転生
薄暗い1Kの部屋にパソコンのディスプレイの明かりとクリック音が響いていた。
ノルウェーのフィヨルド、オーストリアのウィーン、世界中の雄大な自然。
PCの中に世界は広がっている。
私の世界といえば、この部屋と満員電車、そして居心地の悪い会社だけ。
旅行に行く体力も、時間もお金もなく、誰かが体験した世界をみて満足させるほかのない日常。
人生に対してどんづまりを感じていた。
内気な性格で、少ないながらにいた友人も就職を機に段々と疎遠になっていってしまった。
大学を卒業して3年、25歳になったが、年を重ねるにつれ、考えることは結婚、キャリア、将来の不安、
とにかく将来への明るさを見出すことはできなかった。
「はぁ~、明日からまた仕事か・・・」
デジタル時計は1時24分を表示している。
とにかく現実逃避をするために「世界を観光」していたが、もう現実に戻らなくてはならなかった。
嫌だなあ・・・どこか遠くにいきたいな・・・いつか・
そんなことを考えながら、もう寝よう、とベットに倒れこみ、スマホのアラームをセットし目をつむった。
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目を閉じているが、瞼のすぐ向こうは明るく、窓から差し込む光が起床しなければならない時間であることを知らせている。
あれ、なんか鳴ってる・・・・・
アラーム音ではなく、スマホの電話が鳴ってる音だった。
えっ
慌ててスマホに目をやると、時刻は10:13分を表示している。
やばい、遅刻じゃん。どうしよう、シャワー浴びて化粧して・・・・
いや、まず電話・・・・
急いで準備をして会社に向かいはじめた。
なんで寝坊したんだろう、アラームもセットしたのに・・・・
毎日残業ばっかりで疲れてたから?
泣きそうになりながら、がむしゃらに走った。もうすでに走る意味などないようなものだったが。
目の前の横断歩道を渡ろうとしたとき、すぐそばに大型トラックが迫っていることに気づかなかった。
あ・・・やば
とてつもない衝撃が体に走り、アスファルトにたたきつけられた。
目の前が真っ暗になり、次第に周りの音は薄れていった。
ああ、こんなことで死ぬんだ私・・・・
一ノ瀬リノが最後に考えたのはそんなことだった。




