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第13話 好きな人への贖罪の先に・・・・・・


「この馬鹿が初級ポーションを飲み続けている話はしたわよね?」

「ええ」

「冒険者がクエストを受注するとき、しっかり準備をする必要があるわ」

「それは当然ですね」


 何もおかしな話ではないので、俺は頷いた。

 クエストをこなしているとき、何が起こるかはわからない。

 当然、何が起きても良いように準備する必要があるのだ。


「準備できる量には限りはあるの。それなのにその大半を初級ポーションに費やしたらどうなると思う?」

「・・・・・・本当に必要なものが準備できないですか?」

「そういうこと」

「・・・・・・」


 オネスに哀れみの目を向けてしまう。

 なにをどうしたら、そんな面倒な考えになるのだろうか?

 歪んだ愛は人をこうもおかしくしてしまうのか?


「何をやってるのよっ!」


 突然、ヘルバさんが叫ぶ。

 おとなしい雰囲気の彼女からは考えられない大声だった。

 近くにいた全員が驚いてしまう。


「冒険者が危険なのはわかりきっているでしょ。それなのに危険な真似をするなんて馬鹿じゃないの?」

「・・・・・・うるせえよ」


 オネスはまだ素直になれない。

 一体、何を意固地になっているのだろうか?

 いや、過去の失敗で今更どうもできないのだろう。

 だが、このままではまずいことになるはずだ。

 彼らが上に行けば行くほど、取り返しのつかないことになる。


「少しよろしいかしら?」

「お嬢様?」


 ここで予想外にお嬢様が会話に入ってくる。

 一体、何を言うつもりなのだろうか?

 彼女はなぜかオネスの前にしゃがみ込む。


「あなた、本当に優しい人ですわね」

「は?」


 いきなり褒められ、オネスは呆けた声を漏らす。

 まさかそんなことを言われると思っていなかったのだろう。

 周囲の俺達も同じような表情だっただろう。


「私と戦っているとき、一切怪我をさせないようにしていたでしょう? 本来、その片手剣を扱っているはずなのに、私と戦うときには素手でしたわ」

「・・・・・・新人との喧嘩で武器なんざ使えるかよ」

「攻撃も基本的に掴みかかろうとしたり、大したい威力のないジャブだけでしたわ」

「・・・・・・その程度で十分だと思ったからだよ」


 お嬢様の指摘は図星なのだろう。

 だが、それを認めようとはしない。

 そんな彼を相手にお嬢様はどうするつもりなのだろうか?


「まあ、あなたの好みについてどうこういうつもりはないわ。初級ポーションの味が好きなら、それで構わない」

「・・・・・・」

「でも、その結果であなたが命を落としたとき、ヘルバさんはどう思うかしら?」

「っ⁉」


 オネスは驚きの表情を浮かべる。

 その考えには至っていなかったのだろう。

 オネスが初級ポーションを使い続け、結果としてクエストで命を落としたと仮定する。

 それはもちろん彼自身の責任である。

 だが、初級ポーションを使い続けた理由がヘルバさんへの贖罪なのだったら、それを知った彼女にとんでもない後悔を負わせてしまうことになる。

 流石にこれは彼も望んではいないはずだ。


「・・・・・・すまなかった」


 ようやくオネスは謝罪の言葉を口にした。

 先程まで素直ではなかった彼だが、認めるしかなかったのだろう。








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