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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
序章 出会い編 (人物紹介が主になります)

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10.楽興の時

 ──この国は見た感じ治安も安定しているし、気候風土も安定している為、比較的資源は豊富だ。

 海も近くにあり、海産物も豊富にある。

 内陸には山もあり山菜も収穫でき、平野部では畜産や稲作以外にも農作物の収穫量は安定している。


 農業だけではなく、先日光様から戴いた髪飾りもそうだが、工芸品の技術も高いし、ここにある食器も陶器、硝子、銀食器等多岐に渡り素晴らしい。


 硝子に切子が施されていたことには正直驚いた。工芸品レベルなら日本の江戸時代には十分匹敵するレベルだ。

 なら、江戸時代にはすでに「握り飯」は存在していたはず。粥は如何せん……


 此処は強いて言うなら食文化が低すぎる。

 低いと言うか、頑固とも言える「御料理番」のレシピ継承だ。


 帝政が安定しているのは良いことだが、時代の流れによって良い所は継承し、改変していかなければ、いつかは衰退していく。それが「食」に今まさその期が訪れているのではなかろうか。


「粥ではなく、「白飯」ご飯、を炊いてみませんか?」


『ご飯?』


 それからは皆急ぎで朝餉を喰らい、後片付けを皆で手分けして行った。


「殿下は座っていてください。いや、寧ろじっとしててくださいな」

 母様の甲高い声が響いた。

 よかれと思って、台所の中を雅な衣でウロチョロする大男が正直邪魔だった。


 台所を追い出された、光様と、中将様は、二人で仲良く茶をすすりながら、また昨日の残りの「プリン」を頬張っていた。


 あ、この「プリン」のことも何とかしないとなぁ。「食事処」のメニュー改変に最近忙しくしていたため、()()()()()が後回しになっていた。


 まぁプリンもいずれは店売りを考えているので、この「ご飯」と「弁当」の同時進行で良いか。

 あ! 定食のあとのセットメニューにしても良いわねぇ。

「甘味処」を新たに作るのも良し。甘味の種類を増やし、いつかはアフタヌーンティーの開催!


 うん、なんとなく方向性は見えてきたわ!

 ヌン活女子を目標にしましょう!


 話は元に戻すと、米を研ぎ水加減を普段の炊飯より減らす。

 この時代の釜って、メモリがないのよねぇ。あ! メモリ付きの釜も作っちゃう?

 (かまど)に再度研いだ洗い米の釜をかけ蓋をした。


 始めは弱火で沸騰したら強火で一気に炊き上げ、その後は蒸らし。

「赤子泣いても蓋取るな」である。


 ──部屋中になんとも言えない甘い匂いが立ち込めて来た。


 皆、その匂いに待ちきれずワクワク、ムズムズしている。

 光様と犬兄弟は、台所の戸前と執務室を行ったり来たりと忙しくしていた。

 台所内には、お母様に言われて立ち入らせてもらえないからだ。


 米飯が炊き上がるのを待つ間に、私は「漬物」と「塩」と「卵」と「醤油」を用意した。

 と、朝餉の汁の出汁につかった昆布を細かく切った物。


 ふふふ。楽しみ~ これで「おにぎり」ができるわ!

 と、TKG! 卵かけご飯よ! あの神レシピよ! 釜炊きご飯に新鮮な卵!

 美味しくないわけがないわ!



 そして、ついにその時がやってきた。

 まさに「はじまりの(とき)


 全ては美味しいご飯から始まる。



 さぁ、召し上がれ~


 ──楽しい時間のはじまりよ~


 ──「お待たせしました」


 そう言って私は、釜ごと執務室にある長テーブル横に運んできた。


 昨日「料理処」のワゴン台を一台頂いてきたのだ。最近何故か毎食必ずやってくるこの兄弟と、宮様。まぁ光様に関しては、ご自身の東宮御所を出て此処に引っ越して来られたのですが……


 それに両親と大所帯になったので、配膳が便利と言うこともあり頂いたのだ。

 まぁ正確に言えば、宮様が勝手に取って来たのだが。

 勿論運んだのは支宣様だけどね。


 此処って確か「政務秘書官室」だったような?


 料理処じゃないよねぇ? とも最近若干思うけれど、まあ、美味しいご飯を広めることは、国民の働く意欲と、健康、脳の働きも良くなるしね。国政において大事なことだから、良しとしようか。


 とりあえず、この「粥生活」を何とかしたかったのが、正直なところだった。



 ジャーーーン!!

 釜の蓋をそっと開けてみる。


 そうそう、これよこれ! 甘くて柔らかく食欲をそそるこの匂い! そしてこの艶々!

 粥では表せないこのピカピカよ! ダイヤモンドの輝き。まさに至高の輝き!


 宮殿に納められている高級米であろう米を、(かまど)で炊き上げたご飯! 

 美味しくないわけがない!!


 炊きたてのご飯を軽く混ぜ、椀に盛って行く。

 先ずはこのままで、少し召し上がってもらおう。


「先ずは皆さんこのままを召し上がってみて下さい」


 皆、目をパチクリさせて、ご飯を一摘み口にいれた。


『なんじゃぁ、これはーーー!!!』


「美味い」

「おいし!!」


 聞かなくても、皆の無言で茶碗のご飯をもくもくと貪る姿で、感想はわかる。


「まだ、この後もありますので、その辺で一旦止めて頂いても?」


 そう言って、ストップを皆にかけた。

 いつまでも貪り続ける熊男から茶碗を取り上げると、泣きそうな顔で此方を見てきた。


 まぁまぁ待ちなさい。気持ちは分かるけれども。

 この後に続く握り飯や、卵かけごはん。シメの茶漬けとフルコースがあるんですから。


 先ずは卵かけご飯から。

 用意した卵にほんのすこし醤油を入れ、箸で混ぜる。

 そして、先程のよそったご飯に投入!


「え? このまま? 火を通さずに良いのですか?

「え? 生で?」


 この卵は、宮廷内で飼育されている鶏から毎朝産みたてを使用している。半日も経ってない新鮮な卵だ。生で飲めるぐらいの代物だ。


「問題ありません。本日産みたての卵で御座いますゆえ」


 そう言って皆にすすめた。

 皆、恐る恐る箸を椀に近づけ、卵かけご飯を一口、口に頬張る。


『なんじゃこりゃあーーーーーーー!!!』


「これまた美味だね」

「美味しいわねぇ」


「あ、皆さん、まだ他にも御座いますから、先程同様そのぐらいで一旦止めて下さいよ?」


 そう言ってまた熊男の茶碗を取ろうとしたら、今度は両手でがっちり抱えて離そうとしない。

「父様……」 

 そして、今回は中将様も同じように、まだモグモグをやめてない。


 まあ、お若いから二膳程度なら問題ないでしょう。と今度は最初に椀によそって少しご飯を冷ましていた物を持ってくる。

 手水を用意し、少し塩を手につけ「おいぎり」を作る。


 具なしの「塩むすび」昆布の佃煮をいれた「昆布むすび」高菜の漬物をいれた「高菜むすび」と、脇に大根の漬物を少々のせて。


 今回は「おむすび」の定番の形である「三角おにぎり」にしてみた。


 私が握っている姿を見て、母様が見よう見真似で手伝ってくれた。流石母様。簡単な説明だけで最初はまん丸だった「おむすび」が慣れてきたらちゃんと三角になっていた。


「こちらが、塩だけでこしらえた物。そして左から順に中に具材が入っている物になります。どれでもお好きな物をお取りください」


 そう言って皆の前に出す。皿の上に笹の葉を敷いてみた。

 いずれは竹皮で「握り飯」を包み、外出用の弁当にしたい。と思っている。


「これまた、美味い!」

「なんだこれ? 塩を使っただけでこのように違うのか?」


「ワシのは、昆布が入っておったぞ! これはツイておるわ!」

「兄様、この高菜入り、ピリリと苦味があり、なんとも言えませんよ。何個でも食べれます!」

「凛花、全種、私の前へ持って来なさい」


 うん。「おむすび」は気に入ってもらえたようだ。


 そして、最後に少し残った茶碗に白茶を注ぎ、そこに昆布をいれた茶漬け、大根の漬物をいれた茶漬け、高菜と昆布を入れた茶漬けを、皆の前に置いた。


 先程の「おむすび」で学習済の皆は、直ぐに各自手に取り、茶漬けをサラサラと召し上がられた。


『ふーー美味い!』


「美味しかったわ。でもお腹一杯。今日はお昼はもういらないかも」

 と、母様は満足そうに笑いながら言った。


「凛花、後ほど昆布を入れたこの三角の「おむすび」と言ったか? それを部屋に持って来てくれ」


 え? 光様? まだ食べるのですか??

 皆に「粥」ではなく「ご飯」の良さを分かって貰う為の試食会だったけれど、大成功だった。


 後に、食いしん坊兄弟が「食事処」にも「ご飯」を持って行き、今日のレシピを色々とまとめて、広めてくれると約束してくれた。


 これで、若い働き盛りの者達の活力に少しでも貢献できれば良いな。と思った。


 そして、新たな発見をした。


 光様って普段あまり食べないので食が細い方だと思っていたんだけど……

 実は大食い? 



 やんごとなき御方の大食い疑惑がにわかに立とうとしていたことは、また別の話。


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