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文通からの恋  作者: 桐嶋リツキ
お付き合い編
9/9

初めてのお泊り!?②

「で、話し合うんじゃなかったのか」


 鷹塚部長の前にはいつの間に用意したのか、珈琲が二つ。更にはコンビニ横に並んでる、レンタルショップで借りたと思われるDVDが数枚、テーブルの上に並べられていた。


「珈琲を飲んで、DVD見ながら話しあ」

「回れ右で今すぐ帰りなさい」

「なんで、話し合いは!?」

「昼間の件は俺が全て悪かった。だから、話し合いは終わり」


 話し合いは済んだと、千尋を意地でも家から追い出そうとする。千尋はこれが、付き合っている彼女への態度なのかと、疑ってしまう。

 千尋も負けじと、色々言い訳して居座る。お互いが譲らないまま段々と気力だけ消耗していき、最後は鷹塚部長が折れた。


「わかった、珈琲だけ飲もう」

「はい!じゃあ、冷めてしまったので淹れ直します」

「・・・ああ」


 どっと疲れた顔をする鷹塚部長。

 千尋は少しでも一緒にいられるように、インスタント珈琲に時間をかけ、ゆっくり作った。


「あのですね部長。私達に恋人らしい事がほぼ、ないです」

「なんだ、唐突に」

「ゆかちゃんにも言われました」

「何をだ?」


 ぽっと顔が赤くなる表情に、鷹塚部長はいらぬ事を吹き込んだなと、由香子を心の中で叱る。もじもじする千尋に、誘惑が負けそうになるのをぐっと耐える。千尋の態度から大体の察しがわかり、千尋がどうやって言おうか悩んでるのも見てわかる。鷹塚部長は、人の気も知らないでと口にしそうになるのを我慢した。


「林田がなんて言ったかは知らない。でも、俺達のペースがあるだろう」

「ペース」

「そうだ。周りに言われて絶対、そうしなければ駄目と言うわけじゃない」

「そうですけど・・・」


 不満そうに口を尖らす千尋に、子供をあやすように頭を撫で落ち着かせる。子供扱いと思った様で、ムッとしながらも頭を撫でられるのが好きなのか、そのままだ。

 そんな姿が可愛いと鷹塚部長は再び、内心揺さぶられそうになった気持ちを拳をぐっと握る事で我慢した。


「だから、早川に言われたから泊まるのもやめろ」

「確かに早川さんに言われましたけど、泊まりたい気持ちは私の意思です」


 男の家に泊まるという意味を理解していない千尋。付き合っていれば、泊まる事もあるだろう。だが、ただ泊まるだけでは無いと、千尋の為と思っての事に気付いてくれない。

 鷹塚部長は心配だった、いつか知らない所で自分以外の男に騙されるのではないかと。


「DVDだって借りてきちゃったし」

「明日、来て観ればいい」

「一度家に帰って又、来るの面倒」

「じゃあ家で観なさい。終わったら俺が返してやる」

「い・や!」


 強情な千尋に、鷹塚部長は頭が痛い。どう言えば、納得して家に帰ってくれるのか。千尋の言い分も本当はわかってる為、鷹塚部長は更に頭が痛くなる。


「部長はどうしてそんなに追い出したいの?」

「・・・それは、君の為にだ」

「嘘!本当は私なんて好きじゃないんだ。別に好きな人がいて、だから」

「いい加減にしろ!人の気も知らないで勝手な事ばかり」


 本気で怒らしてしまった様で、千尋は高ぶった感情が抑えられずに、涙がじわじわ溢れて来る。しまったと思った鷹塚部長は、ぎこちなく抱き締め背中をポンポンと、叩く。そんな鷹塚部長に千尋は、目の前にあった曲がったネクタイをぐっと床向けて引っ張った。


「っ痛・・・千尋苦しい」

「部長のバカ」


 声の雰囲気から、やっと帰る気になったと思い一安心する。だが、ネクタイを離し鷹塚部長から距離を置くと、DVDを一枚取り出しテレビの前に人取ってしまう。又、振り出しに戻ったと嘆く鷹塚部長。



 只今の時刻、午前一時十九分。

 テレビの前から何度言っても離れない、家に帰らないの繰り返しでDVD一回だけならと許した。しかし、それが間違いで何度も停止ボタンを押し、ちょっとトイレと言いながら数十分出て来ない。そんな小細工をしながら、DVD一枚の二時間半の映画は二枚分にもなっていた。やっとラストシーンになり、エンディングが訪れ終わりを迎える。


「千尋、千尋終わったから帰りなさい」


 やけに最後は大人しくしてたなと思い、ずっと体操座りしていた千尋の肩をそっと揺する。しかし反応がなく、鷹塚部長の方へ倒れた。今度は寝たふりなのか?

 そう、鷹塚部長が溜息交じりで千尋を起こそうとすれば、本当に眠っているのようで寝息が聞こえる。


「寝た振りじゃないよな?」


 騙されているのかもしれないと、鼻をつまんだり頬を抓ったりしたみた。だが、ちょっと嫌な顔をするだけでスヤスヤ眠る千尋に、鷹塚部長の一番の溜息が出る。


 ***


 鷹塚部長は目が真っ赤になった状態で千尋の横にいる。

 何故目が真っ赤と言うと、一晩中起きて朝を迎えたからだ。千尋を少し寝かすつもりが全く起きない事に気付き、朝方近くまで外にいた。書置きメモを残し初めはコンビニ、次は二十四時間営業のファミレスと、時間を潰し家に帰る。だが、勿論千尋はぐっすり眠っていて近付くと無意識なのか?

 鷹塚部長を抱き枕代わりに抱きついて来た。


「勘弁してくれ」


 朝方から完全に陽がのぼり、休みの時間用に設定したアラーム音が鳴りだす頃だ。その前にこの状態をなんとかしたいと試みるが、少し動くと起きそうで出来ない。

 そして、時間通りアラーム音が鳴り出し千尋が変な顔をしながらうっすら目を開ける。鷹塚部長が何も言えずにみていると、千尋は固まってしまう。

 きっと、千尋は何かされたと勘違いしてるだろうと落ち着かせようとした。


「千尋、信用出来ないかもしれないが・・・」

「部長・・・わたし」

「大丈夫。君が思っている事は何も・・・」

「私やっと部長の家にお泊りで来たんですね!?」


 二人が抱きついていると言う事より、鷹塚部長の家に泊まった事の方が重要らしい。大喜びの千尋は直ぐに起きて、何処かにメールしていた。

 家にかと思い鷹塚部長は、自分がちゃんと説明すると電話をさせてほしいと頼む。千尋が不思議な顔をしながら携帯を渡し、それをコールしてるか確認する。


『もしもし?』

「朝早くに申し訳ありません。私、鷹塚透という者で」

『鷹塚?』

「娘さんとお付き合いさせてもらっています。この度、無断で外泊させてしまった事に」

『あのねぇ、私お母さんの年齢じゃないですから』

「あ、お姉さんか妹さんでしたか」


 電話でのやり取りに千尋が鷹塚部長の服を引っ張る。何で由香子の事をお母さんと呼ぶのか、そう不思議そうに尋ねればすぐさま電話を切ってしまった。


「もしかして、今の林田だったのか?」

「そうですよ。部長が話したいっていうからでも、何でゆかちゃんの事お母さん呼びなんですか」


 千尋がメールしようとしていた相手は由香子だ。それを勘違いし、家に外泊の言い訳をメールするものと決め付け電話をしたいといった。

 鷹塚部長は恥ずかしくて、その後も何回もかかって来る由香子からの電話に出るなと千尋に言い聞かせていた。



久し振りで内容が忘れがちです・・・。


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