パート57
「ただいまー」
「…………(あ、幸一さんおかえりなさい)」
香里さんとユキの話が終わって戻ってくると、もう洗濯物をすべて畳み終わってテレビを見ていた幸がいた。
きっと幸の事を知らない人が見たら、ただの可愛い少女と思うだろう。
けれど、その小さな体には背負いきれないほどの不幸と、重すぎる過去がある。
「…………」
はたして俺は、ユキの言うとおりに彼女を救えることが出来るんだろうか。
不幸の中にある幸せというものを、教えられるんだろうか。
ユキの前ではやってやると言ってしまったが、本当に出来るのかどうか不安だった。
俺よりも不幸という不幸を味わい続けていて、それでも健気に生きているというのに……。
「…………?(どうしました、幸一さん?)」
「……なあ、幸。いま幸せか?」
唐突な俺の質問に少し驚いていたが幸は俺の手を握って、俺の目を見ながら答えてくれた。
「…………(幸がこうしてまだ生きていられるのも、幸一さんのおかげです。幸一さんが助けてくれて、傍にいてくれているから――幸は幸せです)」
「……そっか」
なんか、真っ直ぐにそう言われるとうじうじ悩んでいる自分が馬鹿らしく思えてくるな。
俺は握られていないもう片方の手で幸の頭を撫でてやる。
「それなら、また皆でどこか遊びに行くか。今度は公園とかじゃなくて、少し遠い所にさ」
「…………!(そ、それなら幸は海とか遊園地とか行ってみたいです!)」
「だとすると夏休み辺りに行くか。その方があいつらの予定も空いてるだろうし」
そんな話をしていると、いきなり玄関の扉が開いて真里菜と洋介が入ってきた。
「幸一ー? 幸ちゃんの様子確認しに来たわ……よ?」
「あ……」
しまった。
今日は幸の様子を確かめに来ると、朝に真里菜からメールが来ていたのを忘れていたけれど問題はそこじゃない。
問題なのは、幸に手を握られながら幸の頭を撫でているというこの状況についてだ。果たして傍から見ればどれだけ勘違いされやすいシチュエーションだろうか。
「待て真里菜。落ち着いて俺の話しを聞け」
「幸一、先に言っておこう。大人しく殴られておけ」
「なんでだっ!?」
「黙れリア充羨ましいんだよ爆発しとけ」
「せめて理由を説明してくれないか!?」
「あ、あんたは……一回、地獄に落ちてこーい!」
「だ、だからま――ゲブラッ!」
「…………!?(こ、幸一さん!?)」
手加減なしの拳を避ける暇もなく、顎にクリーンヒットした俺は薄れゆく意識のなか思った。
俺……なんでこんな奴らに助けられたんだろう、と。
こちらの作品もひとまず終了でございます。
続きを書くか、まだ未定です。
詳しい事はまた活動報告に書きます。




