい?」
??
確か正面に1つと、後ろに1つ? で合計2つだったような。
そのままを答えた。
「なるほどね。それは仕方ないね。多分昨日午後に箱を開けた者が置き場を間違えたんだろうね」
?
何のことを言っているのか分からない私に、中将様が謎解きをしてくれた。
「いいかい? 凛花さん。「提案書、報告書」を入れる箱がある所は、昨日君が行った場所であっている。情報部の部屋前だ。ただそこには箱は本来1つしか置いてないんだ」
え? 1つ? 2つあったけど???
私の? な顔に頷きながら中将様が続けた。
「箱の面には「大臣行き」と書かれている。大臣は二人しか居ないからねぇ、直接こちらの執務室に届けられない慣例になっている理由は伝えたよね?」
それは、登庁最初の日に教わった。国のツートップ、いわば政を行っている者へ直接会って書状を渡す時に便宜をはかってもらいたく金品を同時に持ち込む者が居たり、中には女性を等と、あの手この手を使い所謂「賄賂」を渡そうとする者を防ぐ為だ。
あと、内密に私欲の願い事や、秘密の願い事が出来ないように、すべては一旦平等に「箱」に入れて「情報部」の検閲を受けてから両大臣の元へ、やっと渡ってくるのであった。
その話だと、箱に入れてから、中将様の元に届くまでには、四〜五日以上はじゅうぶんかかる? と思っていたのだが。しかも中将様の元ではなく、なぜか、光様のところに?
中将様を通り越して? 中将様も私が「提案書」を入れたことを知らない様子だったし……
「情報部の人間が、置き忘れたみたいだねぇ。ちょっと困った方々ですね」
「は、誠に申し訳御座いませんでした。私よりきつく言っておきますゆえ、何卒……」
中将様は、すっとソファより一旦立ち上がり、片膝を床につけ、臣下の礼の中でも最敬礼の姿をとった。
「惟光、立ちなさい」
「はっ」
中将様はすっくと立ち上がりそれでも、手を組み礼をした姿は崩してはいなかった。
「凛花、今回のことは箱を管理している者達の誤りではあるが、君もちゃんと確認はしないとね? 凛花が入れた書状は私宛に直通の「大大臣行き」の箱だよ」
そう言って光様はちょっと残念そうに苦笑いされた。
はっ! そういえば「箱」の大きさと色が違った! そうだった。
皇弟君ゆえ、臣下ではない為、官位はないが、大臣を任命する人、大臣を統括する人の意で「大大臣」と呼ばれることもと。御名や、皇弟君などと御呼びするのが憚れる為の苦肉の策とも捉えられていると聞いたんだった!
「ただ、惟光? 私直通の「大大臣行き」箱の存在を、ちゃんとお前は凛花に予め教えていたのかい?」
「……誠に申し訳御座いませんでした殿下」
「まぁ今回のことは、まだここに慣れない凛花に対して我々の注意不足もあっただろうから、今後このようなことが起こらないように、対策をせねばだな」
そう言って、光様はソファに深く腰掛けられた。
「で、その件はまあ、良いとしてだ」
そう言って、いつものにこやかで、それでいて気品のある佇まいと所作でお茶を一度口にし、光様が話しだした。
「実は、ここに書いてある内容だが」
そこまで言って何故か、一旦沈黙になり、腕組みを殿下がしたのだ。
え? 私何かヤバイこと書いたっけ?




