表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/61

パート38

「……それで、本当に班長自らが行くんですか?」

 実験体Fを助けた少年からの電話を切ると、今日までの観察――他の研究員にやらせていた実験体Fが日常生活でどう過ごしたのか、それらが細かく書かれてある資料を読んでいる室長に話しかける。

「そうだよ。実験というのは、自分の目で見ない限り信じられないだろう? だから今回は僕が彼女を探しに行くんだ。君も来るんだろう?」

「ええ、まあ……」

「それにしても……これはなかなか面白いねぇ」

 資料を読み終えた班長は、手元に置いておいた入れたてのコーヒーを飲む。だけど苦かったのか、引出しから砂糖を取り出して二杯入れて混ぜる。

「一見、普通の日常、普通の生活になじんでるように見えてるけど、どこかが可笑しい。それも巧妙に隠されてるね」

「と、言いますと?」

「考えてみれば分かることだろう? 実験体Fはその体質がゆえに、不幸な出来事に遭遇しやすい。だというのにこれを読んでみると、片手で数えられるほどしか起こってないみたいじゃないか」

「そういえば……」

 班長が言うとおり、資料によると実験体Fが少年と出会った時でしか、彼女に不幸が訪れていない。確かにあのアパートにずっといる彼女だが、だとしてもこれは可笑しい。

「これは、誰かが実験体Fの体質を抑えているのか、はたまた別なのか……。おそらく、彼女を餌にすれば分かるんじゃないかな」

「だから、今回は班長自ら行くと?」

「その通りだよ」

 甘くなったコーヒーを飲み干すと、班長は椅子から立ち上がって掛けてあったコートを着た。

「それにそれだけじゃないんだよね。君の言う少年にも興味がある」

「彼、ですか?」

「彼が、実験体Fに今一番傍にいるんだろう? それで彼自身に不幸が訪れるのは分かるんだけど、ここで過ごしていた普段の実験体Fよりも不幸な出来事が起きてないかい? それも、実験体Fが傍にいるときだけじゃなく、傍にいないときもだ」

「え……?」

「どうやら、実験体F以外にも面白そうな実験材料がいそうだね」

 準備を終えた班長は、車のキーを手に取ると部屋から出ようとする。


「……はたして、彼女はどんな不幸を巻き起こしてくれるだろうね? 実に楽しみだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ