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他の勇者の御一行様もぽかん。
「待ってください」掴まれた手がほどけない。「王より先にこの場を退席するのは非礼にあたります」
私の制止にも足を止めてくれない。
「俺のための晩餐会なのに?」
「た、確かに」
「退屈だった。そなたの顔を見るまでは…」
今度は優しい眼差し。ぐいぐいと引っ張られ、その人に連れられ城をあとにする。
私、どこに連れて行かれるのかしら。勇者様自ら御者をしているから馬車の中に一人。勇者様が私の家を知っているとは考えづらい。家に帰ったらまずは婚約破棄をされたことを父様に話して…。
気が重いな。母は私に似た顔で怒るのだろう。普通にしているのに怒っているようなこの顔が大嫌い。あたりはもうすっかり暗くなっていた。
エドワード様との結婚が決まっているから私は家での立場を保つことができた。優秀な兄がいると妹は肩身が狭いの。弟と妹はまだ幼い。
ああ、どうなってしまうのだろう。エドワード様があそこまで阿呆だとは思わなかった。かわいいだけが取り柄のミユじゃ、王子の妻の役割すらわかっていないはず。そんなこと、知ったこっちゃないけど。
「ああ、むかっ腹が立つ」
蹴り飛ばしたい気分だが、ジタバタすることしかできない。
「ひどい言葉遣いだな。あんたいいとこのお嬢様なんだろう?」
馬車が止まり、扉が開いた。
「苛々してますの。すみません。あなたは無関係なのに。助かりましたわ」
本当だ。この人が声をかけてくれなかったらどうなっていたことやら。
「着いたぞ」
私の家じゃない。森の中のようだ。真っ暗で馬車を降りるのも怖い。
あ、手を引いてくれる。
「ここは?」
蝋燭の光だけで何も見えない。
「俺の家、いや今日からは俺たちの家だな」
確かにそこには小屋のような家があった。
「これが家?」
小さい。うちの納屋よりも小さいわ。
「よろしく、奥さん」
えええええええっ?




