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殲滅のマタドール   作者: ユリグルイ
FINAL ORDER
119/121

殲滅のマタドール:118話 annihilation of Matador

天を光らせる赤い明け空に突如金色の光が混ざる。


それに真っ先に気づいたのはこの忌々しい抵抗を続ける邪魔者諸共街を焼き尽くそうと最大級の爆炎を吐こうとした闘争王だった。


目を見開いた彼は、地上の対象からは完全に興味を無くし……恋い焦がれる相手へと向け巨大な翼を広げて飛翔する。


そして、その金色の光へと向け絶叫した。


『アヴェンタドールゥゥゥゥゥゥゥッ!!待ちわびたぞ!!やはり、やはり、やはりぃぃぃっ!!貴様は俺の前に戻ってくると信じていたぁ!!』


金色の光はやがて、一つの箇所へと収束し……そして、一つの影を作り出す。


それは、戦争の為に作られた……人を殺し、兵器を破壊し、武装能力の全てを破壊し尽くす為に生まれた少女。


そして、その呪いを自ら断ち切り……自身の在り方を見つけたアヴィという名の少女だった。


『うおおおあああああっ!!決闘だ!!俺と戦え!!最強の殺人人形、戦争を変えたゲームチェンジャー!!』


「……断る……」


『何だと!?貴様、俺の決闘から……俺の闘争から逃げる気か!?』


「……私はもう、ゲームチェンジャーなんかじゃない……戦争も闘争も決闘も……二度と御免です……」


『ふざけるなぁぁぁぁっ!!貴様、今更日和ったか!?……』


「……私は駆除しに来たんだ……厄介で大きく、そして不快な醜いトカゲを……」


それが自分の事を指しているのだと気付いた爆炎竜は大きく口を開けて笑うと、闘争本能の赴くままに相手へとその巨大な口を開く。


そして、最大火力の爆炎を吐き出す前に絶叫した。



『駆除されるのは貴様の方だ!!この忌々しいガラクタがぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!』


21000度のあらゆる物体を焼き尽くす爆炎竜の炎が少女へと襲い掛かる。


しかし、彼女はシールドの類は一切敷かず、無防備な片手を静かに横へと持ち上げる。


そして、相手の炎を迎撃する準備を整え静かに唇を開いた。


「焼夷弾頭、発射準備!……纏めてくれてやれ!」


< イエスサー、ミサイルランチャーコンテナ六千基、展開準備完了。焼夷弾頭"イフリート・マークⅤ"、発射可能数∞ >


「纏めて叩き込めぇぇっ!!」


< ラジャー、目標補足。目標、"クソデカいブサイクなトカゲ"、ターゲットロック。"イフリート・マークⅤ"発射 >


四方5メートルの灰色のコンテナが縦三列に並び長大な壁を作り上げる。そして、瞬く間に展開した灰色の壁から一斉に赤い先端部を覗かせたナパーム弾頭を装着したミサイル群が白煙を上げて数も分からない程に……火炎の中へ飛び込んでいく。


爆炎竜の吐き出す炎を相殺する勢いで飛び交う高性能精密兵器の群れは化学燃料を撒き散らし迫り来る灼熱を業火で押し返す。


空中で衝突した強大な火炎同士が小さな太陽の様な眩い光を発しながら衝突した。


互いのエネルギーを相殺し合った炎がぶつかり合い、眩い光で空の上を照らす中……明らかに以前よりも火力と攻撃性を増した相手に唖然としていた爆炎竜は絶叫を上げながら炎の中を突き抜けて一直線に突撃して来る人影に気付くと慌てて体を上昇させた。


そして、歓喜と混乱の入り混じる絶叫を放つ。



『お、お、お前ッ!!お前ぇぇぇっ!!以前よりも、力を増したのか!?俺を殺す為に!!俺と戦う為に!!』


「何度も言わせるな……私は闘争だの決闘だの、そんなものをしに来たんじゃない!!」


『ふ、ふざけるな!!ならば、何だ!!その力は……何だ!?』


「私は大好きな人を怖がらせる厄介なトカゲの……駆除に来たんだぁぁぁぁぁああああッ!!」


< 対戦闘艦突撃銃"レーヴァテイン"、エネルギー∞。人工筋肉、及び人工関節部の強度を考慮しフルバーストモードアンロック。ウェポンズフリー、スタンバイ >


「うううぅぅぅうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」


手にした全長3.5メートルの巨大な突撃銃を構えると彼女は目いっぱいトリガーを引ききった。


青い閃光が一直線に伸び、遥か彼方まで20メートルもの幅を持つ粒子エネルギーの広大な直線を作り上げる。果てしなく続く青いビームの剣を思い切り上へと振り上げ少女は絶叫する。



「レーヴァテイン、フルバーストォォォォォォォォオオオオオッ!!!」



上空へと飛び上がり、相手の上空から奇襲を仕掛けようと目論んでいたサラマンダーは眼下から眩い光を放ち迫って来る光の道を見て驚愕した。慌てて全速力で避けようとしたその右側の翼と腕を、粒子エネルギーの刃が切断する。


『う、がぁあああああああああああああああああッ!!なんだ!?何だ!?何なのだ、これはぁぁぁぁぁぁぁあああああッ!?』


大きくバランスを崩し、失速した巨体を落下させながら目を開いた彼の目線の先に……眩く光る黄金色のドレスを纏う少女が赤く輝く刃を掲げ再突撃して来る姿が見えた。


世界の支配者と呼ぶに相応しい自分が翻弄され、嬲られ、そして弄ばれるその状況に激しく闘争の炎を滾らせたサラマンダーは口を開くと相手を迎撃する準備を整える。


そして、絶叫した。



『お前は、お前はぁぁぁぁッ!!お前はいったい何なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?』


「私は……私は……わァたしはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」


少女は竜の射程圏内に入った。口から放たれたのは正確に高温の火炎を相手へと浴びせる精密射撃だ。範囲を狭め、確実に相手を狙う冷酷無慈悲な炎の槍。爆発と火炎の入り混じるその一撃で確かに竜は金色に輝く少女を狙撃した。


だが、射程圏内に入ったのは彼も同じ事だった。


その人影が霧散するのを見た爆炎竜が慌てて首を動かした瞬間、彼は左腕に鋭い激痛を感じた。


『な、なっ!?……バカな!?……』


視界の隅に、赤い刃を奮う少女が見えた。そちらへ視界を向ける彼の横を再度、金色の光が駆け抜ける。


そこでようやく彼は気付いた。


まるで巨体を取り囲むように金色の眩い霧が周囲を包み、その間を無数の人影が飛び交っているのを。


全長二百メートルを超す巨大な竜の周囲を、総数千を超す黒髪の少女の行動軌跡が動き回っていた。


どこへ頭を向けても彼女が居る。どちらへ向いても、激痛と共にあちこちに赤い刃を奮う彼女が居る。


混乱は深刻な傷跡が増えて行く度に徐々に恐怖へと移り変わり、闘争王は震えた声で叫んだ。



『お前は……お前は……』


ムレータ(撹乱用ナノマシン)、フルバーストモード継続!!このままトカゲを切り刻む!!」


『お前は、バケモノかぁぁぁぁああああああああああっ!!?』


左の翼が音を鈍い破断音と共に切断され、数百箇所に刻まれた傷跡から鮮血を噴き出し爆炎竜は墜落を開始した。


下から上へ、流れ出る血液が昇って行き……追い詰められ、屈辱的な敗北を喫しようとしているというのに何故か彼は笑いが止まらなくなった。


圧倒的な力で敵をねじ伏せてきた自分が、更にそれを上回る力により叩き落される経験は彼にとっては初めて味わうものだった。


『ハ、ハハハハハッ!!舐ァァめるなぁぁぁぁぁぁああっ!!この程度の手傷で墜ちる様な生き様はしていない!!』


彼の生命力と獲物への執着心は極限まで高まり竜族の中でも抜きん出た巨体と能力を持つ彼は瞬く間に自身の損傷箇所を再生させていく。死にたくないという恐怖から来る防衛本能ではなく、脳が焼き切れる様な殺意と闘争本能が肉体修復を速やかに行った。


もっと戦いたい、もっと楽しみたい、もっと夢の様な時間を過ごしたいという大きな頭部に収まる脳が滝のように脳内麻薬を分泌させ、闘争王を熱狂の坩堝に嵌まり込ませていく。


『もっとだ!!もっと俺を楽しませろ!!この闘争は永遠に俺の記憶に残るだろう!!あらゆる種を喰らい尽くしたこの俺の瞳と胸にその美しく靡く黒い髪と神々しい輝きは永遠に記憶されるだろう!!さあ、始めるぞ機械人形、次は本気で殺してやる!!』


「駆除対象が好き放題に……しゃぁあああべるなぁぁぁぁぁぁあっ!!」  


戦闘に愉悦を見出す血走った瞳と、眼前の殲滅対象を排除すべく粛々と手を打つ少女の冷たい視線が衝突する。


手にした対艦用白兵戦武装を掲げ再度突撃しようとした彼女の前方、再生を終えたサラマンダーの周囲に無数の赤い術式陣が浮かび上がる。人間の魔導師が扱うものよりも遥かに巨大であり、痺れすら感じる程の魔力に満ちたその禍々しい赤い輝きを放つそれらは闘争王が本気で彼女を殺すと決めた覚悟の表れだった。



『さぁ、第二幕の開幕だ!!最早これは決闘ではない!!互いの存続を懸けた絶滅戦争を貴様へ仕掛ける!!爪や牙、火炎は所詮決闘者の矜持として拘っていたに過ぎん!!俺はもう貴様を殺すのに手段など選ぶ気は無い!!』


「……私は最初からそのつもりだ。害獣を駆除するのに矜持も何もない……全力で叩き潰すだけだ!!」


『ほざくなガラクタァァァァァァァァァァッ!!精霊が直接行使する魔力の暴力を浴びるがいい!!』


溢れ出る脳内麻薬の高揚感が闘争王の巨大な心臓を激しく打ち鳴らし、思考を遮らせた。凄まじい範囲に広がる術式陣の全てを理解する彼は効率的に、かつ身動き一つ取らせないままに相手を滅ぼす段取りを一秒にも満たない時間で計算し、予測し、そして実行に移す。


異界のゲームチェンジャーへ、自身の全力を以て闘争を行うと決意した。



『インフェルノ・オリジン!!』


周囲を漂う大気中の魔力(マナ)が、まるで引き潮の様に赤く光る術式陣へと吸い込まれ……そして核爆発にも匹敵する膨大な熱エネルギーの津波がアヴィを飲み込んだ。無尽蔵の供給を受け耐爆シールドを展開したアヴィはその衝撃により体が少しずつ後ろへ押されていくのを感じながらも白く染まる視界の中に目を凝らした。


続けて闘争王は追撃を行う。惑星一つの魔力を二日で枯渇させる程の膨大な消費量を誇る凄まじい爆炎の魔術を行使し敵を抹消する。


巨大な術式陣の中央に浮かび上がる円の周囲に魔力が集中し、破壊的な一撃を相手へと撃ち放つ準備を整える。


インフェルノ・オリジンは相手の視界を奪う目眩ましに過ぎない。最初からあの程度の火力で傷が付くとすら考えてはいなかった。これから相手へ放つ一撃こそ、闘争王が全ての力を使い愛おしい怨敵に贈る本命打だ。


視界が白く染まる中、その急速な魔力の消費と前方から発せられる更に高まった熱反応を察知したマタドールシステムの人工知能が警告を発する。


< 警告。前方から更に強い熱反応を感知、周囲のエネルギー収束状況から極大射程のビーム兵器と思われます >


「耐爆シールドで防げるか!?」


< ネガティブ、防ぎげたとしても大気圏外まで射出されこの惑星への帰還には一週間程の日程が必要になります >


「このトカゲをそんなに放っておいたら世界が終わる!!何か手は!?」


< 同等威力のエネネギーによる対消滅を推奨。対大規模艦隊、及び武装衛星用戦略兵器“ワールド・エンド・ドミネーター”の使用を推奨 >


「……ワールド・エンド・ドミネーター……あんな物を……!」


それは果てしなく続く惑星間の絶滅戦争の中で一度だけ使用され、そして生物兵器であるユグドラシル同様に憎悪を衝突させる殺し合いという異常な状況下であっても二度と使用してはならないと各惑星の首脳陣が取り決める程に恐ろしい威力を誇る兵器だった。熱核兵器すら耐えられるシールド技術の発展や各種軍事用ナノマシンの普及により明確な抑止力という概念を持たなくなった人類は理性の箍を外して絶滅戦争へと舵を切った。人類という種の消滅を恐れた一部の勢力はかつて地球という惑星の中世時代がそうであったように、破滅的な力を持った戦略兵器を使った“恐怖が齎す平和”をその時代にも再現させようと試みた。


そうして開発されたのがワールド・エンド・ドミネーター、終わりの世界の支配者という名を持つ特殊弾頭だった。


その弾頭には一億という数の粒子ナノマシンが内包され、発射されてから十秒で半径数キロ圏内に爆風を使い内蔵したナノマシンを散布する。戦略兵器として開発されたその弾頭に内包されているのは分解用ナノマシンだった。有機物、無機物問わず存在するあらゆる物体、生命体、気体、液体、あらゆる事象の全てを消滅させるその力は使用された作戦で十秒の間に三百隻近い戦闘艦とそれに乗り込んでいた人員の全てを文字通り消し去った。


抑止力というにはあまりに恐ろしく、そして強過ぎるその力を見届けた人類は最悪の兵器としてその力を永久的に封印する事で同意した。


その力は再度……惑星すら破壊する闘争王を消滅させる為に振るわれようとしている。


そして、それは同時に……力を行使した撃ち手本人も消滅する事を表していた。


< シミュレーション完了。この高度であれば地上への被害はありません。……ただし、射手である貴女は消滅します >


「……今度こそ私は……完全に死ぬの?……」


< はい、射出後の全身冷却には十秒の時間が必要になります。その間に脱出する事は不可能です >


「……そっか……」


やがて、視界を覆う炎の津波が収まり……アヴィは巨大な術式陣から今まさに終焉の一撃を放とうとする闘争王の姿を確認し即座に決断する。



愛する人が幸せに暮らす世界を守る為に、その命を捧げようと。



「ワールド・エンド・ドミネーター、テカムセに装填準備!!」


< ラジャー。対艦隊、対武装衛星用戦略兵器"ワールド・エンド・ドミネーター"、多目的汎用ランチャー"テカムセ"装填準備 >


金色の光に包まれながら右手に出現した武骨な射出機が中央部から折れ、その巨大な弾頭を飲み込む準備を整える。


左手に凄まじい重量を感じ視線を移すと、其処にはグリーンに発光するナノマシンを輝かせる大量破壊兵器が握られていた。


全長1.5メートルのテカムセの半分以上、一メートル程のそれは半径数キロ圏内の全てを無に帰す力。それを使って自分諸共、あの破壊者を消滅させる覚悟を決めた。


離れた間合いで最大規模の熱破壊光線を放つ準備を整えた闘争王はいよいよ、その世界を焼き尽くす一撃を射出すべく大きく口を開く。天に敷かれた巨大な術式陣には地上のあらゆる大地から収集したの熱エネルギーが満ち、その術式陣だけでもまるで太陽の様に眩しく……凄まじい熱を放っていた。


『これで終わりだ……機械人形!!貴様の事は永遠に忘れる事は無いだろう……!!』



開いた口から火炎の吐息が漏れ、大きく息を吸い込んだ闘争王は終焉の熱線に付けたその名を絶叫する。



『 ----ボルケーノ・オメガァァァァァァァアアアアアアッ!!! 』



構築された一キロにも及ぶ赤い術式陣の中央に、まるで導火線に火を付けるかのように火炎を吐き出し……世界を滅ぼすその一撃を解き放つ。かつて惑星の全ての生命体を焼き尽くし、そして残った同種間の抗争に用いられた滅びを齎す破壊光線がアヴィへと向け射出された。



------


「う、おぉぉぉぉぉっ!!な、何だ!?これは!?……」


「と、とにかく!!伏せて!!絶対に顔を上げないで!!」


突如周囲を照らした真っ白な閃光と、その直後に響き渡る轟音に建物の中に居たアーノルドは混乱するギュンターを守ろうと覆い被さった。


その近くで耳を塞ぎながら蹲ったサシャはガタガタと大地が揺れるのを感じながら本能的に察知した。


あの闘争王は飛び立つ直前に彼女の名を叫んでいた。という事は……あの空で、彼女の愛する人が世界を滅ぼす力を持った竜と対峙し、戦っている。


世界を守る為に……そして、自分を守る為に……。


瞳から熱い雫が零れていくのを感じながら、サシャは願った。


そして、必死に……その願いを声に出して叫んでいた。



「アヴィィィィィィッ!!お願い、お願い!!……助けて……助けてっ!!……。皆を……私を……助けて、アヴィィィィィィィィィィイイイイイイッ!!!」



------


「う、あァァあああああああああああああああっ!!テカムセ、発射準備ぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」


< テカムセ、発射スタンバイ。ナノマシン活性化まで残り5秒 >


「守るんだ!!私がぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!サシャも、皆も!!大好きな私が、守るんだあああああああああああああああっ!!」


少しでも力を抜けばすぐにでも弾き飛ばされてしまいそうな破壊の嵐の中、アヴィは背負った高出力スラスターを使い最大限の力で前進する事でどうにか踏み止まっていた。闘争王が本気で放つその一撃は彼女の想定を大きく超えていた。対爆シールドは無尽蔵のエネルギー供給を受けているというのに、障壁を突き抜けて襲い来る熱線がボディの表面を少しずつ溶かしていく。


< ナノマシン活性化まで残り4秒 >


「皆に幸せになってほしい!!皆に笑っていて欲しい!!泣いて欲しくない、悲しんで欲しくない!!そして、そして……何よりもぉぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!」


< ナノマシン活性化まで残り3秒……エラー、高温によりインナーバレルに障害発生、修復中 >


「大好きなサシャに……誰よりも愛してるあの人にずっと幸せに生きていて欲しいんだ!!もうサシャが泣く所なんて見たくない!!あの人の笑顔が好き、あの人の照れた顔が好き、あの人の呆れた顔が好き!!真っ赤になった顔も!!……」


破壊の暴風の中、アヴィはその少女への愛を涙を零しながら絶叫する。そして、その選択が間違いではないと必死に言い聞かせる……。


「照れ屋さんで素直じゃなくて、とっても強くて……でも、すごく寂しがり屋で弱い!!そんなあの人が私は大好きなんだ!!!心から愛してる!!!」



< インナーバレル修復完了、カウント再開。ナノマシン活性化まで残り2秒 >


「 あの人の料理も、あの人が付けてくれた名前も……っ……ぜんぶ、ぜんぶぅぅぅっ……!!!」


< ナノマシン活性化まで残り1秒 >





「  大好きなんだああああぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっ!!!!!」



< 分解用ナノマシン活性化完了。"ワールド・エンド・ドミネーター"発射準備完了。ウェポンズフリー >



「……だから、いつまでも……お元気で……」


トリガーを引こうとしたその瞬間、遂にその暴力的な火力を前に……対爆シールドが悲鳴を上げた。ガラスが割れる様な音と共に左の肩先から足が焼失する。大きく揺れた体を再度立て直し、右手で全てを終わらせる弾頭が装填される銃口を……真っ赤な光線の先に佇む黒い凶竜へと向ける。


そして、大切な人の名を口にして穏やかな笑みを浮かべ……彼女はトリガーを引いた。



「  サシャ……大好き  ……」



























































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